衆議院 文部科学委員会 会議録 第174回国会 第5号
平成22年3月9日(火曜日)---------------------------------------------------------------
【馳浩 質疑部分 抜粋】○田中委員長
次に、馳浩君。
○馳委員
自由民主党の馳浩です。
この高校無償化法案の審議に際して、法案の論点、また課題、こういったことを浮き彫りにするために参考人としてお呼びをしたところ、こうしてお出ましいただいたことに改めてお礼を申し上げます。 本当にありがとうございました。そこで、まず川崎参考人にお伺いしたいと思います。
先ほど、配付資料をもとにして御説明をいただきました。 佐賀県の教育委員会教育長としてという資料だと思いますが、改めてお伺いいたします。第三条第一項、このただし書きの部分について、「この適用については一律に適用する具体的な対象は見出し得ないところから、原則不徴収とし、」例外的に「徴収する場合は教育委員会に諮り、個別具体に審査することとしている。 徴収する場合は、相当限定的なものになると考えている。 留年の結果、三十六月を超えた場合であっても、本人にその責がない場合などについては、不徴収とする。 また、高等学校等を卒業した者であっても、一律に徴収するとはしない。新たな就学が、その生徒の社会人としての資質を高め、職業的自立などに必要と認めた場合には不徴収とする。」。 この方針について、教育長の権限で決めたのか、あるいは知事さんも了解の上で決めたのか、それから、議会に諮って、議会の了解を得たのか。 これは、やはり判断が、お互いに、教育現場だけでもだめですし、知事は財政全体の責任を持っておられますから、知事の判断も必要でしょうし、当然、議会に承認を得なければいけない問題でもあろうと思います。
教育長、知事、議会の対応、いずれについて、どういう対応だったのかということをお話しいただきたいと思います。
○川崎参考人
お答えいたします。
まず、法案が出された段階で、我々は直ちに知事の方に出向きまして、こういう法案が出されている、県としてどのように対応するか考えていきましょうということでお伺いをしたわけでございます。その中で、まず教育長の方で一つの案をつくってくれぬかということでございました。 それで、先ほど申し上げましたように、留年者の現状、それから佐賀県で一度卒業して、また通っている者の現状を見たときに、これを直ちに徴収するということにはならない、むしろこういう者こそ支援をすべきだという判断をしたわけでございます。
当然、そういたしますと、国からの補てんがない場合、交付金がない場合は、県の財政負担となるわけでございますので、そこは知事ともよく話をし、合意の結果でございます。 したがって、私学においても同様の対応をするということで、別途対応するという方針を出したところでございます。
そして、出した段階で議会の方にも我々は説明をし、今、県議会は一般質問がちょうど終わったところですけれども、冒頭に提案をするということも、それから、趣旨、内容につきましてもすべての会派に説明をし、今、県議会で議論を経ていますけれども、そこの条文についての異論はあっておりません。 そうやろうということでございます。
以上でございます。
○馳委員
すばらしいですね。 議会にも異論はなく、やろうじゃないかと。本当に、そういう意味では、随分、川崎教育長の根回しの周到さに敬服をするところであります。そうすれば、二番目に、やはり次に来るんですね、「条例の施行時期」、こういうふうになるわけですね。 「施行の時期については、条例の附則で規則委任をしており、法律の成立を受けて、」速やかに「規則を制定することとしている。 平成二十二年四月一日施行を念頭において準備を進めている。」。
そして三番目では、「条例(案)の議会への提案時期」については、「二月定例県議会の冒頭に提案している。」。 そして今後、この国会での法案の成立の様子を見ながら、会期途中での追加提案、六月の定例会、あるいはそれまでに臨時議会を開いて対応する。 こういうことをすべて、知事も議会も了解をとっている、こういうことでよろしいでしょうか。
○川崎参考人
その文章、私の方でつくりましたけれども、ちょっと誤解があっては申しわけございません。二月定例議会で提案し、当然可決していただきたいと思っています。 六月議会ということも検討をしましたということでございまして、それはしておりません。 もとより条例提案権は知事にございますので、知事と相談せずして条例提案はございません。
以上でございます。
○馳委員
すばらしいと思います。しかし、これは佐賀県のことではないんですが、たまたま私の住んでおります石川県、今ちょうど知事選で議会が開いていないんですよ。 つまり、骨格予算については二月中に議会をやって終わっちゃって、これはやっていないんですよ。 したがって、全国四十七都道府県、佐賀県のような対応をしていない都道府県もあると思われます。
