国民の「幸福度」調査に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月四日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 民主党政権は昨年十二月三十日に、「新成長戦略」をまとめた。その中に「生活者が本質的に求めているのは『幸福度』(well‐being)の向上であり、それを支える経済・社会の活力である。こうした観点から、国民の『幸福度』を表す新たな指標を開発し、その向上に向けた取組を行う。」との文言がある。これを受けて「鳩山由紀夫首相は二十八日、菅直人副総理・財務相や仙谷由人国家戦略相らと首相公邸で会い、国民の『幸福度』を調査することを確認した。」(三月一日付日本経済新聞)とのことである。
 しかし、日本国憲法第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定めてあり、幸福追求権は保障しているが、幸福権は保障していない。
 これは、幸福とは各人各様異なるものであり共通の価値観が存在しないこと、それにもかかわらず国が一定の幸福の基準をうち立てることは個人の自由を侵害する可能性が高いこと、幸福権を保障しても実現する見込みがないこと等が理由である。にもかかわらず、政府が国民の「幸福度」調査を行うとするならば、個人の自由に対する重大な挑戦である。
 そこで、次の事項について質問する。 

一 憲法第十三条の趣旨について、政府の見解を問う。

二 そもそも、「幸福」とは個人個人により違うものであり、抽象的な「国民の幸福」という概念は存在しない。政府の言う「国民の『幸福度』」とはなにか、政府の見解を問う。

三 「国民の『幸福度』」調査の目的について問う。

四 仮に、「国民の『幸福度』」なるものを測る指標が開発されたとして、それをどのように使っていくのか。「国民の『幸福度』」指標から乖離している個人に対して、あなたは指標から乖離しているから幸福ではないと言うつもりなのか、政府の見解を問う。

五 また、「その向上に向けた取組を行う」とあるが、指標から乖離している個人に対して改善プログラム等を勧める意向であるのか。それは、個人の自由に対する重大な侵害ではないか、政府の見解を問う。

六 「新成長戦略」でも認めているとおり、「生活者が本質的に求めているのは『幸福度』(well‐being)の向上であ」るとしても、「それを支える」のは「経済・社会の活力である」。政府が行うべきは、前提条件である「数値としての経済成長率」「を追い求める」ことであり、その状況で個人個人が自分なりの幸福を追求していくことは、個人の自由であり、国家が介入することは許されないことであると考える。この点につき、政府の見解を問う。

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
国民の「幸福度」調査に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第202号
平成22年3月12日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 国民の「幸福度」調査に関する質問に対する 答弁書 

一について

 憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しており、これは、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきとの趣旨であると考えている。 

二から六までについて

 政府においては、経済的な豊かさのみならず、個人の主観的な満足度等も含め、国民が実感している幸福感や満足感の現状を総合的に表す新たな指標を開発するとともに、その向上に向けて、経済・社会の活力を高めるために必要となる取組を行うこととしているが、これらの取組は、個人個人が幸福を追求するに当たって、政府として環境整備を行うものであり、個人の自由に国家が介入するものであるとの御指摘は当たらないと考えている。
 幸福度を表す新たな指標の開発に向けた第一歩として、現在、内閣府において、国民が実感している幸福感や満足感の現状、それらに影響する様々な要素等について、多面的に把握するため、平成21年度国民生活選好度調査を行っているところである。 


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