海賊対処法の適用に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年五月二日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 三月五日、ソマリア沖で商船三井が運行する重油タンカー(バハマ船籍)が海賊に襲撃され乗っ取られる事件が起き、周辺海域を警戒していた米軍により、海賊四名が拘束された。 その後、日本政府は、米軍から海賊四名の身柄の引渡しを受け、海賊対処法違反の疑いで逮捕した。 海賊は海上保安庁の航空機で日本に移送され、取調べを受けた後、起訴された。 海賊対処法を適用し、起訴するのは今回が初めてである。

 右を踏まえて、次の事項について質問する。

一 今回、被害にあった商船三井のタンカーはバハマ船籍で、乗組員は全員外国人であり、米軍により拘束された。 身柄の引き渡しについて明確な国際ルールが規定されていない中、今回、米側から海賊四名の身柄を引き受け、日本に移送することになった経緯について説明されたい。

二 海賊の身柄を引き受けた国の費用負担は大きいとされる。 今回、海賊の日本移送で発生した費用、また現地での捜査等で必要とされた費用、それぞれについて把握する数字を示されたい。

三 起訴された自称ソマリア人の海賊四名について、一名が未成年のため家庭裁判所へ送致されることになったが、捜査において、如何にして海賊の国籍、年齢、氏名等を特定出来たか示されたい。

四 海賊に対し、現地とは遠く離れた日本で裁き、処罰を与えることで、海賊が更生し、海賊行為の抑制に繋がると考えられるのか、政府の見解を示されたい。

五 国際問題である海賊に対し、各国連携の下、対策を講じている現状で、今回の海賊行為に対し、日本が適切な対応、処置を行うことが国際的に果たすべき責任だと考えられるが、政府の見解を示されたい。

六 海賊対処法は、今回の事例のように他国が拘束した海賊を引き受け、移送することに関する規定がないことが指摘されたが、今後、法整備等の対応は必要だと認識しているか見解を示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
海賊対処法の適用に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第161号
平成23年 5月13日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 海賊対処法の適用に関する質問 に対する答弁書

一について

 お尋ねの被害船舶は日本関係船舶(日本籍船及び我が国の船舶運航事業者が運航する外国籍船をいう。)であり、同船舶の運航会社からの要請を受け、我が国がソマリア沖に展開する有志連合軍に救助要請を行い、これに応じた有志連合軍の一員である米国艦艇が当該海賊を拘束し、同米国艦艇から我が国に対し引取りの要請が行われた。また、我が国から船籍国であるパハマに対し、管轄権を行使する意思について照会したところ、バハマから管轄権を放棄する旨の通知があった。その上で、当該海賊の処分をソマリア周辺国に委ねることは困難であると見込まれること等も総合的に勘案し、海賊に対する毅然とした我が国の態度を内外に示すためにも、我が国が同海賊を引き受けた上で国内法に基づく刑事手続をとることとしたものである。

 

二及び三について

 個別具体的な事件における捜査機関の活動内容に関わる事柄については、答弁を差し控えたい。

 

四及び五について

 政府としては、各国が海賊行為に対して国際法及び国内法に基づき適切に対応することが海賊行為の抑止につながるものと考えており、お尋ねの海賊行為に対して我が国が刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)及び国際的な刑事共助の枠組みにおいて適切に対応することは、国際的に果たすべき責任であると認識している。

 

六について

 政府としては、国外で行われる海賊行為に対しては、今後とも、他の国外犯処罰規定に係る刑事手続と同様、現行の刑事訴訟法及び国際的な刑事共助の枠組みにおいて適切に対応することとしている。


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