衆議院 法務委員会 関連委員会 会議録
法務委員会青少年問題に関する特別委員会連合審査会

第177回国会 第1号 

平成23年4月20日(水曜日)

---------------------------------------------------------------

 【馳浩 質疑部分 抜粋

○高木委員長

 これで柴山昌彦さんの質疑は終了いたします。
 次に、馳浩さん。

 

○馳委員

 自由民主党の馳浩です。
 きのうの法務委員会で積み残した質問がございますので、そちらの方から入りたいと思います。
 親責任規定の言わんとするところは、親権は、親の権利というより親としての責任がその本質であり、その責任を遂行するのに必要な限りで親権の権利性が認められるという考え方であります。
 その意味では、改正案はいまだに「権利を有し、義務を負う。」となっており、残念でありますが、親権の法的性質、概念について、今回の改正案で変化はあるのでしょうか。

 

○江田国務大臣

 児童虐待防止法の四条六項は、「親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するもの」と規定をしておりまして、委員おっしゃるとおり、児童虐待防止法という見方からすると、子供の利益のために親権を行使する義務を親が負っているんだということが当然言えるかと思います。
 一方、しかし、権利の面もまた民法八百二十条で、親権は権利であると同時に義務であるという形で規定をしておりまして、親権というものが権利と義務と両側面を持っているんだということは、今回の民法等の改正によって、その前後で変わるわけではないと思います。
 ただ、今回の改正の中に、特に子の利益ということを強調しておりますので、言ってみれば、子の利益のために行う、そういう意味で義務でもあり同時に権利でもあるという変化はあるかなと思っております。

 

○馳委員

 前回の児童虐待防止法の改正において、親責任という規定、これを議論し改正案に載せたという当事者として、立法趣旨としては、民法の親権概念の変更を意図していたという、そういう議論の経過もあり、そういうつもりでもあったんですね、立法者の皆さんの意向として。 大臣、何か所感があればどうぞ。

 

○江田国務大臣

 所感と言われてもちょっと困るんですが、先ほども御質疑の中でございますが、明治時代の判例で、子供の大変な体罰ですね、その事例が大審院によって、それでもいいのだと言われたのか、これはいけないんだと言われたのか、私はちょっと見ていないのでわからないのですが、そのような時代の親の子供に対する立場と今とは大きくやはり変わっているだろうと思います。 親は子供を自由にしていいんだというのは、もう今はそんなことを言ってはいけないので。

 やはり私ども、子供というのは社会の宝であり未来の夢ですから、これをみんなではぐくみ育てる、子供がすくすくと育つ、その育ちをしっかり支援をしていく。 親も、もちろん子供を育てていくというのは親の個人的な営みですが、同時に、社会の期待を背負って親が子供を育てていく、そういう時代になっているので、やはり私は、親権というものは子供の利益のために行使をする、そういう、権利だ義務だということでいうならば、やはり義務の側面は非常に今強くなってきていると、私たち皆、認識をしなければいけないと思っております。

 

○馳委員

 権利と義務という関係ばかりではなく、親としての責任がありますよね。 その責任を果たしていないときに、やはり、社会的に罰を受けますよ、果たすべきことは果たさなければいけないですよという合意があって初めての民法のあり方ではないかな、こういうふうに私は思っております。
 そこで、子の利益の観点を明確にすることによって、現実にどのような効果が期待されるんでしょうか。

 

○江田国務大臣

 これは、法律がそういうことを明確に記述することによって、もちろん国民の中にそれを周知し、さらに国民によって支持されるということでなければなりませんが、子の利益のために親権を行使するんだということが社会一般に行き渡り、支持されることによって、一人一人の親の自覚も深まりますし、また、周囲の子育て中の親に対する目もそういう目で見るようになっていって、社会全体の子育てに資するものだと思います。
 とりわけ、現下の児童虐待の大変な状況に対して一石を投ずる、児童虐待をみんなでなくしていく、そういう一助になっていくものと期待をしております。

 

