司法修習生への給与制廃止と貸与制新設に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年十月十五日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 本年十一月から司法修習生への給与制が貸与制に現実移行する。 しかし、移行が決定された当時の状況と比べ、司法修習生の弁護士としての就職が困難を窮め、運良く就職できても低収入にあえぐような事態となっている。 これは、都会だけでなく地方においても弁護士が飽和状態にあることを意味している。 また、日本弁護士連合会の調査によれば、司法修習生の半数が平均約三百五十万円の借金をしているとの結果が出ている。 このような状況下において、給与制を廃止してしまえば、多くの就職浪人を生み、ひいては、優秀な人材が司法界に入ってこなくなる最悪の状態が強く懸念されるところである。

 そこで、次の事項について質問する。

 

一 右記の現状を踏まえて、確かに、貸与制自体が始まっていないことから、事態の推移や国民的議論をまつ必要性があることも承知するが、政府として、数年を目処として貸与制の廃止を含めた抜本的な見直しを図る意図があるのか、政府の見解を問いたい。 関連して、そのためにも実態調査をしっかりと今から行うべきものと考えるが如何。

二 貸与制を前提にしても、多くの既存の奨学金の返還制度と同様に、貸与金の減免制の新設を、喫緊の課題として検討すべきではないか。 私見によれば、司法修習生が裁判官か検察官に任官された場合や、弁護士として弁護士の存在しない地方に赴任して、その功績が顕著なときなどは、貸与金の減免があっても、その公共性の高さから鑑みて、国民の理解が十分得られるものだと考えるが、政府の見解を問いたい。

三 司法修習生には修習専念義務があり、営利業務の従事が例外なく禁止されているが、給与制が廃止された上での、このような職業活動の自由の制限は、憲法違反の疑義が生じると思うが、政府の見解を理由とともに聞きたい。 関連して、ドイツのように、例外的に、弁護士事務所の手伝い等法律家的な副業を許しても良いのではないか。 併せて、裁判官・検察官の両実務修習は、公務としての側面もあるわけだから、報酬の発生があっても何ら非合理だと思われないが如何。

四 そもそも、司法修習生も含めて法曹養成は、わが国の社会インフラの整備として大変重要なものであり、十分な予算措置が必要だと考えるが、政府の見解を問いたい。

 以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
司法修習生への給与制廃止と貸与制新設に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質176第063号
平成22年10月26日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 司法修習生への給与制廃止と貸与制新設に関する質問 に対する答弁書

一及び二について

 司法修習生に対して修習資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金をいう。)を貸与する制度(以下「貸与制」という。)は、司法制度改革に関する幅広い議論を経た上で、裁判所法の一部を改正する法律(平成16年法律第163号)により、国が司法修習生に対して給与を支給する制度に代えて導入されたものである。 したがって、制度実施前の現段階で、その見直しを検討することは考えておらず、今後、制度の実施状況等を注視してまいりたいと考えている。

三について

 司法修習生の修習専念業務は、司法修習生に対し、限られた期間内で、裁判官、検察官又は弁護士としての実務に必要な能力を習得させるために必要なものである。 司法修習生がその修習に専念することを確保するための経済的措置としては、司法修習生が公務に従事するものではないことなどを考慮すれば、貸与制は合理的なものであると認識している。

四について

 法曹の養成は、司法制度を支える人的体制の充実強化のために重要であり、今後とも、必要な予算の確保に努めてまいりたい。


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