東京国立博物館の展示表示等に関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年三月一日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 現在東京国立博物館を始めとする独立行政法人の国立博物館では、古九谷を「伊万里古九谷様式」として展示している。これはかつて石川県で制作されたといわれた古九谷が、すべて佐賀県伊万里(有田)で制作されたものと断定してのことと思うが、こうした伊万里古九谷論争は、器と絵付産地の問題も含め、近年の調査研究で反論資料も出ており、決着していない問題である。古九谷は世界的名陶としてわが国の誇りでもあるが、こうした未決着の問題に対して、公平公正を求められる国立博物館が断定的な表示を先行して行っていることに十分な説明がなされているとは言い難く、国民と国会に対して十分な説明が求められると考える。

 そこで、次の事項について質問する。 

一 古九谷の産地問題については、学界の多くが伊万里(有田)産と認識しているようであるが、研究者の間では反論意見もあり、決着している訳ではないのに、公平公正であるべき国の機関による率先した表示に踏み切った経緯と根拠について、政府の説明を求める。

二 古九谷伊万里説に対して、その根拠となった資料の信憑性や、最近の調査による反証資料の確認もされているが、それについて国は現在どのような認識を持っているか。

三 わが国の重要な伝統産業である九谷焼を、そのルーツというべき古九谷が石川県産ではないとする「伊万里 古九谷様式」として表示したことの影響について、その後の九谷焼にかかわる産業界に多大なマイナスイメージを与えた。また、「古九谷」表示イコール「伊万里 古九谷様式」などという一般国民にはおよそ理解できない認識を展開する研究者が出ており、博物館や美術館での展示表示の混乱を助長しかねない。それを国はどう認識しているか。

四 学界の一部の研究者から、「古九谷様式」表示をやめて「初期伊万里」あるいは「肥前」などの表記に変更するという、「古九谷」の名称抹殺論まで出ていると聞くが、この点に関して国は今後どのような方針を示すのか。

五 国指定重要文化財として指定されている「古九谷 色絵竹叭々鳥文大皿」が東京国立博物館でなぜ長年展示されずにいるのか。展示表示上の問題か。ほかの民間美術館の重文指定「古九谷」に関して展示表示上の指導を国として行うのか。

六 国指定史跡「九谷磁器窯跡」は保存と活用を図るべく今後整備が検討されているが、近年同遺跡に追加指定された九谷A遺跡で発見された色絵付け窯跡や青手などの色絵磁器片の存在から、「古九谷」の生産遺跡である旨の現地表記(説明看板)を整備に伴い行うべきだと思うが、国の考えを問う。 

  以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
東京国立博物館の展示表示等に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第187号
平成22年3月9日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 東京国立博物館の展示表示等に関する質問に対する 答弁書 

一及び三について

 独立行政法人国立文化財機構(以下「機構」という。)が設置する博物館において展示される文化財の表示については、機構の責任において行われているものであり、お尋ねについて政府としてお答えする立場にないが、機構からは、御指摘の「伊万里 古九谷様式」という表示については、関係学会等における学術研究の成果等を踏まえて、産地を「伊万里」とし、分類を「古九谷様式」とするものとして示していると聞いている。 

二及び四について

 御指摘の点については、関係学会等において議論されているものと承知しており、お尋ねについて政府としてお答えする立場にない。 

五について

 機構からは、東京国立博物館においては、十万件を超える収蔵品の中から限られた数の文化財を展示する必要があり、その時々の展示の企画内容等に見合った文化財を選定していると聞いている。
 また、民間の美術館において展示される文化財の表示については、各美術館の設置者において、適切に判断すべきものと考えている。 

六について

 お尋ねについては、九谷磁器窯跡の管理団体である加賀市が、文化財保護法(昭和25年法律第214号)第115条第1項に規定する説明板の中で、当該史跡に関する説明を適切に行うものと考えている。


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