OECDのより良い暮らし指標に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年六月二十九日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 OECDによる各国の国民の幸福度を測る「より良い暮らし指標」が発表された。GDP以上に、人々の生活の豊かさ、暮らしの尺度を計測、比較することを可能にする新たな指標として、国民生活に関わる一一項目を数値化したものである。その平均値で日本はOECD加盟三四カ国中、一九位であったことが報告された。

OECDの調査レポートによると、日本は「より良い暮らし指標」の幾つかのトピックスにおいて平均近くあるいはそれを上回る位置につけていると評価されている。一方で、生活満足度は他国に比べ低水準で、客観的評価に比べ自己評価が低い。この指標から読み取れるのは、数字だけの豊かさを超えた、国民がより主観的に幸せを実感できる社会の形成が必要とされる。

以上を踏まえ、次の事項について質問する。

 

一 「より良い暮らし指標」の結果を受け、OECDの日本の評価に対する政府の認識を示されたい。

 

二 国の経済力を表す指標として、これまで伝統的に比較されてきたGDPでは、日本は世界三位であるが、今回のOECDの幸福度調査では平均以下の一九位となった。数字の上では世界でも有数の豊かな国であるのに対し、国民が幸せを実感できていないその要因について、どのようにお考えか見解を示されたい。

 

三 分野別の評価で、ワークライフバランスが一一項目の中でも特に低水準で、加盟三四カ国中、三二位となった。高い満足度を示す欧州各国と比べ、どのような事由と取組の差で評価が異なる結果になったと認識しているか政府の見解を示されたい。

 

四 ガバナンスの項目において、日本の評価はOECD平均以下の二三位となり、国民の政治への信頼度、選挙投票率それぞれOECD平均を下回っている。レポートでは政府への信頼を維持していくために、政府の説明責任、情報公開の透明性の確保が指摘されている。政府はこの評価をどのように受け止め、今後の政府の姿勢を改める必要があるとお考えか見解を示されたい。

 

五 健康の項目に関して、日本はOECD諸国の中で最も平均寿命が高く、肥満率も全人口の三.四%と最も低い。さらに、医療費総額のGDPの割合、国民一人当たりの医療費でもOECD平均を下回っており客観的な指標では高いレベルの水準にあることがわかる。しかし、自分自身の健康状態に関して、健康であると評価したのは三三%で、OECD平均の六九%に比べ格段に低い。健康指標の全体的な評価でも二五位と、実際の日本人の健康状態に比べ低い評価となった。何故このようなギャップが生じるものと分析をしているか。また、健康に関する自己評価が低いことにどのような原因があると認識しているか政府の見解を示されたい。

 

六 生活の満足度の項目について、OECDレポートでは、日本人の将来の生活満足度の予測はOECD諸国の中でも最低水準とされ、生活満足度の全体的な評価でも二八位となった。実際の日本人の生活環境や客観的な評価に対し、国民自身の主観的な自己評価は厳しく、幸福感や満足感が十分に実感されていない傾向にある。この格差が生まれる背景について政府の見解は如何。また、日本人として主観的に幸せを実感し、享受できるような社会が必要と考えるが、政府のこれからのビジョンについて示されたい。

 

七 鳩山政権時に行った、政府による国民の幸福度調査は、GDPに代わる国民の幸福度を示す新たな指標を策定するために実施した調査であると承知しているが、その後の指標化の検討状況はどのようになっているのか。また、調査の結果を受け、どのように政策に反映されたのか、見解を示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
OECDのより良い暮らし指標に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第284号
平成23年 7月 8日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 OECDのより良い暮らし指標に関する質問 に対する答弁書

一及び二について

 お尋ねの「より良い暮らし指標」は、経済協力開発機構(以下「OECD」という。) のホームページにおいて、その閲覧者が11の指標にそれぞれ自由に六段階のウエイト付けを行うことにより、独自の総合指標を作成することを可能にしたものであり、我が国が「OECD加盟国34カ国中、19位であった」との御指摘については、あくまでもこれらの指標を単純平均したものを国際比較した結果であり、OECDによる評価ではないと認識している。 OECDにおいては、幸福度及び社会的進歩の計測について検討の途上にあり、引き続き、我が国を始めとする加盟国により議論がなされるものと承知している。政府としては、計測に用いる指標を始めとする計測の方法について更なる検討が必要であると認識している。

 なお、国民の満足度や幸福度には、所得などの経済的要素だけではなく、家族や社会との関わり合いなどの要素も大きな影響カを持つものと考えている。

 

三について

 お尋ねについては、欧州各国と比較して余暇や睡眠、食事等の個人的活動に充てた時間の平均が短いこと等により、御指摘の結果となったものと認識している。

 

四について

 政府としても、行政の透明化を推進し、国民に対する説明責任を果たしていくことは重要であると考えており、そのための施策の一つとして、国の行政機関及び独立行政法人等に関する情報公開制度について、開示情報の拡大、開示決定等の期限の短縮、事後救済制度の強化等の措置を講ずることを内容とする「行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案」を今国会に提出したところである。

 なお、選挙の投票率については、当該選挙の争点、選挙当日の天候など、様々な要因が総合的に影響するものであることや、OECD加盟国で義務投票制を採用している国があることなどから、各国を単純に比較することは適当ではないと考えている。

 

五について

 「平成19年国民生活基礎調査」によれば、自分の健康状態を「あまりよくない」又は「よくない」とした者は全体の13パーセントであり、「健康に関する自己評価が低い」との御指摘は、必ずしも当たらないものと考えている。なお、「OECD平均の69パーセントに比べ格段に低い」との御指摘については、各国間において、健康状態の優劣を示す回答の選択肢の内容に違いがあることも影響していると推察される。

 

六について

 国民の満足度や幸福度には、所得などの経済的要素だけではなく、家族や社会との関わり合いなどの要素も大きな影響を持つものと考えている。政府としては、「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)等に基づき、「新しい公共」の推進等を通じ、全ての国民に「居場所」と「出番」が確保される社会の構築に向けて取り組んでまいりたい。

 

七について

 政府としては、「新成長戦略」に沿って、新しい成長及び幸福度について調査研究を推進するため、有識者からなる「幸福度に関する研究会」を開催し、国民が実感している幸福感・満足感の現状等を把握するため行った「平成21年度国民生活選好度調査」の結果も踏まえつつ、幸福度指標の在り方について検討を進めているところである。


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