○馳委員

 私自身は、子育てはまず第一義的に親の責任ですよ、親として果たすべき責任を果たしましょう、そして同時に、社会全体で子育てに、子の利益を考えた対応をしていきましょうと。 私は、その方向性が今回明確に民法改正によって示された、そういう筋合いのものだなというふうに思っております。
 そこで、懲戒権について次に伺いたいと思います。
 民法八百二十二条の懲戒権を削除するか否かが論点になっておりましたが、結局は、条文に文言修正を加えて残しました。 その立法趣旨は何ですか。

 

○江田国務大臣

 これは、先ほども柴山委員の御質問がございましたが、懲戒という言葉を削除をする、そういう考え方も私は十分あると思っております。 懲戒という言葉が持つ意味合いというのはやはりちょっと誤解を生みやすいので、しつけというような、そういう提案も先ほどございました。
 しかし、今回は、児童虐待防止という観点から民法改正に取り組もうとしたわけで、この懲戒という言葉を口実にして児童虐待をする場合がある。 しかし一方で、懲戒という言葉をなくすると、今度はしつけもできないんじゃないかと誤解をされるようなこともあるいは出てくるかもしれない。 その誤解があるよというおそれが、社会一般にそういうおそれがあるというように思われるとするならば、やはり私たちは、そこは、懲戒という言葉をあえてこの際取り除くというところまでは踏み込めない。
 そんなことから、懲戒という言葉は残す、しかしこれは、監護、教育、あるいはしつけ、そういうことと同趣旨の言葉であって、そのことをより明確にするために、あくまで子の利益のために行うことですよ、こういうことを書き加えて明確にしたということでございます。

 

○馳委員

 現行法では、「必要な範囲内で自らその子を懲戒し、」とありまして、この「自ら」という文言を削除しておりますが、なぜですか。

 

○江田国務大臣

 現行法の懲戒の方法は二つありまして、一つはみずから懲戒をする場合、もう一つは懲戒場に入れる場合、二つ法律上は書いてあります。
 しかし、お恥ずかしい話ですが、これはもうあくまで法律上書いてあるだけでありまして、現在、私どもは懲戒場というものを用意しておりません。 そこで、懲戒場という規定を取り除くのはもう当たり前の話でありまして、これを取り除いて、そうすると、懲戒場に入れるんじゃなくて「自ら」の部分だけが残るんですが、「自ら」の部分だけ残るのに、それはみずからやるに決まっているわけですから、「自ら」という言葉も要らない、論理的にはそういうことになったわけで、それほど何か深い哲学的な意味があるわけではありません。

 

○馳委員

 民法の勉強ということでお聞きしますが、懲戒場というのはいつごろまであって、そこでは一体何が行われていたんですか。 もしかしたら、私みたいな怖い刑務官みたいなのがいて、懲戒官か、腕立て伏せさせたりしていたんじゃないんですか。
 これはあくまでも、だって、法律で今回取り除いたんですよね。 でも、現状ないと大臣もおっしゃいました。 これは本当に私も勉強の意味で、本当に懲戒場があったのか、どんなことをしていたのか、その効果があったのか、ちょっとお聞きしたいと思ってお聞きします。

 

○江田国務大臣

 私は民法を勉強したのは昭和30年代の半ばから終わりごろですが、その当時には、私もこの文言を見て、えっ、懲戒場なんてあるのかと思いました。 思ったのも当然で、当時はもうありませんでした。 戦後すぐに懲戒場というのはなくなったと聞いております。
 その昔あった懲戒場がどういうものであったかというのは、ごめんなさい、ちょっとそこまで勉強しておりません。

 

○馳委員

 私が言わんとするところは、後生大事に何十年もこの懲戒場という文言、規定が残っておった、そして、きのうも申し上げましたが、親権の一時停止について、我々議員立法を担当していた者はもう十年近くずっと言い続けてきて、それに抵抗していたのが法務省なんですよ。 現行法でも十分できますからと何百回私は聞いたかわかりません。 何でですかね。
 私は、そこの鈍感さなのか、わきのかたさなのか、腰の重さなのかわかりませんが、これはやはり法務省の体質ですかね。 大臣、どう思われますか。

 

○江田国務大臣

 鈍感さ、わきのかたさ、腰の重さ、いろいろ言われます。 いずれも当たっているのかなとも思ったりいたしますが、民法の中にはほかにもいろいろな規定がありまして、我妻栄先生の教科書には、この条文は無視するしかないなんという解説もあったりするんですね。 何しろ明治の時代にできた民法ですから。 もっとも、親族、相続は違いますけれども。 ですから、そういう古いところが確かにいっぱいございます。

