ワクチン同時接種後における乳幼児の死亡事例に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年五月九日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 今年に入り、乳幼児の細菌性髄膜炎を予防するヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチン等の同時接種後に乳幼児が死亡した事例が相次いで報告されたことを受け、厚生労働省は、この二種類のワクチン接種を一時的に見合わせるよう通知を出した。厚生労働省の専門家会議による検証の結果、ワクチン接種と乳幼児死亡との直接的な因果関係は認められず、安全性に特段の問題があるとは考えにくいと判断された。また、他のワクチンとの同時接種についても副作用のリスクが高まる報告はないと結論し、接種再開を決めた。

 しかしながら、ワクチン接種に対し、不安を感じている保護者は多く存在する。ワクチンの副作用や安全面に関する情報開示、持病を抱える乳幼児への注意喚起など、保護者の立場に添った慎重で丁寧な対応が求められる。

 右を踏まえ、次の事項について質問する。

一 両ワクチンが発売されてから現在に至るまで、ワクチン接種後に乳幼児が死亡した事例は全部で何件か。関連して、両ワクチンのこれまでの接種者の総数と、死亡事例との割合について示されたい。

二 厚生労働省や専門家が発表したように、今般の死亡事例とワクチン接種に直接的な因果関係が無いとすれば、どのようなことが乳幼児の死亡原因として考えられるか、見解を示されたい。

三 ワクチン同時接種は、乳幼児に対してどのような負担を与え、如何なる副作用のリスクを生じさせるのか。また、同時接種と比較し、単独接種の方が副作用のリスクは低いと考えられるか、政府の見解を示されたい。

四 持病を抱える乳幼児への影響について、両ワクチンの接種により、どのような副作用・リスクが生じると考えられるか、見解を示されたい。

五 諸外国での、両ワクチン接種後における、乳幼児の死亡事例や、副作用について如何なる報告がなされているか、示されたい。

六 厚生労働省や専門家により、両ワクチンの安全性に関する一定の見解が示されたが、接種に関する保護者の不安が完全に解消されたとは言えない。行政や医師から、ワクチンに関する適切な情報公開、丁寧な説明を行うことを徹底させ、ワクチンの正しい知識を身に付け、安心して子育てが出来る環境をつくることが重要だと考えられるが、政府の見解は如何。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
ワクチン同時接種後における乳幼児の死亡事例に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第168号
平成23年 5月17日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 ワクチン同時接種後における乳幼児の死亡事例に関する質問 に対する答弁書

一について

 お尋ねの死亡事例については、平成23年5月9回現在、厚生労働省に対し、ヒブワクチンについて8例、小児用肺炎球菌ワクチンについて4例の報告が行われており、これらのうちの3例は、両ワクチンの同時接種が行われた事例である。
 また、お尋ねの接種者の総数については把握していないが、製造販売業者によると、平成23年3月時点で、ヒプワクチンについては約451万回、小児用肺炎球菌ワクチンについては約267万回の接種が行われていると推定されるとのことである。

 

二について

 お尋ねの乳幼児の死亡原因については、平成23年3月24日に合同で開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び子宮頚がん等ワクチン予防接種後副反応検討会において取りまとめられた「小児用肺炎球菌ワクチン、ヒプワクチンの安全性の評価結果について」(以下「評価結果」という。)においては、乳幼児突然死症候群、誤嚥(えん)による呼吸不全などが指摘されている。

 

三について

 評価結果においては、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの同時接種については、国内外の臨床試験のデータからは、副反応の発現率は単独接種に比べて高い傾向にあるとする報告もあるが、重篤な副反応の増加は認められておらず、特に安全性上の懸念は認められないとされている。

 

四について

 お尋ねの持病を抱える乳幼児における「副作用・リスク」については、持病の内容や程度により異なるものと考えられる。なお、評価結果においては、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの接種について、「重篤な基礎疾患、例えば重篤な心疾患のある乳幼児については、髄膜炎等の重症感染症予防のためにワクチン接種が望まれるものであり、状態を確認して慎重に接種する。その際、単独接種も考慮しつつ、同時接種が必要な場合には、医師の判断により実施する。」とされている。

 

五について

 お尋ねについては、米国での小児用肺炎球菌ワクチンの使用成績に関し、発売後2年間で3,150万回分の接種が行われ、接種後に発熱やけいれんなどが見られた事例が4,154例、死亡例が117例あったとする論文がある。また、海外での死亡例報告の頒度について、ヒプワクチンでは10万接種当たり0.02から一程度、小児用肺炎球菌ワクチンでは10万接種当たり0.1から一程度であるとする製造販売業者の報告がある。

 

六について

 厚生労働省においては、評価結果を踏まえ、平成23年4月1日から小児用肺炎球菌ワクチン及びヒプワクチンの接種を再開したところであるが、国民に対しワクチンに関する情報提供を適切に行い、安心して予防接種を受けられる環境を作っていくことが重要であると認識しており、これらのワクチンの接種の再開に先立ち、評価結果等を踏まえてリーフレット等を作成し、これらのワクチンの安全性や接種方法等について、国民に対する情報提供を行っているところである。また、医師に対し、ワクチン接種の際には、その効果や副反応等について説明を行うとともに、複数のワクチンを同時に同一の被接種者に対して接種する場合には、それぞれ別の日に単独で接種することも可能である旨の説明を行うよう、市町村を通じ、要請しているところである。


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