中学・高校生の卒業クライシスに関する質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年二月十八日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 ここ数年、日本の社会は、貧困の問題を噴出させている。おとなたちの貧困の影に隠れて見えにくかった子どもたちの貧困問題も、ようやく社会に注目され始めている。
 子どもの貧困問題は、ひとりの人間の育ちと人生を左右し、日本社会の将来に関わる「待ったなし」の課題である。
 そこで、次の事項について質問する。 

一 子どもの貧困の定義について、政府の見解を問う。

二 二〇〇九年度高等学校在籍者のうち、経済的理由で授業料滞納をしている生徒について、公立・私立を問わず、滞納を理由とした停学・除籍・卒業延期などの処分を行わず、卒業させることが重要である。前提として処分の実態を把握する必要があるので、滞納を理由とした停学・除籍・卒業延期などの処分の実情について情報の開示を求める。

三 滞納を理由とした停学・除籍・卒業延期などの処分を行わせないために、地域活性化・生活対策臨時交付金等を活用した、私立高等学校の経費圧迫を回避するための財政支援が考えられる。そのような支援を行う意思があるや否や、政府の見解を問う。

四 また、卒業を前にして授業料滞納による除籍の危機にある生徒・家庭への学費免除の特例措置、返済猶予措置等も重要なことと考える。そのような対応を行う意思があるや否や、政府の見解を問う。

五 授業料滞納をしている生徒に対し卒業式で卒業証書を回収する、卒業式の出席を認めないなど、生徒の心情に配慮しない対応を行う学校があると承知している。そのような対応を決めている教育委員会への撤回要請と各学校への周知徹底が必要ではないか、政府の見解を問う。

六 さらに、二〇一〇年度入試において定時制高校進学を希望する者については、定員の空きがあれば不合格者を出さない、定員の臨時増を図る等の方策で、全員が入学できるようにする事も緊急の課題と考える。二〇一〇年度入試において、定時制高校が追加入学試験を行う際には、その情報が生徒に行き渡るよう周知徹底を図るとともに、十分な募集人数の設定をすることが重要と考えるが、政府の見解如何。 

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
中学・高校生の卒業クライシスに関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第142号
平成22年2月26日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 中学・高校生の卒業クライシスに関する質問に対する 答弁書 

一について

 お尋ねの「子どもの貧困」は、様々な意味で用いられているものと承知しており、その定義について一概にお答えすることは困難である。 なお、厚生労働省としては、子供の貧困に関する指標として、平成21年10月及び11月に、経済協力開発機構の計算方法に基づき、我が国の子供に関する相対的貧困率を公表したところである。 

二について

 文部科学省としては、お尋ねの処分の実情については把握していない。 なお、文部科学省が実施した「平成20年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、平成20年度に経済的理由で高等学校を中途退学した生徒の数は2208人である。 

三及び四について

 文部科学省としては、全ての都道府県において、経済的理由により修学困難な国公私立の高校生を対象とする奨学金事業が実施されているほか、公立の高等学校における授業料の減免措置が採られ、私立の高等学校における授業料の減免措置に対しても補助事業が実施されているものと承知している。 文部科学省では、この補助事業に対し助成を行っているほか、厳しい経済情勢を踏まえ、平成21年度第1次補正予算においては、「高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金」として約486億円を計上し、都道府県が実施している奨学金事業及び補助事業に対する緊急支援を行っているところである。
 さらに、厚生労働省では、「高校生の授業料滞納に係る生活福祉資金(教育支援資金)の取扱について」(平成22年2月12日付け社援地発0212第1号厚生労働省社会・援護局地域福祉課長通知)を各都道府県に発出し、各都道府県社会福祉協議会で実施されている生活福祉資金貸付制度において、平成21年度に限り、高等学校の授業料をやむを得ない事情により滞納している低所得世帯に対し、当該滞納額を貸し付けることを可能としたところである。 

五について

 文部科学省としては、経済的理由により修学困難な高校生に対しては、各学校において奨学金事業等を活用しつつ、生徒の心情に最大限に配慮した対応を行うことが必要であると考えている。
 文部科学省においては、学ぶ意欲のある高校生が経済的理由により修学を断念することがないようにするため、各都道府県教育委員会に対し、「経済的理由により修学困難な高等学校等生徒への支援について」(平成22年2月9日付け21文科初第561号文部科学大臣政務官通知)を発出し、授業料の減免措置等の施策について高校生や保護者等への周知を図るよう依頼するとともに、各学校において、生徒や家庭の実情を十分に把握した上で相談に応じるなど、きめ細かな対応が行われるよう配慮を求めたところである。 

六について

 高等学校の定時制の課程における追加募集を含め、高等学校の入学者選抜に関する情報については、各都道府県教育委員会等において適切に周知が行われるものと考えている。 また、公立の高等学校の入学定員については、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号)第4条の規定に基づき、各都道府県において地域の状況等を踏まえつつ適正に定められ、私立の高等学校の入学定員についても、各学校の設置者によって適切に定められるものと考えている。


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