 ただ、これは民事の基本法ですから、余り変えるわけにもいかない、法的安定性も考えればというのでずっと残ってきておるんですが、現在、債権法の関係については、これも議論はいろいろあるところですが、法制審議会で審議をしている最中で、鈍感と言われましても、法務省も、やはりこれだけ時代が変わってくると、いかに基本法といえども、このままずっと墨守するわけにはいかないと思っているところでございます。

 

○馳委員

 今回の改正案には載ってきませんでしたが、私自身は、というよりも国会の中にも、共同親権あるいは共同監護権について議論をし、現実、海外にもこういう規定がございますから、我が国も規定として明示していかなければいけないという議論があります。 これについては私、また後ほど追及してまいりますけれども、そういう意味では、やはり法務省としてのアンテナもさらに働かせていただきたいということを申し上げて、次の質問に移ります。
 法務省民事局参事官室が平成22年8月に出している補足説明資料34ページには、仮に懲戒権の規定を削除したとしても、子に対する必要なしつけは民法第八百二十条の監護教育権に基づいて行うことができると解されると記してあります。
 そこで、まず、児童虐待防止法第十四条にも出てまいりますしつけと、民法における懲戒の概念的区別はどうなっているのかをお伺いしたいと思います。 さらに、国連児童権利委員会から指摘されている体罰との区別はどうなのか。いかがでしょうか。

 

○江田国務大臣

 御指摘のとおり、児童虐待防止法の十四条は、児童のしつけという言葉を使っておる。 児童虐待防止法の制定により児童虐待の定義が明確化されたことに伴い、親権の行使に際して、児童虐待に当たることのないように適切に行使をしなきゃいけないということなので、しつけは虐待をもちろん含まない、虐待はしつけじゃないということははっきりしています。
 同時に、民法の親権の行使の監護、教育についても懲戒についても、これは当然、児童虐待はいけないわけでありまして、懲戒の名のもとに虐待を行うことが許されるわけはないので、そう考えますと、しつけというのと監護、教育というのと懲戒というのと、まあ同じような意味内容だというように私は理解をしたいと思っておりまして、これらすべてが子の利益のために行われなきゃならぬということでございます。

 さて、ところで、国連の児童の権利委員会が、体罰ということについて我が国に対しても一定のメッセージを発しておりますが、今申し上げたように、虐待は断じて許されないわけでありまして、国連の児童の権利委員会の指摘をする体罰というのも、全体としては子の利益のために行うしつけとかあるいは懲戒とかというものを指して言っていることではなかろうと思っておりまして、児童の権利委員会のメッセージは重く受けとめますが、現在のところ、児童の権利委員会のメッセージは、我が国では少なくとも法制度においては守られているものと思っております。

 

○馳委員

 私見ではありますが、民法八百二十条の解釈からしつけが生まれるとの考えは捨てるべきだと思います。 なぜなら、今回の改正案で、懲戒とは民法八百二十条の範囲内での懲戒だと明記したからでありまして、八百二十条の範囲内の懲戒こそしつけと同義と考えるべきだと思いますが、それでよろしいですね。

 

○江田国務大臣

 特に意見を異にするものではありません。

 

○馳委員

 さて、懲戒権の削除も含めた見直しは先送りされましたが、私は、しつけと同義となる懲戒権規定は残しつつ、必要な範囲を逸脱した懲戒が許されないという旨を明記する方がよいと考えますが、いかがですか。

 

○江田国務大臣

 そういう考えもあり得ると思います。 ただ、そう書いてみても、一体どこが限界なのかというのはなかなかわからないので。
 先ほども申しましたが、親と子の関係というのは、それぞれが親子の関係でございまして、そのどれがよくてどれがいけないのかというのは、なかなか言いにくいところがあるんですね。 子のしつけというのもそういうことであって、しつけのためにちょっとぱちんとやるのがいいんだという親もいる。 そういうことを受け入れる子もいる。 そのことを私たちは否定することはできない。 しかし、いやいや、あくまで有形力の行使はいけないんだ、それが子供の心に傷をつけるんだ、それがまた次の連鎖になっていくんだ、そういう親もいる。 その中ですくすくと育っていく子供もいる。 それを私たちは、いや、それはしつけがなっていないと言うわけにもいかない。
 いろいろなことがございまして、それぞれの親子関係にゆだねるべきことであって、そこに何かの文言を加えてみても、その本質というのは変わらないんだと思っております。

