日本の長期国債の格下げに関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年二月二十二日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(以下、S&Pという)が日本の長期国債の格付けをAAからAAマイナスへ一段階引き下げた。
 S&Pは格下げについて、日本の財政状況をあげ、政府債務残高が先進国でも深刻で財政再建が遅れていることを理由とした。
それと同時に「民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」とS&Pは指摘し、日本の財政運営への不信感を示し、その実行力に疑問符を突き付けた。
 菅総理はS&Pの日本国債の格下げについて、総理官邸での記者の取材に対し、「今、初めて聞いた。本会議から出てきたばかりで、そういうことに疎いので改めてにしてほしい」と述べた。 その後、「情報が入っていないという意味だった」と釈明を行ったが、一国のリーダーの発言としては心許無く、不用意だったと言わざるをえない。
 「疎い」という意味は一般的に、「そのことについて知識や理解が不十分であること」とされている。 また、「内情・本質を見抜く力が欠けている様」といった意味もあり、まさに菅政権そのものが「疎い」のではないだろうか。
 国内外や市場からの信認を得るためにも、将来への展望をしっかりと示し、財政健全化に向けた政府の取り組む意思が問われている。

 従って、次の事項について質問する。

一 S&Pによる日本国債の格下げについてどのような見解か示されたい。また、格下げによるマーケットへの影響について認識を示されたい。

二 菅総理の「疎い」という発言の真意について問う。

三 菅総理が釈明するように、「情報が入っていなかった」のであれば、何故そのような説明をせず「疎い」という表現を使ったのか。総理としての立場を考えれば、その一言が対外的なメッセージとなり、影響力は極めて甚大である。立場と国益を無視した総理の発言に当然、その指導力が問われるが、見解を示されたい。

四 三に関連して、「情報が入っていなかった」のであれば、政府の危機管理意識の低さが問われる。
菅総理は一月二十七日の衆議院本会議後に官邸に戻り、その約三十分後に記者の取材に答えた。この間S&Pの格下げ発表から一時間以上が経過しており、それまでに詳細な情報が上がってきていなかったのであれば、官邸の危機管理能力や情報伝達に問題があるのではないか。
これまでも、北朝鮮の韓国砲撃やロシア・メドベージェフ大統領の北方領土訪問を「報道を通じて知った」ことを認めており、官邸の情報収集能力について不備を指摘されてきたが、現在の官邸の危機管理体制は充分機能しているのか示されたい。

五 四に関連して、どの時点で菅総理のもとにS&Pの日本国債格下げの情報が入ってきたのか伺う。

六 S&Pは一年前から日本の国債を格下げすることを予告していた。専門家から見れば、ある意味で「予想の範囲内」との見方もあるが、そのことについて政府は認識していたのか見解を問う。

七 国債の格下げに伴い、国内外からの厳しい視線が日本の財政政策と、その実行力に向けられているが、政府は社会保障と税の一体改革を六月までにまとめる方針を示している。財政再建の道筋を急いで示す必要があると考えるが、何故、六月まで引き伸ばすのかその理由を伺う。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
日本の長期国債の格下げに関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第092号
平成23年 3月 4日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 日本の長期国債の格下げに関する質問 に対する答弁書

一及び六について

 御指摘の平成23年1月27日に米国格付会社スタンダード・アンド・プアーズが行った日本国債の格付け変更を含め、民間の格付会社による国債の格付けについて、政府として逐一見解を示すととは差し控えたい。 なお、平成22年1月26日に同社が日本国債の見通し(アウトルック)を「安定的」から「ネガティブ」に変更したととは承知していたところである。 いずれにせよ、内外の市場からの信認を確保するためにも、財政規律を維持し、財政健全化を進めていくことは重要と考えている。

 

二及び三について

 御指摘の発言は、その時点で当該格付け変更について聞いていなかったという認識を示したものであり、我が国財政について、内外の市場からの信認を確保するためにも、財政規律を維持し、財政健全化を進めていくことが重要なことはかねてより十分認識している。

 

四について

 政府としては、「緊急事態に対する政府の初動対処体制について」(平成15年11月21日閣議決定)等を踏まえ、国民の生命、身体、財産又は国土に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急事態を認知した場合は、関係府省は直ちに総理大臣官邸に報告することを始めとして、迅速な初動対処体制をとることとしている。 また、このような緊急事態に至らない場合であっても、重要な事案が生じた場合に、各府省間や総理大臣官邸等の関係者間で緊密な報告、連絡体制が適時適切に確保されるよう、日頃から危機管理に万全を期しているところである。

 

五について

 当該格付け変更が公表された後、これに関する情報を正確に把握し、菅内閣総理大臣に対し、総理大臣官邸で行われた記者の取材の後、直ちに報告したものである。

 

七について

 社会保障と税の一体改革に当たっては、あるべき社会保障の姿と方向性を明らかにした上で、具体的な制度改革案とその必要財源を明らかにするとともに、必要財源の安定的確保と財政健全化を同時に達成するための税制改革について一体的に検討することとしており、速やかに改革を進める観点から、本年6月までにこれらを取りまとめていくこととしたものである。


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