公共交通システムとしての自転車の活用に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年四月二十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 石川県の金沢市にて、昨年八月から十月までの期間、公共レンタサイクル「まちのり」が社会実験として実施された。 これは登録者が共同で自転車を利用できるシステムで、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量削減を目的に、自動車中心の交通を見直し、自転車の利用を浸透させる取組みであった。

 「まちのり」は観光客を中心に予想以上の効果を上げ、事故や盗難もなく、手軽で便利と利用者からの反応も良かった。 すでに、富山県富山市ではコミュニティーサイクルが導入されており、中心市街地の活性化の切り札として、市民及び観光客に広く利用されている。

 コミュニティーサイクルは、環境に対する意識が高い欧米では、手軽で身近な都市交通手段として、国・自治体の後押しのもと積極的に活用されている。 日本でも、ここ数年の健康ブームや自転車人気もあり、自転車を公共交通システムとして利用する取組みに注目が集まっている。

 自転車は、環境への負荷軽減だけでなく、健康増進や移動時間の短縮、費用の節約、渋滞の緩和、観光利用など効果は様々で、影響力も絶大である。 課題である、インフラ整備や安全対策、利用者のルール・マナーの問題など、ハードとソフトの多方面からの支援を行い、日本の国土や地域の特色にあった自転車交通システムを構築していくことが必要である。

 従って、次の事項について質問する。

一 公共交通システムとして自転車の促進は、日本の環境立国としての姿勢を国内外にアピールすることが出来、尚且つ健康増進による医療費の圧縮の効果にも期待が出来る。 自転車の果たす役割、効果は大きいと考えられるが、政府はどのように認識されているか見解を示されたい。

二 日本の国土や風土、道路状況に対して、自転車の活用促進は適していると考えられるか、政府の見解を示されたい。

三 現在の日本の自転車保有率、自転車分担率、自転車の通勤通学利用率について把握される数字を示されたい。

四 自転車利用促進に向け、自転車道や駐輪場などインフラ整備による走行環境の改善が必要とされる。 自転車の効果を最大限活用するためにも、自転車道が連続する交通ネットワークの形成や、他の公共交通機関へのアクセスを考えた整備が求められる。 国が主導して取り組む姿勢が問われるが、政府の見解は如何。

五 専門家によると、車道や歩道と柵や縁石などを使って完全に分ける自転者道に比べ、車道に線を引いて区切るだけの自転車専用レーンは、全国の幹線道路三万キロ余のうち車道の両端に歩道とは別に一.五メートル以上の余裕がある主要道約八一〇〇キロの八割強にあたる約六六〇〇キロで容易に設置が可能だという報告がされた。 これは、年々増加傾向にある歩行者と自転車の事故防止にも大きく貢献できると考えられているが、自転車専用レーンの整備の必要性について見解を示されたい。

六 五に関連して、この調査では自転車専用レーンの法規定の曖昧さが指摘されている。 今後の法整備の必要性についてどのようにお考えか政府の見解を伺う。

七 インフラ整備において、自転車利用率を上げることを目標に施策を行っていくことが重要とされる。 自転車をより身近で快適な移動手段として提示していくなど、ソフト面からの取組みも必要だと考えられるが、政府の見解を示されたい。

八 自転車の普及において、安全面の確保は最重要課題である。 交通事故のリスクを減らすには、交通インフラの整備はもとより、交通ルールの徹底や利用者のマナー向上が求められるが、政府の現状認識と今後の取組みの必要性について示されたい。

九 自転車利用促進において、他の公共交通機関との連携強化が不可欠である。 長距離の移動にも自転車を利用できるよう、電車やバスへの運搬・移動を容易にすることも必要だと考えられるが、政府の見解は如何。

十 環境対策や自転車の利用促進のため、欧州で行われているコンジェスチョンチャージや自転車通勤を奨励する企業への税制等の優遇措置など、効果と導入の必要性について政府の見解を示されたい。

十一 欧州では、コミュニティーサイクルシステムの導入により、自転車をより身近な存在に位置づけた。 このシステムを日本で確立させるには、観光客だけでなく、地域住民にもより広く利用されるような仕組みが必要とされるが、政府の見解を示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
公共交通システムとしての自転車の活用に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第153号
平成23年 5月10日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 公共交通システムとしての自転車の活用に関する質問 に対する答弁書

