衆議院 法務委員会 会議録

第176回国会 第3号 

平成22年10月29日(金曜日)

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 【馳浩 質疑部分 抜粋

○奥田委員長

 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。 馳浩君。

 

○馳委員

 自由民主党の馳浩です。

 私と奥田委員長は同じ選挙区で、ライバルでありまして、いつも、まあ、今のところ四回戦って二勝二敗ということでありますので。 きょうのところは委員長には質問できませんが、どうぞお手やわらかによろしくお願いいたします。 

 最初に、外務副大臣にお伺いいたしますが、ハーグ条約の問題です。 

 報道もよくされておりまして、関係者も心配しております。 早く批准をし、国内法を整備すべきではないかというのが私の考えです。 今、外務省としてどういう判断、行動をされているか、まずお伺いいたします。

 

○伴野副大臣

 馳委員にお答えさせていただきたいと思います。 

 ハーグ条約初め外交案件にも御関心をお持ちいただきまして、本当にありがとうございます。 

 今御指摘いただきましたハーグ条約は、改めて申し上げるまでもなく、一方の親がもう一方の親の親権を侵害する形で国境を越えて子を移動させた場合に、子を移動前の居住国に戻すための国際協力の仕組みについて定めるものと承知しております。 

 この条約につきまして検討すべき論点、多数あるわけでございますが、現在、締結の可能性を真剣に検討しておりまして、この作業に積極的に取り組んでいるという状況でございます。

 

○馳委員

 関係者から要請もいただいて、勉強会を開いておりまして、今から試案をちょっと申し上げます。 これは私の案じゃなくて試みの案ということでお聞きいただきたいと思います。 法律の仮の名前、親子の交流断絶の防止に関する法律ということで、資料をお配りいただいておりますので、それを見ながら聞いてください。 

 目的は、夫婦の関係と親子の関係は別であり、婚姻中かどうかに関係なく、子供が両親から愛情と養育を受け続けること等が子供の健全な発達にとって好ましいことから、親子の関係が断絶することがないよう、親子の交流継続を確保するための手続等を定める。 

 項目は三つございます。
 一つ、子供の連れ去りの禁止。

 両親の一方が、もう一方の親の同意なく、子供を連れ去ることを禁止する。 同意なく子供を連れ去った場合には、まずは子供をもとの住居に戻し、その上で、早急に両親の間で子供の養育をどうすべきか話し合うこととする。 

 一つ、親子の引き離しの禁止。 

 親と子供の引き離しを禁止する。 これは無断でというふうに修飾語を入れた方がいいかもしれないですね。 児童虐待防止の観点からも、両親の一方が子供と離れている場合、必ずその親と子供が二週間に一度は、ここはあるいは定期的に、泊まりがけで会えることとする。 

 一つ、子供の養育に関する取り決め、養育計画の作成義務化。 

 両親が別居または離婚する場合には、子供の養育方法、子供をどちらの親が主として養育するか、養育親でない親と子供がどの程度の頻度で会うか、養育親でない親が子供の養育費をどの程度支払うか、こういうことの養育方法についての取り決めをする。 どちらの親が養育すべきかを決定する際には、友好的な親、これはもう一方の親により多くの頻度で子供に会わせることを約束する親のことですが、に子供を養育させることとする。 

 こういうふうな項目というのを国内法としても整備しておいたらいかがか。 ハーグ条約を批准するに当たっての必要最大の条件というわけではありませんが、せめてこの程度の国内法の整備があった方がよいのではないかという、立法を検討すべき段階ではないか。

 もちろん、外務省と法務省が連携をいただいて、法務省の方でお進めいただければなおよい。 けれども、我々も立法府に置く人間として、非常に多くの方の要請をいただいている立場として、僕はこの勉強会というのを本当に超党派の皆さん方に呼びかけて機運を盛り上げていきたいな、こういうふうに考えていて、きょうお示しをいたしました。 

 できれば、法務省と外務省と両方からコメントをいただきたいと思います。

 

○黒岩大臣政務官

 馳議員の今の試案について、私どもの所感を申し上げたいと思います。 

 子供の連れ去り等の禁止については、実際に法律に明記するかどうかは別にして、理由なく一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去ることは適切ではないと認識をしております。 このような場合は、やはり夫婦間で子について話し合いがなされるべきと考えております。 