 

○馳委員

 必要な範囲を逸脱した懲戒は許されない。 もう一回言いますよ。 必要な範囲を逸脱した懲戒は許されないという指摘に対して、大臣は、それはそのとおりだがというふうに最初に申し上げられましたので、その大臣答弁で私は十分であります。

 次の質問に移ります。
 今回の法改正で、施設入所等の措置がとられている場合において、施設長等の意向が常に優先し、親権者の意向が反映されないことになりますが、これでは親権者が施設入所等の措置に同意しなくなるおそれがあると思いますが、いかがですか。

 

○石井政府参考人

 お答え申し上げます。
 今回の法改正では、施設入所等の措置がとられている子供について、施設長等が子供の監護等に関しその福祉のために必要な措置をとることを親権者等は不当に妨げてはならない旨の規定を新たに設けることとしております。
 この規定は、あくまで親権者等による不当な主張を排除するために設けるものでありまして、施設入所等の措置がとられている場合において、正当な親権者の意向を無視するものではございません。 そして、施設長の意向が常に親権者の意向に優先することになることを意味するものでもないわけでございます。 したがいまして、今後とも、施設入所中における親権者への情報提供や意向聴取を適切に行うなど、親権者の意向にも配慮した対応を行っていくことになるものであります。

 もとより、施設には、虐待を受けた児童のみならず、さまざまな事由で施設に引き取られている、親御さんの病気だとかそういう事由で引き取られているお子さんもおられるわけでございまして、さまざまな事情がありまして、一概に親権者が言うことがすべておかしいという前提に立てるものでもないと思っております。
 ただ、御指摘のとおり、この規定が存在することによって、親権者の同意が得られず、迅速な子供の保護ができなくなるといったことにならないように、施設入所等の措置をとるに当たりましては、都道府県等においてこの規定の趣旨を親権者などによく説明をいたしまして、施設入所の措置についてきちっとした理解をいただくように、都道府県等にはしっかり周知をしてまいりたいと思っております。

 

○馳委員

 親権者の親権に優先して児童の監護、教育及び懲戒に関して必要な措置をとることができる場合についての具体的な判断基準、ガイドラインを示す必要があると思います。 不当な主張とは何ぞや、これはガイドラインをもってして提示をされないと、現場の方は困ると思うんですね。 いかがですか。

 

○石井政府参考人

 御指摘のとおり、全くおっしゃるとおりでございまして、児童の監護、教育、懲戒に関して、親権者の親権に優先してとることができる必要な措置かどうか、一義的に施設長等が判断しますが、その辺がはっきりしませんとトラブルのもとになるというのも、そのとおりかと思っております。
 このため、施設等において児童の処遇や親権者との調整が円滑に行われるよう、厚生労働省としては、児童福祉や法律等の専門家や、そして現場の御意見も聞きながら、具体的な事案を取り上げまして、どのような主張が不当と考えられ、優先してとることができる必要な措置と考えるか、それを示すガイドラインを作成して、周知を図ってまいりたいと考えております。

 

○馳委員

 関連して、本改正案においても、最終的に施設長がとる措置が優先することになるとしても、緊急事態は別として、手続的に、親権者への説明、説得、そして納得を得ることという、丁寧に手続を行うということが大事だと思いますが、それでいいですね。

 

○石井政府参考人

 そのとおりでございます。
 長く答弁いたしますと御迷惑かと思いますので、短く答えます。
 いずれにしましても、最終的には親子再統合まで至りたいというのが私どもの考えでございますので、やはり丁寧に説明をしていくということが肝要かと思っております。

 

○馳委員

 問題は、親権者に対する適正手続が不十分だった場合、訴訟等が提起されて、結果として施設長等の措置が違法となる場合も法的にはあり得るのかどうかという問題ですが、いかがですか。

