公立高校無償化に伴う私立高校に対する施策に関する質問主意書


下記の質問主意書を提出する。
平成二十二年二月四日

提 出 者                  馳   浩

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 民主党のマニフェストには「私立高校生のいる世帯に対し、年額十二万円(低所得世帯は二十四万円)の助成を行う。」とあり、選挙期間中各候補者が「低所得者」とは標準世帯で年収五百万円であることは何度も繰り返し発言し、マスコミもそのように報道してきた。ところが、政府予算案をみると「低所得者」とは「年収二百五十万円」とされた。
 また、四月からの「公立無償・私立有償」の影響で、私学への入学希望者減少の影響も現れ、公私の格差感は拡大していると思われる。
 従って、次の事項について質問する。 

一 「年収二百五十万円」とは、実質的に生活保護世帯水準である。これまで国の「授業料減免事業等支援特別経費」の制度もあり、すでに生活保護世帯では授業料の全額補助が実現している都道府県もある。このような現状において、「低所得者」を「年収二百五十万円」とした根拠を問う。

二 昨年十月十五日に発表された私学就学支援金を含む高校無償化への概算要求額は四千五百億円であった。しかし、政府予算案では、私学の低所得層支援の五百六十七億円を削減して三千九百三十三億円で決着した。高校生対象の給付制奨学金百二十三億円の要求も実現しなかった。これでは、「私学の就学支援金を犠牲にして公立高校の無償化を実現した」と言われても仕方のない施策である。この点につき、政府の認識を問う。

三 さらに、「授業料減免事業等支援特別経費」が六億八千万円から二億五千万円に四億三千万円削減されている。この減額の根拠を問う。

四 私学経常費助成について、昨年十月十九日、高井美穂大臣政務官はアルカディア市谷での講演の中で、「私学助成は削減しない。維持するつもり」と答えられた。川端達夫大臣も私学助成の確保に努める意向を私学団体代表らに語っておられた。しかし、私立高校への経常費助成予算が総額で四十億円削減され、九百九十八億五千万円と千億円を切る事態になった。この減額の理由如何。

五 四の事例は公約違反ではないか。政府の見解を問う。

六 一月六日付の毎日新聞では「大阪府の公立中学三年の進学希望者(全日制)のうち、私立高校の専願希望者(先月十六日現在)は一三.三四%で、記録が残る九一年度以降で最低となった。」と報じている。これは、四月からの「公立無償」の影響が大きいと考えるが、政府の認識を問う。

七 今回の政府の予算措置により、公立高校と私立高校の学費格差がより鮮明になったといえる。この学費の公私格差を是正するために今後私学の経常費助成を大幅に増額すべきと考えるが、政府の見解如何。

八 また、授業料等助成の補助対象を拡充した新たな制度設計を行う意思があるや否や。 

 以上質問する。



衆議院議員馳浩君提出
公立高校無償化に伴う私立高校に対する施策に関する質問
に対し、下記答弁書を送付する

内閣衆質174第78号
平成22年2月12日

内閣総理大臣                  鳩山 由紀夫

衆議院議長  横 路 孝 弘 殿

 

 衆議院議員馳浩君提出 公立高校無償化に伴う私立高校に対する施策に関する質問に対する 答弁書 

一、二及び七について 

 平成22年度予算において、高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。) については、私立の高等学校等の生徒等であって一定の受給資格を有する者に対し、公立の高等学校の標準的な授業料に相当する額を支給するとともに、これらの者のうち保護者等の収入の状況に照らして特に経済的負担を軽減する必要がある者に対しては、これに一定の額を加えて支給することとしており、「私学の就学支援金を犠牲にして公立高校の無償化を実現した」との御指摘や、「公立高校と私立高校の学費格差がより鮮明になったといえる」との御指摘は当たらないものと考えている。
 この「保護者等の収入の状況に照らして特に経済的負担を軽減する必要がある者」の基準については、就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律(昭和30年法律第四十号)第二条の規定により国が補助する学用品等の支給対象者に係る基準を参考にしている。 

三について

 平成22年度予算においては、就学支援金を創設し、保護者等の収入の状況に照らして特に経済的負担を軽減する必要がある私立の高等学校等の生徒等に対しては、その授業料に充てるため、授業料減免事業等支援特別経費により支出されてきた対象生徒一人当たりに対する平均国庫補助額を上回る額を就学支援金として支給することとしていることから、授業料減免事業等支援特別経費において、これまでこれらの者に係る国庫補助としで計上していた部分の額を減額したところである。 

四及び五について

 御指摘の「公約」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、私立の高等学校等の教育に係る経常的経費については、都道府県が行う助成等に対し、その一部の国庫補助を行うとともに、所要の額の地方交付税措置を講じているところであり、国庫補助については平成22年度予算において現下の厳しい財政事情の下、前年度より40億円を減額したところであるが、地方交付税措置については拡充を図ったところである。 

六について

 御指摘のデータの詳細は把握していないが、一般論として、中学校三年生の進路に関する選択については、様々な要因が影響するものと考えている。 

八について

  お尋ねの「授業料等助成の補助対象を拡充した新たな制度設計」の内容が必ずしも明らかではないが、文部科学者としては、学校教育において私立の高等学校が果たしている役割の重要性にかんがみ、今後とも、その教育に係る経常的経費への支援を含め、私立の高等学校における教育の振興に努めてまいりたい。


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