我が国の地球温暖化対策に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月二十九日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 昨年コペンハーゲンで行われた第十五回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP15)では、一定の方向性は出されたが、鳩山総理が主張する「全ての主要国が参加する公平かつ実効的な枠組み」の本格的な構築までには至らなかった。 これは、EU、米国、中国・インド、島しょ国の四つの軸が、まさに国益をかけて交渉に臨んでいたための当然の結果とも言われている。 そのような中で、鳩山総理は、まさに「地球益」を考えた削減目標である1990年比マイナス25%を掲げたわけである。
 そこで、次の事項について質問する。

一 鳩山総理のこの「地球益」を考えた高い志は評価されるものの、我が国の「国益」をどう守り、かつ国際社会でどのような役割を担おうとしているのか十分明らかにされ   ていないので、その戦略やビジョンについて、政府はどのようなお考えなのか政府の見解を問いたい。

二 そもそも地球温暖化問題において、政府は「地球益」と「国益」について、いずれを優先させようとしているのか。 もしくは両立を考えているのか政府の見解を問いたい。

三 国際的な排出量取引は企業にとってマイナス要因ばかりである。 安定しない排出量価格は企業経営の大きなリスクであると考えるが、現時点において、政府は国際的な排出量取引制度についてどのような評価をなされているのか政府の見解を問いたい。

四 むしろ我が国は、その世界のトップクラスの環境技術を活かして、途上国に技術提供して、その様な貢献が評価される仕組みの創設に尽力すべきではないのかとも考 えるが政府の見解を問いたい。

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
我が国の地球温暖化対策に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第321号
平成22年4月6日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 我が国の地球温暖化対策に関する質問 に対する答弁書

一及び二について

 1990年比で、2020年までに25パーセントの温室効果ガスの排出削減を目指すとの我が国の中期目標(以下「中期目標」という。)は、我が国のみが高い削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできないため、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として表明したものである。 今後の国際交渉に臨むに当たっては、政府としては、引き続き、前提条件を付けた中期目標を掲げ、主要国の背中を押して、積極的な取組を促し、我が国が前提とするところの実現に向けて最大限の努力を傾けてまいりたい。
 また、国内においては、政府としては、経済の成長、雇用の安定及びエネルギーの安定的な供給の確保を図りつつ地球温暖化対策を推進し、地球環境の保全に貢献するとともに現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与してまいりたい。
 このように、政府としては、御指摘の「地球益」と「国益」の双方の観点から、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応は人類共通の課題であることを認識し、成長のための新たな機会とするよう、国際的協調の下で積極的に地球温暖化対策を推進してまいりたい。

三について

 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(平成17年条約第1号)においては、削減約束の達成とともに、地球規模での温暖化防止と途上国の持続可能な開発の支援のため、国別の約束達成に係る柔軟措置として、他国における温室効果ガスの排出削減量及び吸収量並びに他国の割当量の一部を利用できる排出量取引等の京都メカニズムが認められており、政府としては、国内対策に対して補足的であるとの原則を踏まえつつ、これを推進・活用している。
 途上国による温室効果ガスの排出削減を強力に進める上で、民間資金・民間技術は不可欠であり、その導入を更に促進するためには民間企業の意欲を一層高めることが重要との観点等から、政府としては、気候変動対策としての効果に配慮しつつ、現行の柔軟性メカニズムの改善を行う必要があると考えている。 加えて、我が国が世界に誇るクリーンな技術や製品、インフラ、生産設備などの提供を行った企業の貢献が適切に評価されるよう、また、途上国における森林減少及び劣化への対策なども気候変動対策として適切に評価されるよう検討することを含め、新たな仕組みの構築を提案していくこととしている。 同時に、炭素クレジットに関する国内の制度設計を進めつつ、二国間、多国間を含む様々な枠組みを通じて、クレジットを生み出す新たなプロジェクトを開拓し、民間投資を促進していくことも、積極的に検討していくこととしている。
 また、今般国会に提出した地球温暖化対策基本法案においては、国内排出量取引制度を創設するものとし、一定の期間における温室効果ガスの排出量の限度を定める方法については、一定の期間における温室効果ガスの排出量の総量の限度として定める方法を基本としつつ、生産量その他事業活動の規模を表す量の1単位当たりの温室効果ガスの排出量の限度として定める方法についでも、検討を行うものとしている。

四について

 政府としては、途上国による温室効果ガスの排出削減を進める上で、民間資金・民間技術の導入に係る民間企業の意欲を高めるような仕組みを新たに提案していくことによって、省エネ機器・設備から高効率火力発電、原子力発電等のインフラ・システム分野に至るまで、幅広い分野で我が国が有する優れた先進技術の普及を促進し、途上国への支援をより充実させることを目指してまいりたい。 また、こうした先進技術を含む技術及び製品の提供その他の取組を通じた自国以外の地域における温室効果ガスの排出の抑制等への貢献を適切に評価する仕組みの構築等、国際協力を推進するために必要な施策を講じてまいりたい。


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