そうすると、この第三条によりますと、ただし書きについて、条例で有償とするかどうかという対応を具体的に決めることになると、六月議会になってしまうところは、四月、五月の分は、これは法案では公立高校は無償ですから、取れないですね。 したがって、このタイムラグによる、有償化をして生徒から授業料を払ってもらう分というのは、どうしようというふうな、ちょっと不安を抱えておられるんですよ。
佐賀県は、それは多分この三月中に議会で可決をされると思います、ここまで根回しをされておられるのであるならば。 しかし、ほかの都道府県のことも考えて、あなたが、やはりきょうは地方の都道府県の教育長という立場で来ていただきましたので、そうではない、あら、条例が間に合わないぞ、法案が先に成立してしまってはタイムラグが生じて、この差額をおれたちは財政負担しなきゃいけないのかなという不安を持っておられると私は思っているんですよ。
そういう方々、そういう教育長の立場に立って何かおっしゃりたいことがあれば、きょうは高井美穂政務官もそこに来てちゃんと聞いておられますので、どうぞ率直にお申し出いただきたいと思います。
○川崎参考人
当初の意見陳述のときに申し上げましたように、今回の法案を我々目にしたときに、ただし書きの運用が自治体に任されているということをお伺いいたしました。 当然、自治体にお任せ願えれば自治体はそれぞれの対応をしていくことになるし、必ずしも同様の対応にはならないだろうと思っております。それならそれで、条例委任する旨を法案の中に書いていただければ、それは自治体できちんとしますけれども、あそこの解釈が各県によって違うのかということになることを非常に懸念した次第でございます。 そこで、完全無徴収という問題、原則無徴収、それから言いましたように国庫負担される分の一般無徴収というようなさまざまな考え方があって、各県ともそれぞれの対応を考えられていると思います。
それから、一般的には、相当法律が先行し、それを受けて条例で決めていくというのが一般的でしょうけれども、それについては私どもも、現実にこう審議されているわけですから。 ただ、非常に県民も期待し、画期的な施策であろうと思うだけに、四月一日からの施行であれば、それをきちんと佐賀県としては論議をしようということでございました。
したがって、法案が通ってから考えるということであれば御指摘のようなことも考えられますでしょうし、各県によってそこはばらついているというのが現状じゃないかと私は理解しております。 いろいろ照会いたしましても、いろいろばらつきがございます。
○馳委員
そうすると、今の教育長の答弁は深く心にしみて高井政務官も聞いておったと思うんですが、この省令の解釈が、やはり一定の解釈として、四十七都道府県すべてにおいて、なるほど、そういう基準で国費算定額が基準となっているんだなということがわかれば安心して準備にも入れると私は思うんですよ。教育長、私の解釈は間違っていますでしょうか。その省令の基準を早く、解釈をお示しすることが必要ではないかなと私は思っておりますが、教育長どう思われますか。
○川崎参考人
示されればそれにこしたことはないと思います、県政を預かる者といたしましては。 そうしないと、どの分が国庫によって持ってこられるのか、補てんされるのかというのがわからないわけですから。ただ、条文の中には私学への対応が記載されておって、その中で留年生と一度卒業した者というのがありますので、それが一つの線なのかなというイメージは我々持っているところでございます。 したがって、本県の場合、そうであるならばということで、あえて超過負担をしてもという思いでございます。
ただ、今日の現状からして、それぞれの自治体でそれなりの裁量権があるというのは、これまた必要ではないかとも思っております。
○馳委員
私は、今教育長のおっしゃったことで、その県なりの裁量権、地方分権の時代に、我が県はこうしたい、それを我が県の財政負担によってしたいということはあり得べしと思うのですが、しかし、そこにゆだね過ぎてしまっては、いわゆる都道府県による教育格差が新たに生じるのではないのかなという不安を禁じ得ないんですね。したがって、川崎教育長がお出しになった配付資料の五番目が極めて大きな意味を持ってくるんですよ。 改めて私が読みますね。 「超過負担が生じた場合の補填」 「これにより、超過負担が生じた場合には、」国の方針で導入するので「国の責任において補填してもらいたい。」。
教育長は大変謙虚なので、補てんすべきだとは書きませんでしたね。 まさしく要望ということで、恐らく地域間格差がこれによって起きないように、つまり財政負担の差によって教育の格差を起こしてはならぬよ、こういう御指摘であろうと思っておりますが、その解釈でよろしいでしょうか。
○川崎参考人
若干遠慮しまして。 負担すべきだと思います。
○馳委員
高井政務官、この委員会審議を十分考慮した上で対応をお願いしたいと私は思いますね。さて、次に、学者の小川さんと三輪さんにあえてお伺いしたいと思います。