一について

 政府としては、徒歩、自転車、自動車その他の手段による交通それぞれの特性をいかすとともに、適切な役割分担及び相互連携を図りながら、総合的な交通体系の構築を図ることが重要な課題であると認識しており、その際、自転車についても重要な役割を担うものと考えている。

 

二について

 各地域の風土、道路状況等は多様であり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、自転車の活用促進に当たっては、各地域において、地域の特性を勘案した取組を進めることが重要であると認識している。

 

三について

 社団法人自転車協会の統計によれば、平成20年における自転車保有台数は全国で約6910万台であり、これを平成20年3月31日現在の住民基本台帳に基づく人口で除して自転車保有率を求めると約54パーセントである。
 また、国土交通省が平成17年に行った全国都市交通特性調査によれば、自転車に係る代表交通手段分担率(平日) は約14パーセントである。
 さらに、平成12年国勢調査によれば、通勤通学において自転車を利用している割合は約17パーセント、そのうち自転車のみを利用している割合は約12パーセントである。

 

四及び五について

 自転車の通行環境の整備については、各道路の構造及び周囲の状況、自転車、歩行者及び自動車の交通量、自転車走行空間ネットワークの整備や他の公共交通機関へのアクセスの確保等による利用者の利便性の向上等を考慮しつつ、地域住民の意見等を聴きながら進めてきているところである。自転車専用通行帯の指定については、有効な手法の一つであると考えており、自転車道の整備、普通自転車の歩道通行部分の指定等の手法と共に活用してきている。引き続き、これらの取組により、自転車の通行環境の整備を図ってまいりたい。

 

六について

 自転車専用通行帯は、都道府県公安委員会が、道路交通法(昭和35年法律第105号)第4条第1項及び第2項の規定に基づき、同法第20条第2項の規定により普通自転車が通行しなければならず他の車両(軽車両を除く。)が通行してはならないこととされる車両通行帯として指定するものであり、法令上の根拠は明確であることから、現時点において、新たな法令の整備は必要ないと考えている。

 

七について

 国土交通省においては、自転車を含む交通の適切な役割分担を図る等の観点から、地方公共団体等による都市・地域総合交通戦略の策定を推進してきでおり、同戦略等に基づき、自転車利用促進の啓発や駐輪場の情報提供等のいわゆるソフト面からの取組を行っている地方公共団体等は増加してきているところである。国土交通省においては、引き続き、こうした取組を支援してまいりたい。

 

八について

 警察庁の統計によれば、平成22年中の交通事故において自転車乗用中に死傷した者であって第一当事者又は第二当事者であったものの数は14万8424人であったが、その約65パーセントに当たる9万6819人において何らかの道路交通法違反が認められた。
 政府においては、このような情勢も踏まえ、自転車の交通秩序の整序化を図るため、関係機関等と連携しつつ、自転車利用者に対するルiル遵守の徹底を進めているところである。具体的には、あらゆる機会を通じた自転車利用者に対するルールの周知徹底、幼児から高齢者まで含めた幅広い層に対する自転車安全教育の推進、自転車利用者の交通違反に対する指導取締りの強化、交通ボランティア等と連携した街頭活動の強化等の対策を進めているところであり、今後とも自転車の交通秩序の整序化に向け、これらの対策を推進してまいりたい。

 

九について

 電車やパスへの自転車の持込みについては、各交通事業者が混雑状況や車内の物理的なスペース等を勘案して、その可否を判断すべきものと考えている。

 

十について

 欧州等で導入事例が見られるいわゆるコンジェスチョンチャージは、主として道路の混雑緩和を目的としたものであると承知しているが、同様の施策を環境対策や自転車の利用促進を目的として導入することを検討するに当たっては、地域住民の意見等を踏まえつつ、その効果や影響等について十分に検証する必要があると考えている。
 また、国土交通省においては、環境対策や自転車等の利用促進に資する措置として、エコ通勤優良事業所認証制度を平成21年6月に創設したところであり、引き続き同制度の活用を図ってまいりたいと考えている。

 

十一について

 コミュニティサイクルシステムについては、全国の20以上の市区において導入に向けた取組が行われてきているところであり、観光のみならず、業務、買物、通勤等において地域住民にも広く利用されるようなシステムの構築が進められていると承知している。政府としても、こうした取組を支援しているところである。


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