永住外国人への地方参政権付与に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月十七日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 政府・与党から、永住外国人への地方参政権を付与する法案が提出される予定との報道がなされている。 このような法案推進の大きなきっかけとなったのが、最高裁判所の平成七年二月二十八日判決である。 この判決では、その傍論において、立法で一定の永住外国人に地方参政権を付与することは憲法上禁止されていないと判示している。 しかし同判決理由では、選挙権は権利の性質上日本国民のみを対象とし、外国人には及ばないと判示し、かつ、憲法第九十三条第二項の「住民」とは「日本国民」を意味するとしたうえで、同条は「外国人に対して、(略)選挙の権利を保障したものということはできない」と明言している。 これを素直に理解すれば、同判決において、判決理由と傍論が論理矛盾していると判断してもおかしくないのではないか。 内閣であれ、議員であれ、法律案を国会に提出する際、最高裁判所の合憲違憲に関する判断・見解は決定的に影響を及ぼすものである。
 以上を踏まえて、次の事項について質問する。

一 政府において、同判決はその判決理由と傍論において論理矛盾していると認識していないか。矛盾していると認識している場合、そう認識していない場合も含めて、その理由も併せてお聞きしたい。

二 最高裁判所は同判決のあと何度も、外国人の地方参政権について判示しているが、一度も正面から外国人の地方参政権を認めていないし、同じような傍論もつけていない。この事実を踏まえて、政府においては、永住外国人への地方参政権の付与について、現段階において最高裁判所がどのような態度をとっていると認識しているのか、そのお考えをお聞きしたい。

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
永住外国人への地方参政権付与に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第276号
平成22年3月30日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 永住外国人への地方参政権付与に関する質問 に対する答弁書

一について

 御指摘の最高裁判所平成7年2月28日判決は、「公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、前規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。 そして、地方自治について定める憲法第8章は、93条2項において、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、前規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会等の選挙の権利を保障したものということはできない。(中略)このように、憲法93条2項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第8章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」と判示している。 これは、一切の法律が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である最高裁判所が示した考え方であると承知している。

二について

 御指摘の最高裁判所平成7年2月28日判決は、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律を持って、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」と判示しており、その後最高裁判所がこの見解を変更するような判示をしたとは承知していない。


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