大臣も、本会議での答弁でも、この委員会においても、高校教育、教育システムにおいてどうすべきかという議論があって、その上で教育費の負担軽減策、いわゆる機会均等ということを考えるべきではないかという指摘に対して、やはり学力向上、公共心の育成に資するのだ、社会全体が税金を使って皆さんの教育を支援しているんですよという自覚を求め、保護者にもそれを求めたいというふうにおっしゃったんですが、残念ながら、では高校教育においてどのように学力向上につなげたり、公共心の育成、また文部科学省的に言うと規範意識の醸成となろうと思いますが、この具体性が出てまいりません。
私たちは、これは何度も申し上げております。毎年三千九百三十三億円、莫大な税金を使う以上、その理念というものをやはりまず示すべきではないんですか、このことを申し上げ、この政策を決定し、国会の審議に、俎上にのせるに当たっての審議経過を私たちは求めましたが、残念ながら、政務三役で決めました、中教審にも報告をしました、こういう答弁だったんですね。
改めて、小川先生と三輪先生にお伺いします。
我が国の教育システムのあり方、また、高校教育にこれほどの国費を投入する上において必要な理想というもの、このことについての見解をお述べいただきたいと思います。
○小川参考人
極めて重要な問題指摘ですし、非常に難しい課題かと思います。ただ、今まで、日本の教育、いわゆる学校制度の議論を見てみますと、高等学校段階の教育の内実を規定していく作業というのはこれまで非常におくれてきたことは事実かと思います。
つまり、小学校、中学校の義務教育というのは、義務教育を終えた段階で社会に出ても自立して社会参加ができる、そういう基礎的な能力を身につけさせるというのがやはり義務教育でありましたし、また大学は、そういう高度な研究や高度の職業人養成というふうな目的でありました。 その義務教育と高等教育の間にあって、高等学校というのはなかなか明確にならないまま、大学受験の競争等々もありまして、結局、大学準備教育ということで片づけられてきた面があったのではないかと思います。
今回、先ほども御指摘ありましたように、これまでも高等学校については公費は当然支出されてきていたわけですけれども、今度は、明らかに保護者への、授業料負担という目に見える具体的な形で四千億近いお金を投資する以上、それによって実質的に義務教育に近づいた高等学校の教育の中身を、義務教育としての高等学校の教育内容は何かということはやはりきちっと定義しながら、高等学校教育の改革ということは進めていくべきだと思います。
基本は、先ほど言いましたように、義務教育というのは、義務教育を終えた段階で社会に出て自立し社会参加していく、そうした基本的な能力や資質を身につけるということがやはり義務教育の最も基本的な押さえかと思います。 そういう点では、今の高等学校が、高等学校を終えて自立して社会参加できる、そうしたさまざまな能力、資質をしっかり身につけているかどうかということについては、やはり甚だ問題もあるのかなと。
そういう点では、卒業時点での学力のきちっとしたチェックとか、または、例えば、少なくとも、大学に進学しないで高校を出て就職する、社会に出る方も五〇%近くいるわけですから、これまで高等学校の普通高校では余り重視されてこなかった職業的な教育をきちっと身につけさせて、高等学校の終了段階で、そうした職業的な能力、知見も、基本的なところでしっかり押さえた上で高等学校を終えるとか、そういう教育内容の見直しにも連なるような議論をこれからしていく必要があるのではないかというふうに考えます。
○三輪参考人
教育制度上における高校の位置づけをどう考えるかという御質問だったかと思いますが、先ほども紹介しましたように、戦後初期、既に、中学校と高校を接続して、一貫した中等教育体系として構想されておりました。 これは、アメリカの教育使節団報告書のサジェスチョンというよりは、それを受け入れるための日本側の委員会が既に、資料にございますように、そうした制度を立ち上げていたわけでございますね。青年期というのは、第二の誕生と言われるように、本当に人生で一番難しい時期です。 そういう時期に、十五の春を泣かせて、また、せっかくの学習集団、これもばらばらにしてやり直しということでは、そういう大事な青年期の形成を制度が損なってしまう、そういう問題がございます。
ですから、それは戦後初期からの課題でありましたが、今回、このように教育費が、授業料が無償化されるということをきっかけにして、そうした不連続の部分、なおかつ、このままでは中学と高校との間は断絶しております、そういう制度の有機的なつながり、これをしっかりすることが課題ではないかというふうに思います。
それから、普通教育の年限は寿命とともに伸びております。 人生五十年の時期と人生八十年の時期とでは、その基礎的な土台づくりというのが全く違うわけですね。 今や人生八十年という時代にあって、その基礎をしっかりと培う、そういう意味では、この高校教育の改革というのはとても大きなテーマだというように思います。