 

○石井政府参考人

 施設長等が児童の福祉のためにとる監護等の措置について親権者が不当に妨げてはならないとするこの規定の趣旨は、子の利益と関係のない主張をすることや、あるいは実力行使に出ることの手段を用いるといったような、親権者の不当な行為が許されないことを明確にするものでございます。
 したがいまして、この規定につきましては、施設の側に義務づけたものではございませんで、親権者に説明する手続に不備があった場合でありましても、そのことが直ちに違法になるものではないというふうに考えております。
 ただし、おっしゃいましたように、施設の入所の際にはやはり親権者にきちっとした説明を行う、そこは大切でありますので、確実に行われるように徹底を図ってまいりたいと思っております。

 

○馳委員

 施設長等と親権者で児童の処遇について意見が対立した場合に、都道府県児童福祉審議会など第三者が意見を調整する仕組みを設けるべきとの意見もありますが、いかがですか。

 

○石井政府参考人

 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、児童の処遇をめぐりまして施設長等と親権者で意見が対立した場合に、この両者の意見を調整する場として児童福祉審議会などの第三者機関が必要であるということは、社会保障審議会の議論の中でも指摘をされているところでございます。
 児童の処遇につきましては、施設長等と親権者の意見が対立する場合には、まず、施設の現場が抱え込むことのないよう、児童相談所に相談していただくことが大切だと思っております。 さらに、難しい問題につきましては、児童相談所長を通じて都道府県児童福祉審議会の意見を聞くなどによって調整を図ることが望ましいと考えております。
 こういった運用につきましても、児童相談所やあるいは施設の関係者とも相談しながら、しっかりと検討した上で、ガイドラインの中でこれを反映していきたいというふうに考えております。

 

○馳委員

 具体的な事例として、軽度の知的障害を持つ入所中の被虐待児童の就学先として、親は障害を認めたくなくて普通学級を希望し、施設長が特別支援学級を支持している場合などは、判断が難しくなります。 こういう場合、どういうふうな対処方針をとるつもりですか。

 

○石井政府参考人

 私ども、いろいろなケースを想定しまして、いろいろ中では検討してまいったわけでございますが、今お尋ねの件につきまして、児童の就学先として、児童を通常の学級に在籍させるか、あるいは特別支援学級に在籍させるかにつきましては、これは校長の判断によるものと承知をいたしております。 御指摘のような、児童の就学先において親と施設長の意見が対立しているケースにおきましても、これはさまざまな事情を勘案した上で、最終的には校長が適切に判断をされるものと考えております。
 具体的には、児童の障害の状態とか、あるいは現実に養育をしている施設、児童相談所、そして親御さんの御意見も踏まえた上で適切に判断いただけるものと考えておりまして、こうした取り扱いにつきまして、文部科学省とも相談しながら適切に対応してまいりたいと思っております。

 

○馳委員

 今申し上げた事例は、インクルージョン教育の問題であったり、そろそろ出てくるでしょう障害者対策基本法の問題とも密接に絡んでまいりますので、ここはやはり丁寧に対応をいただきたいと思います。
 施設長等の監護方針と児童の意見が合わなかった場合に、児童が第三者に相談できるようにして、その第三者が相談を踏まえて子供の意見を表明できるようにしたらよいのではという意見もありますが、いかがですか。

 

○石井政府参考人

 施設長等が行う監護の措置が子供の意向と合わない場合につきまして、施設では、児童福祉施設最低基準にも定められておりますが、苦情受付担当者やあるいは第三者委員の設置等の必要な措置というのがあるわけでございます。 児童は、これらの相談先や、あるいは児童相談所、都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会などに相談できることとなっております。 また、相談を受けた先も、受けっ放しではいけませんで、第三者委員やあるいは運営適正化委員会等は、施設等に必要な申し入れを行うことも可能となっております。
 さらに、子供がこれらの相談先に相談しやすくする、これが大変重要でございまして、相談先の電話番号を記載しました子どもの権利ノート、こういったものを活用する等の取り組みも進めているところでございます。

 

○馳委員

 今回の改正で権限強化された施設長等による監護が適切に行われるように、資質向上を図るための研修等の実施、あるいはサポート体制の強化が必要だと思いますが、いかがですか。

