オウム真理教対策に関する第三回質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年六月十四日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 先頃、オウム真理教を取り締まる公安調査庁において大失態が発生した。オウム真理教の主流派が、東京都足立区入谷において、大規模な土地・建物を一億六百万円で取得したが、この事実を報告しなかった。これは明らかに団体規制法の報告義務違反であるが、当該義務違反は罰則がなく、公安調査庁は、オウム真理教に対して、報告の訂正指導をしたに留まる。また、先の主流派は、全国各地で麻原氏の誕生日を祝う行事を公然と開催するようになったり、教団名を秘匿して勧誘活動を活発化させている。

 そこで、次の事項について質問する。

一 当該報告義務違反事件について、大変憂慮すべきゆゆしき事態と考えるが、政府の見解如何。

二 地下鉄サリン事件等の被害者への国による救済が決まった中で、一億六百万円もの大金が教団自身の財産取得に使われた事実は、明らかに社会正義に反する。このような大金は、本来は当該被害者に償われるべきものであり、今回の事態は国民の税金で賠償を肩代わりさせて私腹を肥やす、言語道断の事態であり、国家・国民を愚弄する許し難い事態と考えるが政府の見解如何。

三 今回のような報告義務違反の再発防止策について現行法の範囲でどのように政府は対処するつもりなのか政府の見解如何。

四 私見によれば、現行法での対応には限界がある。そこで、今回の事例を含む一定の報告義務違反については、罰則を設けるべきであり、併せて報告義務の対象として収支も付加すべきと考えるが政府の見解如何。なお暴対法においては、報告義務違反について罰則が付与されているのであり(同法五十条)、テロ行為を行ったオウム真理教に対して、罰則が付与されていないこと自体問題であることを付言しておく。

五 今回の事態を受けて、新たに制定された「オウム真理教犯罪被害者救済法」に則って政府はオウム真理教に対して求償権を行使すべきと考えるが政府の見解如何。

六 教団を秘匿しての勧誘活動が活発化しており、新たに百人以上信徒が確保されており、その多くは地下鉄サリン事件等を知らない世代だと言われている。そこで、法律に違反しない限度で、教団の勧誘活動であることがわかるように注意を喚起したり、相談・苦情窓口を設けたりすべきと考えるが政府の見解如何。

七 教団は、麻原氏の死刑執行を防ぐ意味で、人とカネの増強を目指す発言をしていると聞くが、具体的に、どのような発言を実際しているのか知りたい。

八 団体規制法の限界は火を見るより明らかである。今回の事態を受けて、今後二度とこのような事態を発生させないためにも、団体規制法の見直しを含めた対策検討チームを政府内に設けるべきと考えるが政府の見解如何。

  以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
オウム真理教対策に関する第三回質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第590号
平成22年6月22日

内閣総理大臣                  菅 直人

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 オウム真理教対策に関する第三回質問 に対する答弁書

一から三までについて

 オウム真理教が、一億六百万円を拠出して、東京都足立区入谷に土地及び建物(以下「足立入谷施設」という。)を取得したにもかかわらず、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第147号。以下「団体規制法」という。)に基づく本年5月15日付けの公安調査庁長官に対する報告において、これらを資産として報告しなかったことについては、団体規制法に基づく公安調査庁長官に対する報告の制度に違背するものであり、公安調査庁において、同月28日、オウム真理教に対し、当該報告の訂正を指導するとともに、同年6月11日、足立入谷施設に対し、団体規制法に基づく立入検査を実施し、その規模や構造等を把握したところである。

 政府としては、今後も、団体規制法に基づき、オウム真理教に対する観察処分を適正かつ厳格に実施することによって、この種事案に対処していくとともに、再発防止処分の要件を満たすと判断されるに至った場合には、速やかに同処分を請求する考えである。 

四について

 団体規制法に基づく観察処分に付されている団体に対しては、現行の団体規制法においても、公安調査官の任意調査や立入検査によって当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を明らかにすることができる上、再発防止処分を行うなど必要な規制措置を採り得るところである。

 また、団体規制法では、観察処分に付されている団体に対し、「公安審査委員会が特に必要と認める事項」 についても、公安調査庁長官に対する報告義務を課すことができる旨規定されており、オウム真理教の収支に関する事項についても、その要件を満たす場合には、報告義務を課すことが可能である

五について

 オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律(平成20年法律第80号)第11条においては、国は、オウム真理教犯罪被害者等に対して支給した給付金の額の限度において、当該給付金の支給を受けた者が有する損害賠償請求権を取得することとされているところ、取得した当該損害賠償請求権の行使に当たっては、給付金の支給の趣旨が被害者等の救済にあることを踏まえ、被害者等の損害回復を妨げないよう慎重かつ適切に対応することとしている。

六について

 警察等の関係機関は、これまでも、オウム真理教の活動に関する必要な情報提供を行ったり、相談に応じたりしているところであり、御指摘も踏まえ、引き続き所要の措置を講ずることとしている。

七について

 オウム真理教の幹部信徒である二ノ宮耕一が、昨年5月下旬、「現代は民主主義の時代であり、グルの涅槃(ねはん)を阻止するためには、数の力が必要であるから、一日も早く十万人を入信させよ」などと発言し、信徒に対し、麻原彰晃こと松本智津夫の死刑執行を阻止するため、多数の信徒を獲得するよう指示していたことを把握している。

八について

 団体規制準については、必要に応じて、その在り方を検討しているところであり、今後も引き続き検討を加えてまいりたい。


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