そして、四千億くらいの費用を投入することで果たして効果はどうかという御質問が最初にあったかと思いますが、やはり、公立高校であれば年間十二万円、これが負担から解放されるということは、それはさまざまな学習費に充てることができます。 本を買ったり、旅行に行ったり、いろいろ調べたり、そういうことはすぐ学力形成に直結するという効果が期待できますね。 家庭によってはいろいろな使い方があるにしても、基本的には、そういう形のゆとりが家庭に出てくるということではないかと思います。
それから、規範意識のことの御質問がありましたが、やはり社会全体で包んで青年を育てるということは、それだけ社会に対する自覚も連帯意識も深まって、そういう部分についても大変効果的ではないか、こんなふうに思います。
○馳委員
では最後に、相川参考人と川崎参考人にお伺いして終わりたいと思いますが、私は、法案をよく読んでみて、ちょっと不公平だなと思っているところがあって、それをあえて二点、見解をお伺いします。まず、相川さんにお伺いしますが、実は、公立は無償なんですよ。私学の場合には、申請をし、認定をし、そのときに署名が必要なんですね。 そして、低所得の方については、所得証明書を持っていって確認をするわけですね。 事務的な手続は雲泥の差であります。
特に、児童養護施設に通っている、住んでいる子供たちがこういう手続を私学においてさせられる、しなければならないということの負担というものも考慮し、私学の場合には、在籍証明があればそれでいいんじゃないのかな、法案にも罰則規定等があって、不正に手続しちゃいかぬよということになっているんだから、それで十分なんじゃないかなと。 公立と私立での負担の重さということについて、私は心配しております。 このことについての見解を相川参考人にお伺いしたい。
もう一つは、大所高所からという意味で川崎参考人にお伺いしたいのは、実は、御存じのように、子ども手当は、定住外国人の子供、それも本国に残してきたお子さんにも支払われ、その手続については市町村が確認するというふうに今言われております。 ところが、この法案では第四条において、日本国内に住所を有する者という限定がされていて、これは明確に教育基本法第四条に違反していると私は思っています。 在外日本人のいわゆる対象となる子供には支払われないんですよ。 私は、これは不公平ではないかなと。
この二つの不公平感を私は感じておりますが、相川参考人と川崎参考人から、こういう論点についての見解をお伺いし、私の質問を終わりたいと思います。
○相川参考人
お答えします。
ただいま養護施設の子供たちのことで御質問をいただき、むしろ私の方で大変ありがたいと思っております。養護施設の子供たちは、十八歳まで施設で生活をすることが可能でございます。 そして、その子供たちも高校へ進学をするということが、一般の高校進学率が九八%になっているのに対して、養護施設の子供たちの進学率というのはまだそこまで達しておりません。 その中で、私たちも、十五歳の子供たちを社会に出すということは非常に懸念されることがたくさんありますので、公立高校、私立高校への進学ということを推しております。
そして、今、事務的ないろいろな経費、証明等のものに関しましては、やはり子供個々が、一人一人がその証明をするということではなくて、私たちの養護施設自体が一つの家庭としての機能をしておりますので、そこでは事務担当職員がすべての手続をしております。 それは、公立高校の場合はそういう手続が必要でなくて、私立高校の場合は事務職員としても手続の時間を要するわけですけれども、そういう形で、私どもの方の子供たちは、多分全国の養護施設の子供たちは、すべてが公立高校ではなくて、私立高校に通っている子供さんもいると思いますので、そこはそこで、子供たちにかかわっている職員が対応しているという形だと思っております。
○川崎参考人
お答えいたします。私学と公立学校で、手続の煩雑といいますか、手続が違うということでございますが、我々教育に携わる者としては、手続が簡略であることにこしたことはないわけですけれども、そこは政策当事者の制度設計上の問題だろうと思います。
それから、外国の人であってもという言葉でございますけれども、国家論、国民論は別として、同じ学校で学ぶ者が外国人だというゆえんをもって不徴収にならないというのはどんなものか。教育論として見たときには、それは整合性をとられた方がいいだろうというふうに考えます。
○馳委員
私が指摘したのは、この法案は、海外にいる日本人はもらえないんですよ。子ども手当は、定住外国人の、自分が本国に残した子供の分まで出るんですよ。これはやはり整合性が政府としてないんじゃないんですかね、こういう御指摘なんですね。
○川崎参考人
私も同様に考えます。
○馳委員
ありがとうございました。
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