 また、離婚後の親子の面会交流の確保については、離婚後の親子の面会交流は当然子供にとっても重要なものであると認識しております。 面会交流の適切な実現のために、面会交流の意義について理解を深めてもらうことが重要であるとも認識をしております。

 そして、離婚後の子供の共同養育計画の義務づけでございますけれども、離婚の際に面会交流や養育費について適切に取り決められることが望ましいものと認識しております。 もっとも、これを義務化するかについては、取り決めに時間を要する場合もあることから、取り決めができないままの状態で事実上の離婚状態となるような夫婦がふえる可能性なども思慮されることから、若干慎重な検討が必要かと思っております。

 ただ、いずれにせよ、ハーグ条約の重要性については当然法務省としても認識しております。 条約の締結については外務省が判断することになると思いますけれども、関係省庁も含め、法務省として、今後も国内法整備等については検討を進めていきたいと考えておりますので、御理解いただきますようお願いいたします。

 

○伴野副大臣

 馳委員にお答えさせていただきたいと思います。 試案までお示しいただきまして、本当にありがとうございます。

 さまざまな論点があると承知しておりますけれども、外務省といたしましては、できる限り早く結論が出せるように、法務省初め関係省庁とともに協力して検討を進めていきたいと思っております。 どうぞよろしくお願いいたします。

 

○馳委員

 きょう、私は試案を示させていただいてよかったなというふうに思います。 ただ、法務省が最終的に法律を整備して出しましょうということを待っている状況ではないということは御理解ください。 

 昭和四十年代で、親が離婚をしてしまったお子さんというのは大体八万人ぐらいなんですね。 今現在の最新の数字では二十四万人を超えています。 そうすると、やはりこういう社会状況、私、たまたま児童虐待のことを申し上げましたが、一方の親と会えない、会わせてもらえない、あるいは、自分の養育親の方から一方の親に対して一方的に悪口を言われたりするということは、子供の心理状態にとってやはりよくないですね。

 ただし、これはDVの問題もはらんでいるんですよ。 だから法務省は慎重にというふうに考えておられるんだと私は思います。 であるならば、DVの問題はDVの問題としてやりながらも、やはりハーグ条約を批准するに当たっての国内法整備については、作業をより前に進める必要があるというのが私の判断なんですね。

 だから、きょうおいでの、超党派、すべての国会議員の皆さんにこの問題を理解いただくためにも、まずはコアに勉強会を開いた上で認識を持っていただいて、議員立法として提出をし、法務省のしりをたたくと言うと失礼ですが、そういうふうな運動を進めていきたいと思っているんです。

 昭和四十年代で八万人、今現在は二十四万人。 社会的な背景もあるでしょうが、まさしく家族のあり方が問われている問題とともに、両親が離婚をするということがあったとしても、子供に罪はない。 その子供の生育に、養育に大変大きな悪影響を与えてしまう現状が放置されたままはやはりよくないな、こういう観点で私は今申し上げております。

 この説明を聞いておられる柳田大臣と、また伴野副大臣のコメントをいただいて、その後、伴野副大臣にはお帰りいただいて結構です。

 

○柳田国務大臣

 ハーグ条約につきまして、つい先日、ルース大使を初め十二カ国、法務省の大臣室にいらっしゃいまして、ハーグ条約の必要性をいろいろと説明を受けました。 それに対して、いろいろと御意見を述べたわけではなくて、日本の状況というのも御理解をしていただければと申し上げましたらば、日本の状況はよく知っているというお話もいただきました。

 ただ、馳委員もおっしゃったように、DVとか、生活費がないとかといって帰ってくる人が実は多いですね。 ある国によっては、例えば奥さんと子供がその国に行った途端に奥さんが逮捕されてしまうとか、子供と引き離されてしまうとかいう国もあったりして、いろいろ問題もあるなというふうな認識をいたしております。

 ただ、いろいろと海外からの要望も強いわけでありますので、いろいろ検討はさせてもらっておりますので、いろいろと意見交換をこれからもさせてもらえれば、そういうふうには思っております。

 

