鳥インフルエンザ対策に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年四月二十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 全国各地から鳥インフルエンザの感染事例が報告され被害が拡大している。 感染拡大防止のため徹底した防疫対策が行われているが、完全に封じ込めるのは困難だとされる。 このままの状況が続けば、養鶏業を主要産業としている地域に大きな打撃を与える。また、畜産物の安定供給に大きな影響を及ぼすことも懸念されており、ウイルス蔓延の防止に向けた更なる効果的な対策と原因究明が急がれる。

 従って、次の事項について質問する。

一 鳥インフルエンザの感染経路について、どのようなルートで入り、感染が広がったと考えられているか政府の見解を示されたい。

二 鶏肉、卵の価格や流通の面での影響について、政府の見解は如何。また、長期化が懸念される中、どのような対策が必要か政府の見解を伺う。

三 鳥インフルエンザの感染拡大により、畜産関係者から風評被害を心配する声が聞かれるが、その対応について政府の見解を示されたい。

四 防疫対策について、養鶏場に出入りする運送業者や飼料業者等に対しても防疫を徹底させることが必要と考えられるが、政府の見解は如何。

五 鳥インフルエンザ対策における縦割り行政の弊害が指摘されている。 養鶏(農林水産省)と野鳥(環境省)、天然記念物(文部科学省)、動物園の飼育動物(環境省・文部科学省)それぞれの役所の所管が異なり対応・対策がバラバラであると指摘する声があるが、政府の見解を示されたい。

六 五に関連して、家畜伝染病予防法で防疫措置や補償が定められている養鶏とは異なり、野鳥や動物園の飼育動物が感染した場合の対応について、法的な規定がないことが指摘されている。 今後の法整備の必要性について政府の見解を示されたい。

七 専門家によると鳥インフルエンザ流行を繰り返す東南アジアやシベリアからの渡り鳥が感染源とされるが、それらの諸国と情報を共有し、連携して対策を行うことで感染経路を断ち切ることが必要だ。 日本が指導力を発揮し、関係諸国へ働き掛けを行うことが求められているが、政府の見解を示されたい。

八 農林水産省は感染自体を防ぐことが出来ないワクチン接種はかえってウイルスを蔓延させる可能性があるとして慎重な姿勢を示しているが、その効果についてどのように考えているか。 また、備蓄ワクチンについてどのような状況の際に使用することを検討しているのか示されたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
鳥インフルエンザ対策に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第150号
平成23年 5月10日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 鳥インフルエンザ対策に関する質問 に対する答弁書

一について

 昨年11月以降の養鶏場での高病原性鳥インフルエンザの発生に際しては、直ちに専門家から成る疫学調査チームを現地に派遣し、立入検査を実施した結果、発生養鶏場には、それぞれ、防鳥ネットに隙間や穴があること、ネズミ等の野生動物が鶏舎内に侵入していることといった衛生管理上の問題があることを確認しており、引き続き、感染経路の究明のための専門家による疫学調査を進めることとしている。

 

二について

 昨年11月から本年3月までの養鶏場での高病原性鳥インフルエンザの発生による殺処分羽数は、肉用鶏で約72万羽、採卵鶏で約110万羽であったが、肉用鶏の平成21年における全国の年間出荷羽数である約6億3000万羽、採卵鶏の平成21年2月における全国の飼養羽数である約1億4000万羽に比べると僅かであった。このため、流通面で一時的に生じた鶏肉及び鶏卵の供給量の減少は、在庫の放出等により短期間で回復し、結果として、鶏肉及び鶏卵の価格に大きな変化は見られなかったところである。

 

三について

 農林水産省のホームページ等において、家きんの肉や卵を食べて鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは世界的に報告されていないことを説明している。また、食品小売業者団体等に対し、不適切な表示や発生県産であることのみを理由とした取引拒否等が行われることのないよう適切な対応を要請している。さらに、不適切な表示が確認された場合には、その是正を要請している。

 

四について

 養鶏場に出入りする運送業者、飼料業者等に対しても防疫措置を徹底させることが必要であると認識しており、本年4月4日に公布された家畜伝染病予防法の一部を改正する法律(平成23年法律第16号)による改正後の家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「新法」という。)第8条の2において、家畜の所有者は畜舎等の出入口付近に消毒設備を設置しなければならないこととされ、また、当該設備が設置されている畜舎等に入る者は、あらかじめ、当該設備を利用して、その身体、持ち込む物品及び車両を消毒しなければならないこととされたところである。

 

五について

 新法第62条の4において、農林水産大臣及び関係行政機関の長は、家畜の伝染性疾病の予防又はまん延の防止に関する事項について、相互に緊密に連絡し、及び協力しなければならないとされていることを踏まえ、関係府省の連携を一層強化し、高病原性鳥インフルエンザの発生予防等に万全を期すこととしている。

 

六について

 御指摘の野鳥や動物園における飼育動物が高病原性鳥インフルエンザに感染した場合については、新法第10条において、高病原性鳥インフルエンザが当該動物から家畜に伝染するおそれが高いと認めるときは、都道府県知事は、当該動物がいた場所又はその死体があった場所等の消毒、通行制限等を行うことができるとされたところである。

 

七について

 高病原性烏インフルエンザの感染には渡り鳥が関与しているとの指摘があることは認識しており、渡り鳥等の研究者間のネットワークをいかして、関係国との連携を強化しつつ、情報の共有等を進める考えである。

 

八について

 現在開発されている高病原性鳥インフルエンザのワクチンは、当該疾病の発症は抑制できても感染は抑制できないため、ワクチン接種後に感染した鶏の発見が遅れ、その結果当該疾病がまん延するおそれがあるという問題点があると認識しており、このため、現在、より効果の高いワクチンや感染予防が可能なワクチンの開発に取り組んでいるところである。
 また、高病原性鳥インフルエンザのワクチンの使用については、原則として、同一の地域内における複数の養鶏場で発生が続発し、発生養鶏場において飼養されている鶏の迅速な殺処分が困難となり、又は困難となるおそれがあると判断される場合に限ることとしている。


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