ネットの青少年保護対策に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年四月九日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 一月二十五日付の日本経済新聞によると、「携帯ネットやインターネットにからむ青少年保護対策で、通信関連業界が難問に直面している。」とのことである。
 「青少年に健全なネット環境を整備する」ことは重要なことである。 しかし、一方では、「通信の秘密は、表現の自由とともに憲法二十一条で保障され、国に検閲を禁じている」。
 このように、ともに重要な利害が衝突した場合にどの価値観を優先するかは、国民が自由な生活を送る上で極めて重大な関心を抱く事項である。
 そこで、次の事項について質問する。

一 同紙によると、「運営会社は児童買春を防ぐため青少年の異性交遊につながる書き込みを規約で制限し、監視要員が警告や削除する対応をとっている。 しかし、加入者同士の一対一のやりとりができる『ミニメール』の取り扱いが問題化」したとある。 「ミニメールの監視は規約の『包括的同意』では十分かどうか問題がある」が、この点に関し、政府の見解を問う。

二 また、「特定のサーバーやサイトをあらかじめ指定し、プロバイダーが自動的に閲覧できなくする」ブロッキングについて、「どのサイトが対象になるかという表現規制問題」がある。 この点、サイトの選定をどのように行うべきかについて、政府の見解を問う。

三 さらに、「ブロッキングについては利用者の同意をとることは考えにくく、」「通信事業者が利用者の通信行為を監視し制限すること」が憲法二十一条の趣旨に違反しないか、政府の見解を問う。

四 同紙によると、「今回の議論のきっかけは青少年保護の世論を背景に警察当局などから『ネットの健全化は事業者の責任』と強く迫られた結果だが、」「事業者は通信内容に関与しない立場」である。 このような警察当局の対応は、民間事業者に憲法の趣旨に反する行動をとらせることとなる点で問題ではないか、政府の見解を問う。

五 「青少年に健全なネット環境を整備する」ことは重要な事項である。 しかし、表現の自由・通信の秘密は憲法で定められた人権であり、より重要な価値観であると考える。 両者が衝突した場合、表現の自由・通信の秘密を優先する方向で対応を考えるべきではないか、政府の見解を問う。

六 同紙も指摘しているとおり、「違法・有害情報全般、ひいては政権に都合の悪い言論統制など、幅広い分野」において、表現の自由が侵害されるおそれがある。 そもそも、このような通信の存在・内容を規制する法律は憲法二十一条に違反して、違憲無効ではないか、政府の見解を問う。 

  以上質問する。 



衆議院議員馳浩君提出
ネットの青少年保護対策に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第367号
平成22年4月20日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 ネットの青少年保護対策に関する質問 に対する答弁書

一について

 お尋ねの 「ミニメール」による通信は、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第4条により秘密が保護されており、運営会社による当該通信の監視については、通信当事者から有効な同意を取得しなければならないと考える。
 利用規約等による包括的同意により監視を行うことについては、向意の対象及び範囲が将来の事実に及ぶことから、通信当事者が予測に基づく不確実な同意を行う場合が想定されるため、通信の秘密の保護の観点から、慎重な検討を行う必要があると考える。

二について

 いわゆる「ブロッキング」については、現在、犯罪対策閣僚会議児童ポルノ排除対策ワーキングチームにおいて、インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策として、その適否を含め、検討しているところである。

三について

 御指摘の日本国憲法第21条の趣旨を踏まえれば、「ブロッキング」については、通信の秘密を不当に侵害するものであってはならず、また、実際の運用に当たっては、正当な表現行為をいたずらに抑制することがないようにする必要があると考える。

四について

 児童ポルノは、児童の人権を著しく侵害するものであり、特に、いったんインターネット上に流通すると、広範囲に拡散する上、削除の要請に応じない悪質なサイト管理者等も存在することから、被害児童の心身により大きな打撃を与え続けることになる。
 御指摘の「議論」は、こうしたインターネット上の児童ポルノの流通防止等を図るための民間事業者における自主的な取組であると承知しており、お尋ねのような問題はないものと考えている。

五について

 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)第3条第3項においては「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する施策の推進は、自由な表現活動の重要性及び多様な主体が世界に向け多様な表現情動を行うことができるインターネットの特性に配慮し、民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重することを旨として行われなければならない。」と規定されており、表現の自由及び通信の秘密の重要性については、政府としても十分に認識している。

六について

 お尋ねの「通信の存在・内容を規制する法律」については、政府として検討しておらず、その内容が必ずしも明らかでないことから、お答えすることは困難である。


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