生活保護と不正受給の問題に関する再質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年七月八日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 本年三月末時点の生活保護受給者数が五十九年ぶりに二百万人を突破したことが明らかになった。これは過去三番目に多い数字で戦後混乱期並みの水準である。受給世帯数では百四十五万八千五百八十三世帯となり過去最多を更新した。

 また、東日本大震災の影響で新たに生活保護の申請を行う世帯も増えており、今後、失業手当の期限が途切れることや、仮設住宅への入居が進むにつれて受給者がさらに増大することが予測される。国と自治体連携の下、被災者の声にしっかりと耳を傾けた生活再建支援を行い、自立に向けた木目細かいサポートが求められる。

 前回質問主意書に対する答弁内容も踏まえ、以下の事項について質問する。

 

一 前回質問主意書の政府答弁書に関する再質問について

 (1) 前回質問主意書三の答弁書にて、就労支援策を通じて、就職・所得が増加した生活保護受給者の数は、平成二十一年度において四万五千三百五十三人であり、このうち生活保護を廃止した者の数は、八千八百九十七人であることが示された。就職や所得が増加しても、約二割程度しか生活保護から抜け出ることが出来ない現状についてどのように分析しているか、見解を示されたい。

 

 (2) 前回質問主意書十一に関する答弁で、現時点で、生活保護の国と地方の費用負担の割合を変更する必要はない、と政府の立場を示された。生活保護法において、憲法第二十五条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、最低限度の生活を保障することが規定されており、国の責任が明確に記されていると考えられるが、政府の見解は如何。

 

 (3) 三月末時点の生活保護受給世帯数の内、高齢者世帯が六十二万三千七百二十世帯と全体の四十三%を占めた。今後も高齢社会の中で、高齢者の生活保護受給者が増加していくものと予測されているが、勤労意欲の高い現役世代の受給者とは異なる高齢者の受給者に対し、どのような支援や取組みが必要とお考えか、見解を示されたい。

 

二 東日本大震災の影響による生活保護の増大に関する問題について

 (1) 東日本大震災以降で、被災者の方が新たに生活保護を申請した件数(申請世帯数)及び受給者数(受給世帯数)についてそれぞれ各県別数値を示されたい。

 

 (2) 今後、失業手当の支給が途切れること、仮設住宅への入居が進んでくること等から、生活保護の申請がさらに増加するものと予測されるが、国はどのような形でサポートを行い、被災者の生活再建支援を行う方針か見解を示されたい。

 

 (3) 被災者に寄せられた災害義援金や東京電力福島第一原発事故による仮払補償金の支給が収入とみなされ、生活保護を打ち切られる事例が明らかになった。これまでに震災に関連して生活保護を打ち切られたケースは何件になるか、市町村別数値にて示されたい。

 

 (4) (3)に関連して、生活保護の打ち切りを決定した自治体によると、厚生労働省の指針に基づき、判断したとされるが、指針における政府の認識と、自治体による生活保護打ち切りの判断に対してどのような見解か示されたい。

 

 (5) 災害義援金や仮払補償金は、本来、被災者が生活再建を行うための見舞金であり、自立に向け今後の生活設計を行う上で、大切な備えになるはずが、収入として認定され切り崩しを迫られることに、被災者の心情や道義的にも違和感を覚えるが、政府の見解は如何。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
生活保護と不正受給の問題に関する再質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第307号
平成23年 7月19日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 生活保護と不正受給の問題に関する再質問 に対する答弁書

一の(1)について

 現下の厳しい経済状況や雇用情勢の中で、公共職業安定所や福祉事務所等による就労支援策を通じて就労し、又は所得が増加した生活保護受給者のうち、生活保護を廃止した者の割合は、二割程度にとどまっており、より一層、生活保護受給者に対する就労支援に努める必要があると考える。

 

一の(2)について

 お尋ねの国の責任については、生活保護法(昭和25年法律第144号)第一条において、国が生活に困窮する全ての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することが規定されている。

 