 

○石井政府参考人

 お答え申し上げます。
 本当に、法律が仮にできたとしましても、その運用がしっかり成らなきゃ意味がないというのはおっしゃるとおりでございまして、施設長等の権限と親権との関係の明確化を図る今回の改正法につきましてもそうしたことをやっていかなきゃいけない。 まずは施設長等に制度の理解を深めていただいて、その上で、資質向上も図るために、全国の施設長の研究協議会での研修などを行うことといたしております。
 また、施設長等が行う監護の措置については、先ほど申し上げましたが、ガイドラインを作成する、そして、ガイドラインの中で示したいと思いますが、施設長等が判断に迷う場合には、児童相談所に相談しなさいとか、あるいは、さらなる調整に当たるものとしまして児童福祉審議会の意見を聞くとか、そういったような一連の流れにつきましても十分周知を図って、施設長等において新制度が適切に活用できるように支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 

○馳委員

 それでは、続いて、子供の連れ去り問題について入りたいと思います。
 きょう、私がグラフを一つ資料としてお示しをしました。 これは、スタート地点が1965年、一番右端の方が2009年ですね。 法務委員会で、これは先週でしたね、江田大臣に、国際結婚、国際離婚について、最近では一般的になってきていますよねというふうにおっしゃっていただいて、では現実どうなっているんでしょうかねとお聞きしたら、それで出てきた資料が、グラフとして、これなんですよ。 一目瞭然なんですね。

 その上で、大臣にまず最初に所感としてお聞きしたいんですけれども、ハーグ条約に関する問題は国内問題にも存在をする。 つまり、子供の連れ去りは、何も国際結婚そして国際離婚があって子供を連れ去ってくる、あるいは国内から海外に子供が連れ去られるという問題だけではなくて、国内においても、離婚をし、また離婚は離婚する前と後とありますが、一方的に一方の配偶者に無断で子供を連れ去ったままという事案も多く存在するということなんですね。
 この認識について、このグラフを見たり、これは国際的な問題、あるいは国内にもこういう事案があるということについて、大臣としてどういう認識を持っておられるかをまずお伺いしたいと思います。

 

○江田国務大臣

 ハーグ条約の問題というのは、国境を越えた子の移動がある場合に、移動の前と後のどちらの場所で子供の監護についての判断を裁判所で求めるのがいいか、そういう判断で、前の場所に連れて戻してそこでやりなさいということ。 ですから、そういう場面で、これは国内にはハーグ条約の問題というのはないのでありますが、しかし、合意なく勝手に子供が親の一方だけの都合で場所を移される、それによってもう片っ方は子供から引き離される、そういう事例が国内にも多々見られる、これが今なかなか厳しい状況になっているということは、私も認識をしております。

 

○馳委員

 ちなみに、私もこのグラフを見てふむふむと思いながら、スタート地点が1965年ということは、昭和40年ですね、5千件に満たない国際結婚。 そして、ちょっとふえ始めたなという真ん中から右のあたりが、これは多分、バブルのころというふうに言われると思いますね。 そして、あれ、ちょっとまた最近減ってきたなというのが、2006年、7年あたりですね。 これは、もしかしたら結婚数自体が減ってきたのかな、そういうふうな印象を持ったり、まさかこんなことにリーマン・ショックが関係しないだろうなとか、私はいろいろな社会的背景をもって国際結婚と国際離婚、この紫の部分が国際離婚ですね。

 残念ながら、この5年間、国際結婚は減っているんですが、国際離婚はやはりふえているんですね。 こういった実態というのも、この社会を取り巻くある意味では現実だというふうな認識のもとで、ハーグ条約への対応、また国内の子供の連れ去り問題について対応していっていただきたいと思って、以下、質問をつなげたいと思います。
 子供の連れ去り問題について、民法典には個別規定はなく、親権の濫用等の抽象的な規定しかありません。 また、刑法での誘拐罪や人身保護法やDV防止法では、連れ去った行為自体の法的評価が中心です。
 そこで、親子関係、特に子の最善の利益から考えて、この連れ去り問題を親子関係から広く評価する法体系が不可欠だと私は思います。 民法改正、個別法制定等の法的な手当てが必要ではないかと思いますが、大臣の見解をお伺いします。

