下記の質問主意書を提出する。
提 出 者 馳 浩
衆議院議長 横 路 孝 弘 殿
一月十日付の朝日新聞によると、平成二十一年度に教員が産休・育休や病気・介護休暇に入った際に、代わりの教員が間に合わないケースが全国で八百例に上っていることが明らかになった。 代わりの教員が来るまでは自習や他の授業を行うことなどで、穴を埋めていたとされる。
これはかつて大量採用されたベテラン教員の退職や少人数教育による採用拡大などが影響したことで、正規・非正規教員の需要が膨らみ、代わりの教員の層が薄くなった。 これに対して、大学での教員養成が採用の急増に追いついていないことが指摘されている。
代替教員が見つからず授業に穴を開けることで、一番しわ寄せが生じるのは、学びたくても、学ぶことが出来ない児童・生徒である。 子ども達の安定した教育環境を保持するためにも、早期の対応が求められている。従って、次の事項について質問する。
一 代替教員が不足していることに関する現状認識を示されたい。
二 代替教員の養成、配置も大事であるが、まずは現職の教員に出来るだけ長く働いてもらう環境づくりが必要である。 特に教員が病気で休職、退職に追い込まれる事例は年々増加傾向にある中、教員の勤務環境の改善によって防げるケースも存在すると考えられるが、政府の見解を示されたい。
三 病気や産休、育休で休職した際に復職しやすい環境を整えることが不可欠だが、現在の取り組み状況と認識を示されたい。
四 定年退職した経験豊富な元職のベテラン教員や、一旦現場を離れた教員免許取得者の再雇用を積極的に行っていくことが、早期の対応策として有効だと考えるが、後押しするための支援体制は整っているのか、政府の見解を問う。
五 かつて教員の就職氷河期と言われた時代に、教員免許は保持していても、就職先がなく、泣く泣く教員への道を諦め、他業種に就職することを選択した人も多数存在したと承知しているが、教員免許取得者のうち、実際に教師として現場で働いている人の割合はどの程度のものか把握される数字を示されたい。 また、昨今の教員不足は、何年も前から予測されており、それを見越した対策を行ってこなかったことも、原因の一つと言えるのではないか、見解を示されたい。
六 国立大学の教員養成課程は入学定員が抑制されてきたため、教員採用増加のニーズに充分応えきれていない現状が指摘されている。 行政と大学の連携によるミスマッチの解消が必要だが、この矛盾に対してどのように認識し、対策が必要だと考えているか示されたい。
以上質問する。
衆議院議員馳浩君提出
内閣衆質177第152号
内閣総理大臣 菅 直人
衆議院議長 横 路 孝 弘 殿
衆議院議員馳浩君提出 教員の欠員に対する代替教員不足に関する質問 に対する答弁書一について
いくつかの教育委員会において、教員が病気休暇や産前産後の休暇等を取得してから、当該教員の代替教員が配置されるまでに一定の期間を要する実態があることは承知している。
二について
教員が病気により休職や退職をする場合に、お尋ねの「教員の勤務環境の改善によって防げるケース」があったかについて個別具体には把握していないが、一般的に、教員が心身の健康を保持して教育に携わることができるようにするためには、教員の事務負担が過重なものとならないようにするとともに、教員が相談しやすい職場環境を整備すること等が重要であると認識している。
三について
病気等により休職した教員が円滑に職場復帰をするためには、各学校において当該教員の健康状態に配慮して校務を分掌させる等の支援体制を整えることが重要であると認識しており、例えば、精神疾患を理由に休職した教育職員に対する復職支援プログラムを実施している都道府県及び政令指定都市の教育委員会が平成22年10月1日現在で約94パーセントとなるなど、各教育委員会においては、休職者の復職を支援する取組を進めているものと認識している。
四について
いくつかの教育委員会においては、病気休暇や産前産後の休暇等を取得した教員の代替教員の確保方策として、あらかじめ候補者のリストを作成するなどし、定年退職した教員等を代替教員に積極的に活用しているものと承知しているが、代替教員を含む教員の具体の配置については、地域の実情等を踏まえ、各教育委員会等において適切に行うべきものであると考えている。
五について
お尋ねの「教員免許取得者のうち、実際に教師として現場で働いている人の割合」については承知していない。なお、平成17年度に教員免許状を取得して大学等を卒業した者は11万7903人である一方、平成18年度に国公私立の学校(大学及び高等専門学校を除く。) の常勤の教員として採用された者(任周期限を一年未満とする臨時的任用の教員並びに産前産後の休暇及び育児休業を取得した教員の代替教員として採用された者を除く。) は、平成17年度以前に教員免許状を取得した者も含め、4万795人となっている。
文部科学省では、従前から、各教育委員会において、中長期的な視点に立ち、教員の退職者数や児童生徒数の推移等を的確に分析した上で、計画的な採用・人事を行うよう促してきたところである。
六について
現在、中央教育審議会において、教員の資質能力の総合的な向上方策について検討が行われているところ、国立大学の教員養成課程に係る定員については、この検討の結果も踏まえつつ、今後の教員の需要数の見通しを考慮した上で検討すべきものと考えている。
馳浩の質問主意書メニューへ戻る