一の(3)について

 厚生労働省としては、高齢の生活保護受給者の自立を助長するためには、その健康状態や能力に応じた支援を行う必要があると考えており、高齢の生活保護受給者の健康管理を行うための取組や高齢の生活保護受給者がボランティア活動に参加することを支援するための取組等を行う地方自治体に対し、財政支援を行っているところである。

 

二の(1)について

 厚生労働省の調査によると、お尋ねの新たな申請件数及び受給開始世帯数は、平成23年5月末現在、北海道が37件及び26世帯、青森県が13件及び11世帯、岩手県が49件及び29世帯、宮城県が119件及び91世帯、秋田県が4件及び3世帯、山形県が8件及び6世帯、福島県が71件及び33世帯、茨城県が76件及び67世帯、栃木県が11件及び7世帯、群馬県が40件及び27世帯、埼玉県が90件及び41世帯、千葉県が46件及び38世帯、東京都が101件及び52世帯、神奈川県が72件及び67世帯、新潟県が48件及び41世帯、石川県が3件及び2世帯、山梨県が28件及び28世帯、長野県が17件及び16世帯、岐阜県が1件及び1世帯、静岡県が7件及び5世帯、愛知県が22件及び22世帯、三重県が2件及び2世帯、滋賀県が2件及び1世帯、京都府が18件及び17世帯、大阪府が18件及び18世帯、兵庫県が7件及び6世帯、奈良県が3件及び3世帯、和歌山県が2件及び2世帯、島根県が1件及び1世帯、岡山県が7件及び3世帯、広島県が10件及び6世帯、香川県が1件及び1世帯、愛媛県が5件及び5世帯、高知県が3件及び2世帯、福岡県が9件及び6世帯、長崎県が4件及び3世帯、熊本県が4件及び4世帯、大分県が1件及び1世帯、宮崎県が1件及び1世帯、鹿児島県が3件及び3世帯、沖縄県が8件及び4世帯である。

 なお、同年3月及び4月の新たな申請件数及び受給開始世帯数については、宮城県気仙沼保健福祉事務所、右巻市社会福祉事務所、塩竈市社会福祉事務所及び大崎市社会福祉事務所に係るものは把握できていない。

 

二の(2)について

 厚生労働省としては、被災者の生活再建を支援するため、「「日本はひとつ」しごとプロジェクト」に基づき、復旧事業の推進、雇用創出基金の拡充、ハローワークによる就職支援の強化、雇用保険の延長給付の拡充、来払賃金の立替払の迅速な実施等に取り組んでいるところである。また、都道府県において、被災者生活再建支援法(平成10年法律第66号)に基づく被災者生活再建支援金の支給を行うとともに、市町村において、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法待第82号)に基づく災害援護資金の貸付けを行っているほか、都道府県社会福祉協議会において、被災した低所得世帯に対して生活福祉資金の貸付けを行っているところであり、国においては、このような都道府県等の取組に対し、財政支援を行っているところである。

 今後とも、このような施策を推進することにより、被災者の生活再建を支援してまいりたい。

 

二の(3)について

 御指摘のような事例があることは承知しているが、その具体的な件数については把握していない。

 

二の(4)及び(5)について

 厚生労働省としては、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日付け厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「実施要領」という。)等において、災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金のうち生活保護受給世帯の自立更生のために当てられる額については、当該額が自立更生のために当てられることを確保するため、必要に応じ、当該生活保護受給世帯に自立更生計画の作成を求めた上で、収入として認定しないこととしているところである。

 御指摘の災害義援金及び仮払補償金〈以下「義援金等」という。)についても、実施要領等に基づき同様の取扱いとしているが、自立更生許画の作成が過大な負担とならないよう、同計画を簡略化して作成することを認めることとし、地方自治体にその旨を通知したところである。

 厚生労働省において、都道府県等からの情報等を基に、義援金等の支給を受けた生活保護受給世帯について生活保護の停止又は廃止の決定をした地方自治体の調査を行ったところ、一部の地方自治体において不適切な取扱いが行われていたため、適切な取扱いを行うよう指導したところである。

 今後とも、実施要領等に基づき適切に生活保護が実施されるよう、地方自治体を指導してまいりたい。


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