馳浩の永田町日記 <第4回>




「禁足」ってナニ?

 国会内で活動していると、一般社会とはなじみのない出来事や言葉に出くわす。

 「禁足(きんそく)」という言葉と、その意味についても、よくよく聞けば「ナルホド」と納得せざるを得ないものの、一歩距離を置いて考えてみると、けっこう妙な風習である。

 11月6日の月曜日、午前11時にわれわれ新人議員の〃ガイダンス授業〃である国会対策委員会が招集された。
 本会議の運営を担当する「議院運営委員会」の山崎正昭理事(福井県選出)から、苦渋の報告があった。
「野党である平成会(衆議院では新進党だが、参議院では平成会と名乗っている)との日程調整がつかない。引き続き協議に入りますが、本日は禁足を議員のみなさまにお願いします」

 ン? キンソク?
 一同けげんな表情。禁足って、ナニ?

 こういう新しい言葉に出くわした時や、会議の運営が硬直している時にわかりやすく解説をして下さるのは、上杉光弘国対副委員長(宮崎県選出)の役割だ。

 「禁足とは、つまり、外出禁止です。与党と野党で対決法案がある時は、本会議の日程調整がなかなかつかず、議運(議院運営委員会のこと)の理事懇(理事懇談会=各党の理事が出席する代表者会議のこと)が話し合いの場になります。どんなに表向き与野党が大ゲンカをしていても、この理事懇だけは全会派がそろって本会議の日程を協議することになっているのですが、今回ばかりは異常な事態になっています。といいますのも、平成会の理事が、この大切な理事懇に出席せず、ボイコット作戦に出ているのです。与党側は粘り強く相手方と交渉を続け、同じテーブルにつけるように引き続き連絡をとっております。本日は、いつになるかわかりませんが、何とかして本会議開会を目指します。みなさんは、5分以内に本会議場に入ることのできる場所に て待機していただきます。これを禁足をかける、と言います」

 というわけで、禁足がかかると、与野党の議員全員が、院内かあるいは議員会館の自室に閉じこめの刑になってしまうということ。

午後11時まで幽閉の刑

 今国会の対決法案は「宗教法人法の一部改正案」。
 世論を強力なパックに、今期末までに改正案を成立させてしまいたい与党と、「信教の自由」を盾に、改正案反対の立場にある野党が真っ向から対立し、両者の関係がこじれ、全ての審議の入り口である議運の理事懇が機能しないという非常事態になっているわけだ。

 素人議員の私は思う。
 「賛成か反対か、はっきりと国民注視の中で論戦したらええやないか。国民に対して説得力のある方が案を通すんやから。与党は数を頼みにと最初から押し通しているのではなくて、理事懇で国会の日程調整しようとしてるんやから、野党は同じテーブルにつけばええやん」

 しかし、ま、欠席するのも国対政治の戦術であるとしたなら、しかたないのかなぁ。
 理事懇で調整しようとしてなかなかできないでいた問題とは、「宗教法人に関する特別委員会」を設置するか、否か。

 改正案の中身をはじめ、優遇税制についてや宗教と政治の関わり方についてまで議論を深め、しかもテレビ中継の入る特別委を設置しようと主張するのが与党三党と共産党。

 法律の改正案なのだから、文教委員会での審議だけで十分。特別委なんて必要ない、と主張するのが野党平成会。

 ハタから見たら「何や、たったそれだけのこと」と思われるのではないか?

 結局、世論の強力なバックアップと設置理由の説得力がモノを言い、特別委設置は禁足がかかった4日後の11月10日の本会議で採決されて決定したのだが。(野党の抵抗はダダッ子にすぎなかった)

 さて、禁足のかかっていた11月6日、私たちは何をしていたか。
 議員それぞれが当日の私的・公的スケジュールをすべてキャンセルし、幽閉の身に。
 午前11時にかかった禁足は、午後11時まで解けなかった。しかも結局、本会議は開かれず、骨折り損のくたぴれもうけ。

 午前11時から午後11時までの12時間、参議院の機能はマヒしてストップしたままなわけだから、なんたる時間とお金と才能のロス。私は、いつ始まるかも分からない本会議に備えて、改正案についての想定問答集を読んだりしていたが、ものの3時間で飽きてしまい、後は同僚の議員さんの部屋をたずねて世間話に時間をつぷす。

 愛知県の鈴木政二議員は、
「国会ってずいぷん無駄が多いんだなぁー馳くん。でも、こういう国対政治も政治の一部分には違いないのだから、受け入れざるを得ないんだよね」 と、県会議員出身らしく感想を述べたりしながらも、国会の特異性についてはいささか辟易(へきえき)したご様子。

悪いことしてないのに・・・・

 いったい、禁足令のメリットってあるのだろうか。
 どう考えたってデメリットの方しか思い浮かばない。

 国会とは、国民に選ばれた議員による論戦の場ではなかったのか?

 賛成・反対の質疑をくり返し、最終的にまとめられた主張が法案として成立するのであろう。
 とすれば、審議の入り口で欠席してしまう戦術は、いかなる理由があろうとも議会制民主主義に逆行する手法ではないか。
 ましてや、禁足という形で有能な国会議員を院内に幽閉してしまうことになったのだから、「政治とは何ぞや!」と国民から怒りの声をいただいても反論はできまい。

 禁足とは本来、「罰として外出や旅行を禁止する」の意味だ。
 罰が下ったわけでもないのに禁足がかかってしまう国会議員。
 こんなことを繰り返していると、きっとそのうち有権者の側から天罰を下されるに違いない、と考えてしまう私は素人だろうか。

 野党のみなさま。大いに論戦で闘おうではありませんか。


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