○伴野副大臣

 馳委員にお答えさせていただきたいと思います。

 馳委員はこの関係でもよく御案内かと思いますが、改めて申し上げるまでもなく、男親の立場、女親の立場、また、どことどこの国の国際結婚ということにおいても、本当にケース・バイ・ケースではないかと思われます。

 そういった中でも、論点が幾つかある中で検討を進めさせていただいて、実は昨日も、私どもの前原大臣とクリントン国務長官がこの件におきましてもお話をさせていただいて、いずれにしましても、前原大臣といたしましては、政府・与党一丸となってこの作業を進めていきたい、その旨答えております。 どうぞよろしくお願いいたします。

 

○馳委員

 伴野副大臣、お帰りいただいて結構ですので。 ありがとうございました。

 これは国際結婚だけの問題じゃないということは御理解いただいていると思います。 と同時に、これは、私は法律の専門家ではないので僣越ではありますが、家裁における離婚の調停が長引く要件というのは、多分子供が絡んだ問題が一番多いと思うんですよ。 小川さんもうなずきながら聞いておられますが。

 したがって、一定のルールを設ける、そして第三者、まさしく家裁あるいは調停するような機関、こういったものが入らないといつまででも解決していけない、その間にも子供はやはり成長する、このことを看過していてはいけない。 だからこそ、我々はやはり国会議員として、議員立法というふうな形で、こういうのはいかがでしょうか、こういう論点はいかがでしょうかといったことをまさしく提示し続けていきたいと思いますし、最終的に皆さんの御意見がまとまれば、議員立法として委員長提案で提出できればベストだとも思っているんです。

 法務省は、多分、私どもの方に要請をいただく団体は、いわゆる共同親権を旗に掲げている方々も多くおられます。 まさしく民法改正にかかわります。 民法改正というと、私は十年間児童虐待の問題に取り組んでまいりましたから、親権の制限について、一時・一部制限の問題についてようやく動き始めて、来年にも方針が示されることになっているということも存じております。 それほど、五年、十年かかる問題だということをわかっているがゆえに、我々が議員立法として、まさしく国民生活にかかわる大きな問題になっているということの認識を、まず政務三役の皆さんには御理解をいただきたいということです。

 この問題については、ここでひとまずおいておいて。

 それから、柳田大臣、拉致担当大臣も兼ねておられるということで、答弁できるかどうかは、判断はあなたにお任せしますが、実は私は、けさ十時から十一時まで文部科学委員会で高木文部科学大臣に質問をしておりました。

 高校無償化法に基づいての朝鮮高校に対する支援金を拠出するかどうかという最後の詰めの議論をしてまいりましたときに、高木大臣、あなたは柳田拉致担当大臣とこの問題について話し合いましたか、柳田さんは反対の意向を示しておられますよ、九月二十二日の拉致被害者家族会との意見交換会でも、私の主張をはっきり申し上げますと言っておられます、それについて意見交換されましたかと聞いたら、しましたとちゃんとはっきりおっしゃいました。 柳田さんの意見も踏まえて、最終的に教育的な課題として私は判断する、こういうことでありました。同時に、最終的には、菅総理がやはり最終的な判断を下すことも当然でありますね。

 その上で、もし、今あなたの立場で、教科書の記述の問題、拉致問題を抱えておって、経済制裁について日本はちょっと緩めてきたんじゃないかという間違ったメッセージを北朝鮮本国に送りかねない、やはりこういうふうな懸念がされていて、民主党における部門会議においても留意事項がつけられているんですね、やはり教育内容については慎重にしなければいけないと。

 先ほど、高木大臣は改善を促すということをはっきりとおっしゃいました。 こういう現状を踏まえて、大臣として今後どのようにこの問題に対応されますか。 また、高木大臣の判断に最終的には従いますか。 所見をお聞かせいただきたいと思います。

 

○奥田委員長

 拉致問題特別委員会が設置されておりますけれども、こちらは大臣の方の御意思があれば、どちらの大臣としての答弁になるかもありますけれども、御答弁いただければと思います。

 

○柳田国務大臣

 馳委員の思いはしっかりと受けとめました。

 

