民法の事務管理の規定に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年四月十五日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 わが国民法は第三編第三章において事務管理の規定を置いている。 この趣旨は他人の生活への不当な干渉の排除と、社会生活における相互扶助の要請との調和を図ることにある。
 この趣旨自体には賛成であるが、一部合理的と思えない部分があるので、民法を改正し、立法的解決を図るべきではないか。
 そこで、次の事項について質問する。

一 事務管理には、委任契約における民法第六四八条のような条文がないため、管理者の本人に対する報酬請求権は認められない。 しかし、実質的には民法第七〇二条の本人への費用償還請求権を広く認めることによって対処していると承知している。 とはいえ、このような対処では管理者の保護が不十分である。
 管理者の本人に対する報酬請求権を認めるべきでないか、政府の見解を問う。

二 また、事務管理には委任の受任者に関する民法第六五〇条第三項のような規定がないため、管理者がみずから過失なくして被った損害について、本人に対し損害賠償請求することも認められない。 この点についても、管理者保護の観点から、本人に対する損害賠償請求権を認めるべきではないか、政府の見解を問う。 

  以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
民法の事務管理の規定に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第388号
平成22年4月23日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 民法の事務管理の規定に関する質問 に対する答弁書

一及び二について

 民法(明治29年法律第89号)第697条第1項の事務管理は、「義務なく他人のために」事務を管理する行為であって、同法第643条の委任契約とは異なり、本人の委託を受けずに行われるものであるから、管理者の本人に対する一般的な報酬請求権や損害賠償請求権を認めると、本人の事務について他人の過度の干渉を招くおそれがあると考えられる。
 なお、御指摘の同法第702条は、本人のために「有益な費用を支出したとき」の償還請求だけでなく、「有益な債務を負担した場合」の代弁済等の請求も認めており、管理者の保護は、事案に応じた同条の適切な解釈・適用により図られ得るものと考えている。


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