全国学力・学習状況調査に関する再質問主意書

下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年二月十日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 全国学力・学習状況調査に関する質問主意書を本年一月二十一日に提出し、同二十九日に答弁書の送付を受けたが、精査する限りにおいて納得のいく答弁を頂いていないところがある。
 従って、次の事項について再度質問する。 

一 全国学力・学習状況調査(以下「本調査」という。)については、悉皆調査から抽出調査に変更されたことにより、本調査の目的・機能が変更されたのではないかという質問に対して、抽出調査の他に希望利用方式も導入したこと等により、「本調査の目的は達成することができる」との政府答弁を頂いたところである。この答弁は、本調査の目的・機能の変更はないとの意味なのか、まずは確認したい。

二 関連して、本調査の目的・機能に変更がないという意味ならば、以下のような疑問が生じる。すなわち、先の質問主意書でも指摘したとおり、本調査の目的の一つに、「各学校が、児童生徒一人ひとりの学力・学習状況を把握し、教育指導や学習の改善等に役立てる」ことがある。まさに、一人ひとりの学力向上に本調査を活用しようとする目的である。しかし、これは悉皆調査においてはじめて児童生徒一人ひとりの学力等の把握が可能であって、今回の抽出調査になれば、たとえ希望利用方式を採用してもこの方式を利用しない学校設置者も存在するわけだから、論理的に児童生徒一人ひとりの学力等の把握は不可能である。そうであるならば、明らかに本調査の目的の一部ではあるが、児童生徒一人ひとりに対する科目毎または単元毎の学力の的確な把握と、この把握に基づく的確な学力向上策を指導・改善していくとする目的は、変更された(なくなった)と言わざるを得ないと考えるが、政府の見解を問いたい。なお、本調査の対象からはずれた学校設置者の全部が、この希望利用方式を利用することを条件に、児童生徒一人ひとりの学力等の把握ができるとの発想も可能であるが、もはや仮定の話であり、論理的には破綻していることも付記しておきたい。

三 現段階において、全国の各自治体において、希望利用方式を利用して全校調査を行うところはどのくらいなのか教えてほしい。

四 先の質問主意書において、希望利用方式を利用しなくても本調査が実施できた学校設置者と希望利用方式を利用せざるを得なかった学校設置者との不公平さを質問した。確かに「問題の作成、印刷及び学校への配送を国費で賄うこととする」との答弁には一定の配慮は伺える。しかし、採点・集計等は学校設置者の自己負担であることは不変であり、この点においての不公平さは明らかに残る。政府としては、この採点・集計等における費用負担の差異と、さらには採点の責任主体の差異とそれに付随する採点方法の差異という、以上二点について学校設置者間あるいは本調査対象の児童生徒間において、不公平さが存在すると思うが、政府もこれを認めるものか、先の答弁では不明であったため確認したい。

五 そもそも、児童生徒一人ひとりの学力向上をいかに図るかについて、国がその責任をもつ政策と考えているのか、さらに、その国の責任とは、学校や自治体の責任との関係で、より主体的主導的な責任なのか、逆に学校等の補完的責任と考えているのか、この価値判断が今回の本調査が悉皆であるべきか抽出調査であるべきかの判断の分岐点になると考えるが故に政府の見解を問いたい。

六 本調査が、国及び各自治体においての児童生徒の学力向上の施策にどう活かされているのか、具体的施策をできる限り紹介してほしい。さらに、この具体的施策を政府はどう評価して、どう今後の施策に反映していく所存かをお聞きしたい。 

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
全国学力・学習状況調査に関する再質問
に対し、下記答弁書を送付する


内閣衆質174第106号
平成22年2月19日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 全国学力・学習状況調査に関する再質問に対する 答弁書 

一及び二について 

 全国学力・学習状況調査(以下「本調査」という。)については、平成22年度においても、全面的な児童生徒の学力等の状況を把握し、国及び地方の教育施策の結果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実にいかすという目的には変更はない。
 本調査の目的を達成するための調査の方式については、悉皆調査から抽出調査に切り替えるとともに、抽出調査の対象外の学校については、その設置者が希望すれば、抽出調査と同一の問題の提供を受け、本調査を利用できる方式(以下「希望利用方式」という。)を導入することにしている。 本調査より、抽出調査の対象となった学校においては、当該学校の各児童生徒の学力等の状況を把握し、当該学校の教育指導を充実することが可能となる。 また、抽出調査の対象外の学校においては、三年間の悉皆調査の結果をによって蓄積された全国及び各地域別等の信頼性の高いデータ、平成22年度の抽出調査の結果を参考にしつつ、地方公共団体や各学校における独自の調査の結果、さらに必要があれば希望利用方式による調査の結果も活用することによって、当該学校における各児童生徒の学力等の状況を把握し、当該学校の教育指導を充実することが可能となると考えている。 

三について

 現在、文部科学省において学校設置者に対し希望利用方式の調査の希望について照会し、一部の学校設置者から回答を待っているところであり、お尋ねの数について現段階でお答えすることは困難である。 

四について

 抽出調査における採点等は、国全体及び都道府県別の学力等の状況を把握するための基礎データを得るために行うものであることから、国が一括してこれを行うこととしている。 これに対し、希望利用方式の調査については、その結果を抽出調査の基礎データとするために行うものではなく、その結果を各学校設置者が自らの判断で管理し、その後の当該学校における教育指導にいかすために行うものであることから、各学校設置者の責任と費用負担により、採点等を行うこととしているものであり、「不公平さが存在する」との御指摘は当たらないものと考えている。
 なお、文部科学省としては、希望利用方式の調査についても、問題の作成、印刷及び学校への配送は全額国費で行い、また、各学校設置者による採点に資するよう、設問ごとの出題の趣旨、正答の条件、予想される解答の類型等をまとめて、各学校設置者に配布する予定である。 

五について

 教育行政における国と地方公共団体の役割については、公立学校の運営の責任は基本的に地方公共団体が負い、国は教育水準の維持等に責任を負うものと考えている。 文部科学省としては、全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上を図るための施策の一つとして、今後とも、地方公共団体や学校の協力を得ながら本調査を実施し、国及び地方の教育施策の結果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実にいかしてまいりたい。 

六について

 文部科学省においては、本調査の結果から明らかになった課題等を踏まえて、学習指導要領の改訂等を行うとともに、本調査の結果を多面的に分析した上で、学校における教育指導や教育委員会における教育施策の改善等に役立つよう、「授業アイディア例」等の情報の発信に務めているところである。 また、すべての都道府県及び政令指定都市において本調査の結果を活用して「学校改善支援プラン」が作成されるなど、各教育委員会における本調査の結果の活用も進められているところである。 さらに、本調査の結果を踏まえて、例えば、教育配置を増やして少人数指導を充実させたり、非常勤講師やボランティア等を配置して補習学習を充実させたり、また、学習教材の充実や家庭学習の定着を図るなど、地域や学校の実情等に即した取組が行われているところである。
 文部科学省としては、本調査により、国や地方公共団体において、児童生徒の学力等の状況を把握し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る取組が、着実に推進されていると評価しており、今後とも、「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)を踏まえ、本調査を実施するとともに、その結果の活用を推進してまいりたい。


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