○馳委員

 特に、私はなぜあなたではなくて高木大臣に厳しく言ったかというと、我が国で初めて文部科学省が朝鮮学校に対して管理監督の権限を持つんですよ、この法案に基づいて。 ここが重大な問題で、そして、今現在も各種学校として都道府県から大体九億円ぐらい出ているというのはそれは皆さんわかっているとおりですが、国費がダイレクトに投入をされる。 したがって、教育の外形的な基準というものではなくて、教育イコール内容ではないかと。 その内容について、柳田さんもおっしゃったように、看過できない内容があるんです。

 改めて言いますけれども、ほかの外国人学校はもう支援金は出ているんですよ。 なぜかというと、みんな外交関係があるからですよ。 本国においてその外国人学校がどういう教育機関として位置づけられているかということがもうわかっているんです。 朝鮮学校だけがまさしくそれができないし、今まで文部科学省も権限がなかったんですね。 そのことを踏まえての、まさしく政府一体としての最終的な判断をしていただきたいというのが私の要望ですので。 大臣の厳粛な表情から私は大臣の決意を受け取りましたので、よろしくお願いします。

 続いて、足立区の新しい条例とオウム真理教対策の問題についてお伺いをいたします。

 十月二十二日に成立をいたしました足立区反社会的団体の規制に関する条例について、この条例の規制対象はどんな団体ですか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 まず冒頭に、公安調査庁といたしましては、地方公共団体が制定されました条例の解釈を必要とする御質問についてはお答えできる立場にないということを申し上げて、御理解をお願いいたしたい、このように申し上げておきたいと思います。

 それで、今お尋ねの点でございますけれども、配付されております足立区反社会的団体の規制に関する条例、これの第三条を見てみますと、規制対象は「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第五条第一項に規定する観察処分を受けた団体をいう。」このように規定されているところと承知いたしております。

 

○馳委員

 つまり、オウム真理教の後継団体であるアレフとひかりの輪ですか、この二団体であるということが限定されているということです、現状では。

 では、次の質問をいたしますが、この足立区の条例の目的は何ですか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきましては、配付いただいております条例の第一条に規定されているところと承知いたしております。

 若干長くなりますが、その該当部分、第一条でありますけれども、引用させていただきますと、「この条例は、反社会的団体の足立区の区域内における活動及び反社会的団体の構成員の区への転入等により、区民の安全及び周辺住民の日常生活の平穏に対する脅威及び不安を除去するため、当該団体に対する調査、命令等、区が講ずべき措置を定めるとともに、当該脅威等を除去するために行う周辺住民の自主的な活動を支援し、もって区民の安全及び地域の平穏の確保を図ることを目的とする。」このように規定されているところと承知いたしております。

 

○馳委員

 とすると、団体規制法の目的と、この足立区の新しい条例の目的の違いというのは何でしょうか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 まず、団体規制法の目的でございますけれども、これは法律の第一条に規定されているところでございます。 団体規制法、これは、簡単に引用させていただきますと、無差別大量殺人行為を行った団体の活動状況を明らかにし、当該行為の再発を防止するために必要な措置を定め、もって国民の生活の平穏を含む公共の安全確保に寄与するもの、このように規定しているところでございます。

 他方、条例につきましては、先ほど引用させていただいた内容ということでございます。

 

○馳委員

 ここで私ちょっと解説すれば、団体規制法の方は、まさしく再発防止のために、まずは観察処分を行い、観察処分によって明らかにこの団体というのは、再発防止のために、解散も含めるんでしょうか、処分が必要なときにはそのレベルを上げて行政権を行使するということであって、足立区の条例の目的というのは、住民の平穏、生活の平和、安全を守るということが目的になっているんですね。 この理解でよろしいですね。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 条例の目的及び団体規制法の目的、これにつきましては先ほど引用させていただいたとおり、このように理解いたしております。

 

○馳委員

 条例の五条では、オウム真理教に対して報告義務を定めております。 同条第二項で「当該団体の活動に関する事項のうち規則で定めるもの」と定めておりますが、ここでの規則とは具体的に何が報告対象となっておりますか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 先生お尋ねの規則につきましては、まだ公布されていないようでございまして、私ども、いまだ把握しておらないところでございます。

 

