司法修習生への給与制の一年間延長措置に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年十二月一日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 本年十一月一日に施行された改正裁判所法により、司法修習生に対し給与を支給する制度に代えて修習資金を国が貸与する制度が導入された。

しかし、修習専念義務により、兼職やアルバイトが禁止されている中での貸与制実施は、修習生の経済的な負担増や法曹志望者の減少などが懸念され、見直しを求める声も多くある。

この状況を踏まえた議員立法により裁判所法の改正案が去る十一月二十六日の参議院本会議にて可決・成立したことで、貸与制を停止し、給与制が一年間延長された。この延長措置は、あくまで応急処置的な対応であり、問題の本質的な解決に繋がるものではない。

今後、修習生への経済的支援のあり方や法曹養成を含めた司法制度全体の見直しが求められる。

 そこで、次の事項について質問する。

 

一 給与制を永続させるのでなく、一年間の延長措置の後、予定通り貸与制に移行することが前提であると承知しているが、政府の認識は如何。

二 最高裁によると、給与制を一年間延長することにより、約百億円の経費が必要との試算があるが、その数字の根拠について内閣として把握するところを示されたい。関連して、予算上その延長経費をどのように捻出するのか、その手法について伺う。

三 貸与制を前提にするならば、一年間の延長期間内に、司法修習生の中の生活困窮者に対する返済免除等の救済措置の検討も必要ではないかと考えるが、政府の今後の方針について示されたい。

四 法曹志望者の減少や、司法試験合格率の低下など法科大学院のあり方が問われている。さらに、修習期間を経て、たとえ弁護士になれても仕事がないという現状で、法曹人口年間三千人増員の見直し等の司法制度全体の改革が必要と考えるが、今後の法曹改革に対する政府のビジョンを示されたい。

 

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
司法修習生への給与制の一年間延長措置に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質176第234号
平成22年12月10日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 司法修習生への給与制の一年間延長措置に関する質問 に対する答弁書

一について

 御指摘の裁判所法の一部を改正する法律(平成22年法律第64号。以下「一部改正法」という)においては、平成23年10月31日までの間、暫定的に、司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金を国が貸与する制度を停止し、司法修習生に対し給与を支給するものとされている。

二について

 最高裁判所においては、一部改正法の施行により、司法修習生手当て及び国家公務員共済組合負担金として、平成22年度に約26億円、平成23年度に約70億円、平成24年度に約3億円の合計約99億円の経費が必要となると見込んでおり、平成22年度予算において増額が必要となる経費は、裁判所の他の予算を流用することにより確保することを検討していると承知している。

三について

 「裁判所法の改正に関する件」(平成22年11月24日衆議院法務委員会決議。以下「決議」という)は、政府に対し、平成23年10月31日までに、「個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」について格段の配慮を求めており、政府としては、決議の趣旨を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

四について

 決議は、政府に対し、「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」について格段の配慮を求めており、政府としては、決議の趣旨を踏まえ、適切に対応してまいりたい。


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