日本銀行の独立性に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月四日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 一九九八年四月に日本銀行法が改正されて、日本銀行の独立性が法制度として明確化された。
確かに、歴史的に政府が金融政策に介入するとインフレ的な経済運営を求める圧力をかけやすく、国民生活に重大な悪影響を与える例が多くみられる。しかし、現在のわが国はデフレ状況にあり、国民生活に与える悪影響の大きさはインフレ状況下にも比肩すべきものである。
 このように現在のわが国がデフレ状況にあるのは、日本銀行法の改正において、中央銀行の独立性について概念の整理が不十分であったからではないか。
 そこで、次の事項について質問する。 

一 日本銀行の独立性の根拠条文について、政府の見解を問う。

二 日本銀行の独立性を確保した趣旨について、政府の見解を問う。

三 日本銀行の独立性が、政府の介入によるインフレ的経済運営を排除することであるとするならば、日本銀行の独立性とはあくまで手段・方法論であると考えるが、政府の見解を問う。

四 日本銀行の金融政策の最も重要な目的は「物価の安定を図ること」(日本銀行法第二条)である。現在のわが国で「物価の安定」が達成されているか、政府の見解を問う。

五 もし、「物価の安定」が達成されていないとするならば、日本銀行の独立性という方法論に問題があるのではないか、政府の見解を問う。

六 「物価の安定」とは経験則上、消費者物価指数の一〜三%の上昇が最も妥当である。日本銀行の金融政策の最も重要な目的が「物価の安定を図ること」であるならば、この数値を日本銀行法に明記すべきではないか、政府の見解を問う。

七 もし、この数値を明記するならば、日本銀行の金融政策は政府からも日本銀行政策委員会からも独立して、消費者物価指数の一〜三%の上昇の達成を目指すことに一義的に決まることとなる。このことこそ、日本銀行の独立性と呼ぶべきことではないか、政府の見解を問う。 

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
日本銀行の独立性に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第205号
平成22年3月12日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 日本銀行の独立性に関する質問に対する 答弁書 

一及び三について

 お尋ねの「日本銀行の独立性」については、日本銀行法(平成9年法律第89号。以下「法」という。)第3条第1項は、「日本銀行の通過及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」と規定し、また、法第4条は、「日本銀行は、その行う通過及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」と規定しており、日本銀行は、これらの規定に従って金融政策を運営していくこととなる。 

二について

 お尋ねの「日本銀行の独立性を確保した趣旨」については、「日本銀行法の改正に関する答申」(平成9年2月6日金融制度調査会)において、「中央銀行の金融政策の最も重要な目標は、物価の安定であるが、過去の各国の中央銀行の歴史は、中央銀行の金融政策にはインフレ的な経済運営を求める圧力がかかりやすいことを示しており、物価の安定達成のためには、中央銀行の金融政策に関し、高い独立性が付与されることが望ましい。 こうしたことから、日本銀行法改正において、日本銀行の金融政策の独立性を高めるため、日本銀行の金融政策の自主性が尊重されねばならないことを、基本的考え方として確認的に明確にすることが適当である。」とされていること等を踏まえたものである。 

四から七までについて

 現在の我が国経済は、物価の動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にある。また、その原因については、平成20年末以降、世界金融危機と世界同時不況が深刻度を増し、我が国の景気が急速に悪化する中で、需要が供給を大幅に下回る状態が続いたことなどにあると認識している。
 一及び三について及び二についてで述べたとおり、日本銀行の金融政策の自主性は尊重されなければならないと考えている。
 日本銀行においては、デフレ克服が極めて重要な課題であるとの認識の下、金融政策の運営に当たって極めて緩和的な金融環境を維持していく考えを表明するとともに、昨年12月18日には、平成18年3月9日に公表した「中長期的な物価安定の理解」について、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている。」と明確化し、デフレ克服への決意を示したところであると承知している。
 政府としては、物価安定の下で持続的な経済成長の実現を図るべく、経済財政運営を行っていくことが望ましいと考えており、デフレの克服を目指し、日本銀行と一体となって、できる限り早期のプラスの物価上昇率の実現に向けて取り組んでいるところである。


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