○馳委員

 公安調査庁としては、できるだけ速やかにこの規則といったものについて情報を入手することをお勧めいたします。

 次の質問をいたしますが、団体規制法と比べて、この報告義務という部分の条文について、どこがどう違うんでしょうか。

 

○北田政府参考人

 報告義務についてのお尋ねでございますので、法律とそれから条例の規定についてお答え申し上げたい、このように思います。

 団体規制法におきましては、報告義務の内容に関しまして、団体の役職員及び構成員の氏名、住所、団体の活動の用に供されている土地それから建物の所在及び用途、団体の資産及び負債、こういったものを報告の対象といたしております。

 それから、条例の方の報告義務の対象、これはお配りいただいておりますところの五条第二項に規定されているようでございまして、団体の役職員、構成員の氏名、住所、団体の活動に関する事項のうち規則で定めるもの、こういったものを報告義務の対象と。 したがいまして、規則を見てみないと、その詳細、つまびらかにならない点があるということでございます。

 

○馳委員

 では、私がわかりやすく違いを言いますよ。 報告義務違反があるかないかなんですよ。 これが一番大きいところなんですね。 公安調査庁、多分おわかりだと思います。 団体規制法には報告義務違反がないんですね。

 この条例でこういうふうになっているんですよ。 第十条なんですが、「次の各号のいずれかに該当する場合において、反社会的団体及びその行為をした構成員は、五万円以下の過料に処する。」 「正当な理由なく第五条第二項の報告を拒み、又は虚偽の報告をしたとき。」 「正当な理由なく、第八条第一項及び第二項の調査に協力せず、同条第三項の規定による質問に対し、回答をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は文書の提示を拒み、妨げ、忌避し、若しくは虚偽の文書を提示したとき。」 「第七条第二項、前条第二項及び第三項に基づく命令に従わないとき。」というふうになっておりまして、罰金まで科しているんですね。

 ちなみに、団体規制法で罰金まで科している報告義務違反というのはありますか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 団体規制法によります報告義務、これに違反した場合に罰則を設けている規定はございません。

 

○馳委員

 おかしいと思いませんか。 団体規制法になくて条例にあるんですよ。 この現状をどう思いますかということを私は実は質問したいんですね。 おかしいと思いませんか。 また、報告義務違反、あった方がいいな、今私の指摘を受けてそう心が動きませんでしたか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 先生御指摘の条例におきましては、報告義務違反に対しまして罰金ではなく過料が科されている。 これは規定を読みますと明らかな点だと思います。

 公安調査庁といたしましては、条例にそういう規定が設けられたところでございますけれども、今後のその条例の運用の状況、それからそれに対しましてのオウム真理教の反応といいますか動向あるいは活動状況、こういったものを注視して適時適切に対処してまいりたい、このように考えております。

 

○馳委員

 私があなたに指摘しているのはこういうことなんですね。 条例には過料があるんですね。 罰金を私は訂正します。 過料があるんです。 私は公安調査庁の応援団のつもりで今質問しているんですよ。 あなたたちも、観察処分になっているこの団体に対してこういうツールを持って、住民の求めにこたえるような活動ができるようになった方がいいんじゃないんですか、そのための法改正も視野に入れた方がいいんじゃないんですかということを私は指摘しているんです。

 次の質問に移ります。

 ことしの五月、足立区の土地建物の購入に当たってオウムは報告を怠り、報告義務違反を起こしましたが、その詳しい内容はいかがでしたか。

 

○北田政府参考人

 お答え申し上げます。

 オウム真理教は、東京都足立区入谷所在の土地建物、これは教団出家信徒が代表社員を務める合同会社宝樹社の名義で購入しまして、ことしの三月二十九日に同社名義への所有権移転登記を完了いたしている、これは承知しているところでございます。

 他方、教団は、団体規制法に基づく公安調査庁長官あてのことし五月十五日付の報告におきまして、今申し上げました土地建物、これを団体の資産としては報告しなかったということでございます。

 

○馳委員

 あなたにそういう報告をこの場でさせるというのは公安調査庁の恥をさらすようなもので、私も申しわけないなと思うんですが、法の限界があるから結局こうなっているんですよ。 その穴埋めのために、足立区の住民の皆さん方、そして足立区区長、議会、皆さんの心配のもとにこの条例が十月二十二日に制定をされたんですよ。

