インターネットを利用した選挙活動に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月二十九日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 我が国の公職選挙法では、インターネットを利用した選挙活動は、第142条で禁止されている「文書図画の頒布」にあたると解釈されている。 また、第146条には「文書図画の頒布または掲示につき禁止を免れる行為の制限」が記述されている。 そのため、選挙期間中インターネットを利用して情報を発信することは違法行為とされる可能性が高いため、選挙期間中に候補者はウェブサイト更新や電子メール配信を自粛することが一般的となっている。
 しかし、日本国憲法では第21条第1項において「表現の自由」が保障されており、選挙活動といえども自由が原則であると考える。
 そこで、次の事項について質問する。

一 公職選挙法第142条及び第146条は憲法第21条第1項に違反するのではないか、政府の見解を問う。

二 公職選挙法の背景にある理念は、選挙といえども自由が原則であるという考えか、選挙においては自由を制限してでも公正を重視するという考えか、政府の見解を問 う。

三 公職選挙法第142条では「文書図画の頒布」が禁止されている。 しかし、ホームページ上の情報は、自分でアクセスしなければその情報に接触できず、「広く配る」という意味である「頒布」にはあたらないのではないか。 政府の見解を問う。

四 また、葉書やビラは作れば作るほどお金がかかるが、ホームページ上の情報はアクセスが増えれば増えるほど、お金がかかるという訳ではない。
   二で確認した理念が仮に「公正を重視する」ものだとしても、インターネットを利用した選挙活動はその趣旨に反せず、むしろ適うものである。 この点、政府の見解を問 う。

五 インターネットを利用した選挙活動のデメリットとして、第三者が候補者になりすまして誹謗・中傷を行うということや、日本国外に設置したサーバーを利用した選挙活動 を取り締まれるかといった点が指摘される。
 しかし、選挙管理委員会が候補者に公的サーバーを提供し、そのサーバーを通じた選挙活動のみを解禁すれば、上記のデメリットを解消することができ、さらに、候補者が発信したコンテンツは選挙後も保存することが可能である。
 技術的な問題は解決可能であり、インターネットを利用した選挙活動を制限する根拠とはならないと考えるが、政府の見解如何。

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
インターネットを利用した選挙活動に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第323号
平成22年4月6日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 インターネットを利用した選挙活動に関する質問 に対する答弁書

一について

 公職選挙法(昭和25年法律第100号)第142条及び第146条について、昭和30年4月6日最高裁判所大法廷判決は「公職の選挙につき文書図画の無制限の頒布、掲示を認めるときは、選挙運動に不当の競争を招き、これが為、却つて選挙の自由公正を害し、その公明を保持し難い結果を来たすおそれがあると認めて、かかる弊害を防止する為、選挙運動期間中を限り、文書図画の頒布、掲示につき一定の規制をしたのであって、この程度の規制は、公共の福祉のため、憲法上許された必要且つ合理的の制限と解することができる」と判示しており、政府も同様に考えているところである。

二について

 公職選挙法第一条においては、同法の目的として「日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員 並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期すること」と規定しているところであり、選挙人の自由に表明する意思を尊重するとともに、選挙の公正を確保するため、一定の規制が設けられているものと認識している。

三について

 公職選挙法第142条に規定する「頒布」とは、「文書図画を不特定又は多数の者に配布する目的でその内の一人以上の者に配付すること」 (昭和51年3月11日最高裁判所第一小法廷決定)をいうものと解されているところ、従来より、不特定又は多数の者の利用を期待してホームページの開設又は書換えをすることは「頒布」に当たると解しているところである。
 なお、平成17年12月22日東京高等裁判所判決も、「ホームページを開設することは、インターネットを通じて不特定多数の者がホームページにアクセスすることを期待し、不特定多数の者に対してホームページの画像を到達させることを目的とするものであるから、現実にインターネットを通じて画像が送信されれば、これが、上記「頒布」に該当することは明らかである」と、判示しているところである。

四及び五について

 インターネットを選挙運動の手段として認めるか否かについては、御指摘のような論点があることは承知していかが、選挙運動の在り方の問題であり、各党各会派において、十分に議論していただきたいと考えている。


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