オウム真理教対策に関する再質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月八日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 先のオウム真理教対策に関する質問に対する二月二十三日の答弁書の内容が不十分なものと思われるとともに、新たにいくつかお聞きしたいことが生じた。
 そこで、次の事項について質問する。 

一 先の答弁書で「オウム真理教に対する観察処分を適正かつ厳格に実施することで、その危険性の増大を抑止しており、その結果、国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与しているものと考えている」としているが、オウム真理教の危険性を存続させたままで、危険性の増大を抑止している点を捉えて、国民の生活の平穏に寄与していると考えるのは独り善がりの誤った認識である。なぜなら、金沢市や世田谷区において、オウム真理教の根絶や団体規制法の強化を求める十七万人を超える住民の署名や法務大臣宛の陳情が今も存在することが何よりもそのことを物語っているからだ。政府は、これらの署名、陳情が存在するにもかかわらず、国民の生活の平穏に寄与していると本当に認識されているのか、周辺住民の皆様は当該危険性の完全なる排除を求めているのであり、当該危険性の増大の抑止をもって、国民生活の平穏に寄与していると認識するのは、あまりに自己過大評価だと思わないのか、再度政府に質問したい。

二 関連して、先の質問主意書では、オウム真理教の危険性を根絶する決意やその方法論を尋ねているのであり、先の答弁書では、全くその点の答弁が無く、当該危険性の増大抑止のみを指摘していたにとどまっていた。そこで再度この点について質問したい。

三 先の答弁書で、観察処分の厳格な実施を述べておられたが、三度の観察処分の期間更新の中で、具体的にどのように観察処分の厳格実施を図ってきたのか質問したい。

四 オウム真理教所有の施設以外の不動産について、立入調査をどの程度実施しているのか、法令違反にならない限り詳しくその調査状況を教えてほしいが如何。

五 オウム真理教が作製したサリン等の有毒物質について、政府の所見では、オウム真理教が未だ隠し持っている可能性はあるとみているのか、併せて、オウム真理教の信者にはサリン等を作製できる技術者がいるとみているのか質問したい。

六 オウム真理教の施設に立入調査する際、過去において、警察による施設内同行が実施された事例はあるのか、あるとして、現在は警察の施設内同行は実施されていないと思うが、なぜ警察の施設内同行がなくなったのか質問したい。

七 オウム真理教施設には甘露水なるものが存在しているが、その安全性について、どのような方法で確認しているのか、安全確認をしていないのなら、なぜしないのかその理由も質問したい。

八 オウム真理教施設の調査において、発見された預金通帳や銀行口座に関し、その金銭の出入りについて把握しているのか、把握していないのであれば、なぜ把握していないのかその理由も質問したい。

九 オウム真理教の施設においては、昨年四月から再度麻原氏の写真が飾られるようになったと認識しているが、なぜ飾られるようになったのか、併せて、この状況はオウム真理教の危険性を増大させていると認識していないのか質問したい。

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
オウム真理教対策に関する再質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第221号
平成22年3月16日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 オウム真理教対策に関する再質問 に対する答弁書

一及び二について

 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第147号。以下「団体規制法」という。)は、団体の活動として役職員又は構成員が、無差別大量殺人行為を行った団体につき、その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め、もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的としているところ、政府としては、団体規制法に基づき、オウム真理教に対する観察処分を適性かつ厳格に実施することによって、その活動状況を明らかにし、危険性の増大を抑止しており、その結果、国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与しているものと考えている。
 政府としては、これまでに規制強化を内容とする団体規制法の改正等を求める陳情があったことは認識しているが、団体規制法に基づく観察処分の実施によりオウム真理教の危険性増大を抑止している実情等に照らし、昨年に行った団体規制法附則第2項の規定に基づく団体規制法の見直しにおいては、団体規制法を現状のまま存続させ、より一層厳格に運用することなどによって、積極的に対応していくこととしたものである。
 また、政府としては、オウム真理教が再び無差別大量殺人行為に及ぶことを防止するため、今後の観察処分に基づく調査等により、オウム真理教の危険性が増大し、再発防止処分の要件を満たすと判断されるに至った場合には、公共の安全の確保に寄与すべく、速やかに、同処分を請求する考えである。

三について

 これまで、41回にわたり、オウム真理教から報告を徴取し、その内容を立入検査の結果等と照らし合わせて検証するとともに、全国19都道府県に所在する述べ368か所のオウム真理教が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入り、設備、帳簿書類その他必要な物件について徹底した調査を行っている。 立入検査に際しては、設備を実際に稼動させて機能を確認し帳簿書類の内容をすべて記録している上、その他の物件も、逐一収納場所から取り出すなどして確認し、そのうち電磁的記録媒体は再生して収録内容を確認するなど、細部にわたり十分な検査を行い、適性かつ厳格な実施に努めている。 さらに、立入検査を拒否するなどの違法行為を行った信徒については、積極的に刑事告発するなど、厳格な対応を行っている。

四について

 立入検査は、オウム真理教が所有し又は管理する土地又は建物のうち、主要な事務所や出家信徒の修行場などに使用している施設(以下「拠点施設」という。)を中心に行っているが、団体の活動状況を明らかにするために必要と認められるときには、拠点施設以外のオウム真理教が管理していると認められる土地又は建物に対しても実施している。 昨年一年間でいえば、拠点施設以外の九か所の土地又は建物に対して立入検査を実施した。

五について

 累次の観察処分を実施した結果、現時点においては、オウム真理教がサリン等の有毒物質をいまだ隠し持っている可能性は極めて低いと認識している。 しかしながら、現在のオウム真理教には、かつて「科学技術省」及び「厚生省」と称する組織に所属していた信徒が少なからず在籍し、両組織は地下鉄サリン事件等に使用されたサリン等の生成に深く関与していたことから、今後とも適性かつ厳格に観察処分を実施してまいりたい。

六について

 平成12年2月4日、警察は、団体規制法第14条第2項の規定に基づき、公安調査庁は、団体規制法第7条第2項の規定に基づき、オウム真理教の施設への立入検査を同時に実施している。
 警察においては、オウム真理教の動向について関心を持って注視するとともに、公安調査庁と緊密に連携し、必要に応じて立入検査等の調査を実施することとしている。

七について

 オウム真理教の施設では、「甘露水」と称する水をドラム缶に保管し、信徒に提供しているが、その安全性については、公安調査官がその保管状況や信徒が飲用する状況を見分するなどし確認している。

八について

 公安調査庁の具体的な調査内容について明らかにすることは、今後の観察処分の実施等に支障を来すおそれがあるので、お答えすることは差し控えたい。

九について

 オウム真理教が、麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)への回帰を強めている中、施設内の修行道場の祭壇付近に松本の肖像写真を掲示していることについては認識しているところ、この点については、現在、無差別大量殺人行為の首謀者である松本が、依然としてオウム真理教の活動に影響力を有していることを示す徴表の一つと認識しており、調査している。


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