精神疾患による教職員の休職に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十三年一月二十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 平成二十一年度中に全国の公立小中学校、高校などの教職員の内、うつ病などの精神疾患を理由に休職した人数が過去最多の五千四百五十八人となったことが文部科学省により公表された。前年度から五十八人増え、増加は十七年連続となる。また病気休職全体に占める割合も六十三.三%と過去最高となった。

 その原因について文部科学省は長時間勤務、生徒指導の複雑化、保護者の要望の多様化など様々な要因が重なり教職員の負担が大きくなっていると分析している。

 増加に歯止めがかからない現状に対して、実態調査を踏まえた精神疾患の原因解明とその対策の実施による早期の対応が求められる。

 従って、次の事項について質問する。 

一 私立の小中学校、高校、中等教育学校、特別支援学校の病気休職者数及び精神疾患による休職者数について政府の把握する数値を示されたい。 

二 教職員総数全体のうち精神疾患での休職者数の割合は〇.六%であるが、これは公務員全体の同割合、民間企業の同割合と比較すると、高水準になるのか、政府の認識を示されたい。 

三 教職員の時間外勤務の実態について、認識する数値を示されたい。 

四 文部科学省分析の精神疾患の原因以外にも、モンスターペアレントへの対応なども大きな負担となり、教職員の精神疾患の一因として関わっていることが推察されるが、その関連性と対応策について政府の見解を示されたい。 

五 平成二十一年度の公立の小中学校、高校などで、新人教職員が一年以内に依願退職した人数が三百二人に上り、この中の八十三人が精神疾患を理由にしている。 こうしたことからも教職員自身にも、適応力や資質、力量に問題があり、採用の段階から見直すことも必要だと言った指摘もあるが、政府の見解を示されたい。 

六 カウンセリング等で教職員のメンタルヘルスのケアをすることにより、早期の予防、発見、治療に効果を及ぼすと考えられるが、職場でのメンタルヘルスに関する環境は充分であるのか、認識を示されたい。
 関連して精神疾患により休職した教職員の復職支援について、どのような対応策が効果をあげているか。また、休職者のうち何割程度が復職しているのか示されたい。

七 このままの状況が続けば、教職員に人材が集まらなくなる危険性も否定できない。
 教職員の増加やカウンセリングの充実、ICT導入による校務の効率化など対策として考えられているが、今後、抜本的な解決策として何が必要だと考えているか政府の見解を示されたい。 

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
精神疾患による教職員の休職に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質177第023号
平成23年 2月 4日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 精神疾患による教職員の休職に関する質問 に対する答弁書

一について

 お尋ねの数については、把握していない。

 

二について

 御指摘の「教職員総数全体のうち精神疾患での休職者数の割合は0.6パーセント」とは、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の教育職員に係る数値と考えられるが、御指摘の「公務員全体の同割合、民間企業の同割合」を把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

 

三について

 平成18年度に文部科学省が実施した「教員勤務実態調査」によると、公立の小学校、中学校及び高等学校の教育職員の一か月当たりの残業時間は、勤務日で約34時間、休日で約8時間となっている。

 

四について

 御指摘の「モンスターベアレント」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一部の教育委員会からは、教育職員が精神疾患を理由に休職した事例の中には、教育職員と保護者との関係が原因と考えられるものもあると聞いている。 文部科学省としては、教育職員が保護者等への対応に困難を来した場合には、個々の教育職員に対応を任せるのではなく、学校が組織として対応することや、教育委員会が対応に当たることなどが重要であると考えており、各学校の問題解決のために一部の教育委員会が実施している、「苦情等対応マニュアル」の作成や、弁護士や臨床心理士等から成る「専門家チーム」の設置等の取組について、各教育委員会において広く行われるよう促しているところである。

 

五について

 公立の学校(大学を除く。) の教員採用については、教員の任命権者である教育委員会の判断において行われるものであり、各教育委員会が適切に対応すべきものと考えるが、文部科学省としては、各教育委員会において優秀な教員が採用されるよう、教員の採用選考に当たり、人物評価を重視し、教員としての適格性を有する人材の確保に努めることや、教員の採用後、教員の勤務実績等と採用選考時の判定結果との関係について実証的に分析を行い、その結果を基に採用選考の方法の更なる改善に努めること等を促しているところである。

 

六について

 文部科学省の調査によれば、平成22年10月1日現在、都道府県及び政令指定都市の教育委員会による教育職員のメンタルヘルスの保持のための取組として、例えば、教育職員向けの相談窓口を設置し、面接相談を実施している教育委員会が約91パーセント、精神科医や病院等を指定し、教育職員が相談できる体制を整備している教育委員会が約76パーセントとなっており、多くの教育委員会において教育職員のメンタルヘルスの保持のための環境整備が進められているものと認識している。
 また、精神疾患を理由に休職した教育職員のうち復職した者の割合については把握していないが、平成22年10月1日現在で、精神疾患を理由に休職した教育職員に対する復職支援プログラムを実施している都道府県及び政令指定都市の教育委員会は約94パーセントとなっており、多くの教育委員会において復職のための支援が行われているものと認識している。

 

七について

 文部科学省としては、精神疾患を理由に休職する教育職員の数を減少させるためには、教育職員の人事管理を行う教育委員会において、メンタルヘルスの保持等のための取組が適切に行われることが重要であると考えており、教育職員が心身ともに健康を保持して教育に携わることができるよう、校務の効率化、教育職員が相談しやすい職場環境の整備、復職のための支援体制の整備等の取組を促しているところである。


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