警戒区域内における空き巣被害に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十四年一月二十四日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 東京電力福島第一原発事故の警戒区域二十キロ圏内で空き巣被害が激増している。
 国の指示に従い避難を余儀なくされている被災者の方々は、只でさえ原発事故で不安な生活を強いられている中、二重の苦しみとなっている。被害に遭われた方々は原発事故の原因となった東京電力に対して賠償を求めているが、賠償の範囲外として応じられていない。被害者救済のため、国としてもこの問題に対し、早急な対応、指標を示すことが求められている。

 以上を踏まえ、以下の事項について質問する。

 

一 現在までに確認されている警戒区域内での空き巣による被害件数と摘発件数及びそれらの前年比について示されたい。 

二 空き巣被害について、東京電力は賠償を拒否しているが、何の落ち度も無い被害住民の気持ちを思うと、東京電力による賠償や国による救済措置が必要だと考えるが、現在の検討状況と今後賠償に応じる可能性について、政府の見解を示されたい。 

三 政府は空き巣被害に遭われた住民にも一定の責任があるとお考えなのか見解を伺う。 

四 文部科学省の原子力損害賠償の中間指針に関するQ&A集によると、「避難している間に自宅が窃盗に遭った場合、原則的には窃盗犯が賠償すべきものであり、中間指針では賠償の対象として明示されておりませんが、本件事故による避難等がなければその窃盗を防止できたと認められる場合には、東京電力株式会社が賠償すべき損害と認められる可能性があります。」と個別の事情によっては東京電力が賠償する可能性もあるとの認識を示しているが、「本件事故による避難等がなければその窃盗を防止できたと認められる場合」とは具体的にどのようなことを指すのか、見解を伺う。 

五 警戒区域内では、どのような態勢で警備・警戒にあたっているか。また、警察による検問やパトロール等が要所で行われている中でも、それを掻い潜り、空き巣が横行しているのは、何が問題で、どのような対策が必要だとお考えか示されたい。

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
警戒区域内における空き巣被害に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質180第3号
平成24年 2月 3日

内閣総理大臣                  野田 佳彦

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 警戒区域内における空き巣被害に関する質問 に対する答弁書

一について

 警察庁の統計によると、お尋ねの 「警戒区域」を含む地域を管轄する福島県双葉警察署、福島県南相馬警察署及び福島県田村警察署における平成23年3月から12月までの 「空き巣」 の認知件数は合計で637件、検挙件数は合計で55件であり、これらは、前年同期に比べ、それぞれ約11倍、5倍の件数となっている。

二について

 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故(以下「原子力事故」という。)に伴い避難した者が受けた窃盗の被害に係る賠償については、具体の事実に即して判断されるべきものと考えるが、政府としては、原子力事故の被害の深刻さに鑑み、東京電力に対し、窃盗の被害に係る賠償の請求があった場合には、その内容を十分に検証し,被害者の目線に立って真撃に対応するよう求めているところであり、今後とも、同様に働きかけてまいりたい。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、原子力事故に伴い避難した者が受けた窃盗の被害に係る賠償については、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。

四について

 御指摘の 「中間指針に関するQ&A集」 の記述は、「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」 (平成23年8月5日原子力損害賠償紛争審査会決定) で明示されなかった損害が、直ちに原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)により原子力事業者が負う賠償責任の対象とならないというものではないとの趣旨を述べたものであり、お尋ねの点を含め、原子力事故に伴い避難した者が受けた窃盗の被害に係る賠償については、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。

五について

 警察においては、東京電力の福島第一原子力発電所の周辺地域において「空き巣」等の犯罪が発生している状況を踏まえ、防犯等のための体制を強化し、現在、福島県警察の警察官約220人に加え,それ以外の都道府県警察から派遣した警察官約680により、住民が避難した地域におけるパトロール活動や検問の実施等、安全・安心を確保するための諸活動を行っているところであるが、住民が避難した地域が広大で全ての道路の通行を制限することが困難であるなどの問題が生じている。今後とも、犯罪の発生状況を詳細に分析しつつ、必要な対策を講じてまいりたい。 


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