 

○江田国務大臣

 民法第七百六十六条という規定がございまして、これは、子の監護について必要な事項を家庭裁判所が判断して定める。 その規定が基本にあって、現在では、家事審判法の九条一項乙類四号というものがございまして、そこで子の引き渡しについて審判をするということになっておりまして、理由なく一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去る、これが適切でないということは、私は言うまでもないと思いますが、基本的には夫婦間で子の監護について十分話し合いをすべきことであって、そうした話し合いなく連れ去るというときには家庭裁判所が役割を果たす。
 民法改正等、別の個別法制定等については、現在の段階ではこういう法的手当てがありますので、慎重に考えるべきものだと思いますが、委員の問題意識は貴重だと思っております。

 

○馳委員

 最後の質問にいたします。
 子供の連れ去り問題は、今回の法改正にも深くかかわってまいります。 例えば、片方の親が子供を連れ去り、その後協議離婚して、子供の監護問題で対立した場合、現在の監護状態が非常に優先されやすく、連れ去った側に監護権が結局認められやすいんです。 そして、連れ去られた側は、面会交流の約束を担保に渋々監護権を渡します。 しかし、いざ面会交流の段になると面会させない、裁判所が履行勧告しても無視し続けるパターンであります。 つまり、連れ去った者勝ちの例が実に多いという実態がございます。

 そして、この事例のやみは深くあります。 つまり、DVを主張しての連れ去りが多く、このDVが、本当に保護すべきDVなら結構です。 しかし、巷間言われる、いわゆるDV冤罪事例も多くございます。
 そこで、最高裁にお聞きしますが、今挙げた事例について、どんな調停や審判がなされているのが現状か、その傾向をお示しください。
 また、法務省は、DV冤罪についてどんな認識を持っているのか。 あわせて、DV冤罪の防止について、DV防止法上の運用、特に加害者側の言い分を聞くという適正手続は運用上もしっかりと行われているのかどうかをお伺いします。

 

○高木委員長

 最高裁判所豊澤家庭局長。申し合わせの時間が参っております。 簡潔にお願いいたします。

 

○豊澤最高裁判所長官代理者

 子の連れ去りをした者による現在の監護状況の継続という観点から、連れ去った者勝ちになっているのではないかという御指摘でございました。
 父と母のどちらを親権者に指定し、あるいは監護権者とすべきかというのは、事案に応じて、家事審判官あるいは裁判官が個別に、具体的な事情のもとで判断すべき事柄でありまして、一般的には、子の福祉の観点からさまざまな事情を考慮して、総合考慮して判断するということになります。
 その際に、子の監護状況というのが考慮要素になり得ることは当然でありますが、そこに言われる監護の状況といいますのは、現在の監護状況のみに限られているわけではありませんし、子の出生以来、現在に至るまでの中での監護状況といったものも当然考慮されるわけです。
 したがって、現在の監護状況というものは考慮要素の一つでありまして、これによって結論が必ず右に行く、左に行くというふうな、それのみで判断されるという枠組みにはなっていないというふうに理解いたしております。

 

○江田国務大臣

 簡単にということなんですが、DV冤罪がどの程度かというのは、残念ながら数字的にはわかりません。 しかし、DVも随分たくさんあるし、また冤罪もあると思います。
 その手続保障ですが、接近禁止命令とか、あるいは住居からの退去命令、これはかなり強力で、刑罰もございますが、家庭裁判所で、発令に当たっては、口頭弁論あるいは相手方が立ち会う審尋、この期日を経なければいけないとか、あるいは、相手方の主張内容も確認した上で、証拠資料に基づき保護命令を発することになっているとか、書面の写しの交付であるとか、そして即時抗告ということもございまして、手続的にはそういうものがちゃんと用意をされております。

 

○馳委員

 終わります。 どうもありがとうございました。

 

○高木委員長

 馳浩さんの質疑は終了いたしました。

  ※詳しくは衆議院 会議録議事情報 会議の一覧 をご覧ください。
(常任委員会 → 法務委員会 → 関連委員会 → 法務委員会青少年問題に関する特別委員会連合審査会 )

 



メールをどうぞ


ホームページへ