被災地での窃盗等の犯罪に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年八月一日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 東日本大震災発生以後、被災地域での、窃盗や空き巣といった犯罪被害が相次いで報告されている。その多くが震災の混乱に乗じた犯罪と考えられ、停電や避難により無人となった民家や商店などが狙われている。

 中でも、原発事故により避難を余儀なくされている地域の被害は深刻な状況にあり、避難を続ける住民が被害に気がついていないケースも多く、住民から防災面に関する要望が多く寄せられている。このような状況に対応するため、パトロールや防犯活動の強化などを独自に取り組んでいる地域も存在する。

 震災につけ込んだ火事場泥棒は被災者の気持ちを踏みにじる卑劣な行為であり、取り締まりを徹底し、地域住民の安全と安心の確保が求められている。

 従って、次の事項について質問する。

 

一 東日本大震災発生以後、被災地域における窃盗等の犯罪発生件数及び摘発件数について示されたい。関連して、その被害額はどの程度の規模になるものと把握しているか示されたい。

 

二 被災地を狙った犯罪行為は主に、どのような手口で誰の手により行われていると考えられるか。被災県外在住者や外国人による犯罪事例も存在すると言われるが、その実情について政府の見解を示されたい。

 

三 被災地での窃盗等の犯罪に対し、取り締まりや警備態勢はどのようにして行われているか、政府の見解を示されたい。

 

四 窃盗以外の犯罪事例について、どのような類の事例が報告され、問題になっているか、政府の把握するところを示されたい。

 

五 福島第一原子力発電所周辺の避難区域等、原発事故の影響で避難している住民は、国の指示に従い、十分な防犯体制を取ることも出来ないまま、住居を空けることを余儀なくされた。そのような状況で窃盗等の被害に遭われた住民に対し、国や東電の責任をどのように認識し、補償や賠償等の必要性について考えているのか、政府の見解を示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
被災地での窃盗等の犯罪に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第365号
平成23年 8月 9日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 被災地での窃盗等の犯罪に関する質問 に対する答弁書

一について

 警察庁の統計によると、岩手県、宮城県及び福島県 (以下 「三県」 という。) において平成23年3月から6月までの期間に警察が認知した窃盗犯の総件数は11,129件、その被害総額は約37億円であり、また、三県における同期間中の窃盗犯の検挙件数は2,776件である (これらの数値は、いずれも暫定値である。)

 

二について

 警察庁の統計によると、三県において平成23年3月から6月までの期間に警察が認知した窃盗犯の総件数は、前年同期に比べ減少しているが、「空き巣」、「出店荒し」、「ATM破り」、「自動車盗」等の手口によるものの件数は増加している。

 また、三県において平成23年3月から6月までの期間に警察が窃盗犯で検挙した者のうち、犯行時の居住地が三県以外である者及び外国人の割合は、それぞれ約7パーセント、約1パーセントである。

 

三について

 警察においては、岩手県警察、宮城県警察及び福島県警察の警察官等約8,000人に加え、それ以外の都道府県警察から一日当たり最大約4,800人の警察官等を三県に派遣するなどし、組織を挙げて、行方不明者の捜索等のほか,住民が避難した地域におけるパトロール活動の強化や検問の実施、犯罪発生時の初動捜査の強化等、安全・安心を確保するための諸活動を行っているところである。

 

四について

 お尋ねについては、例えば、平成23年6月に宮城県警察において震災後の瓦磯(がれき)の処理に便乗して廃棄物の不法投棄を行った者を検挙した事例を把握しているが、三県における同年3月から6月までの期間の刑法犯の認知件数は、前年同期に比べ減少している。

 

五について

 政府としては、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故の発生以来、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき、原子力災害の拡大を防止するため、避難のための立退きに係る指示を行う等の適切な対応を行ってきたところである。同原子力発電所の事故に伴い避難した者が受けた窃盗等の被害に係る賠償については、民法(明治29年法律第89号)その他の法律に基づき、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。 


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