 昨年の団体規制法見直しのときに、私は、住民団体の皆さんと一緒に、法務省また公安調査庁の皆さんに対して、団体規制法の見直し、法改正を強く強く要請をしましたが、そういう状況ではないということで、一応更新だけを認める判断をされました。 そういう状況の中で、今回、足立区の不動産購入に対しての報告義務違反があって、それを黙って指をくわえて見ていたのが公安調査庁ですよ。

 そして、今回の足立区の条例を見て、全国の三十のオウム真理教後継団体のある施設、三十あるんですよ、その自治体の皆さん方は、うちもやろうかな、やるべきだと。 とんでもないことだ、公安調査庁が動いてくれない、団体規制法の見直しについて法務省も腰が重い、また、そういう立法事実もないと言っている、けれども、実際こういうことが起きているじゃないかと。 こういうことの中から、団体規制法を見直す機運というものがむしろ高まっているんじゃないのかなというふうに私は言わざるを得ないんです。

 先ほど平沢先輩にお伺いしましたら、この足立区の施設というのは、麻原彰晃、教祖ですね、収監されている東京拘置所のすぐそばだというじゃないですか。 そうなんですよ。 まさしくここが今全国の拠点になろうとしているということは、私が言うまでもなく、公安調査庁はわかり切っている話ですよ。

 この指摘を踏まえて、私は、これは公安調査庁にお伺いするよりも、法務省として、まずこの現状をどういうふうに認識をしておられるかということを小川副大臣にお伺いしたいと思います。

 

○小川副大臣

 確かに、オウム真理教の松本智津夫、今受刑者ですか、グループが起こした大変凶暴きわまりない事件が、社会を本当に恐怖に陥れたということは深く感じております。

 そうしたことから、なおその団体が同じような犯罪を決して起こさせてはならないということで、しっかり観察するということでこの団体規制法ができたわけでございます。 しかし、刑事事件を起こした者は今処罰されているわけでございますが、刑事事件を起こしていない者が集まって宗教活動を行うということは、これは憲法で定めた信教の自由というものがございまして、これを合理的な理由がないまま制限するというのが、またこれは大変困難な状況がございます。

 しかし一方で、オウム真理教がまさに社会に恐怖感を植えつけたといいますか、こうした重大な事件を起こしたということを踏まえて、何もないままでいいのかということの社会的な要請もありましたわけでこの団体規制法になったわけでございますが、団体規制法の趣旨は、やはり、信教の自由という憲法で保障されているもの、これ自体を制限する、禁止するというものではなくて、その宗教活動、宗教団体が、過去行ったような刑事事件とか、そうした犯罪行為や反社会的行為をまた繰り返さない、繰り返させないための規制法でございます。

 そうした中で、やはり宗教活動そのものを全部禁止する、あるいはそれに準ずるような行為をするということは、憲法上の信教の自由というものに対する制約があるということの苦しさを、委員のお気持ちはわかるんですが、法治国家としての苦しさもあるということをぜひ御理解いただければと思っております。

 

○馳委員

 最後に。 私の気持ちじゃないんです、住民団体が、自分たちの生活の平穏を守りたい、脅威を除去したいということから今回の条例に至っている。 また、今後この条例は全国の自治体で議論をされることに恐らくなると思います。 そうすると、団体規制法見直しの立法事実というものが高まってくる、こういう環境にあるということをお伝えし、私は、また折に触れて、時間をいただきながら、この問題を追及します。 

 なぜか。 私だってこんな質問を国会で余りしたくないんですよ、家族がいますから。 物すごくやはり私は恐怖と闘っているんですよ。 オウム真理教の団体が、この問題が明るみになったときに、放送局に対して、あるいは自治体等の関係者等に対して、弁護士に対して何をしたかということを考えると、私だって怖いですよ。 でも、同じような恐怖感を住民団体の皆さんが皆さん持っておられるし、それを守るのは、やはり公安調査庁、警察の皆さん、国家の役割ではないですか。 このことを申し上げて、また時間をいただいてこの問題について質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。


  ※詳しくは衆議院 会議録議事情報 会議の一覧 をご覧ください。
(常任委員会 → 法務委員会 →10月29日 第3号 )

 



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