「日本税政連」 平成12年4月1日掲載
議員メール 税理士業界へのメッセージ

法律の「ワンストップ・サービス」を目指す
出廷陳述権創設を


 「税理士よ、法律家たれ」。これが国民が望む税理士の理想像です。しかし、税務訴訟において、税理士の活用があまりにもなされていません。まず、税理士はあらゆる訴訟において弁護士のように訴訟代理人にはなれません。一方、弁理士は特許訴訟等に限定してですが、訴訟代理人になれます。次に、裁判所の許可がなくても、当事者や訴訟代理人(弁護士)と一緒に出廷して陳述する出廷陳述権もありません。一方、弁理士にはあります。さらに、裁判所の許可を得て、当事者や訴訟代理人の補佐をする補佐人にすら、なかなか許可がおりず、なれません(6割不許可のアンケート調査あり)。

 問題は、この現実をどう評価するかです。税理士と弁理士の専門性の比較をする気は毛頭ありません。むしろ国民の側からみて、納得のいく司法サービスが受けられているのか、国民の争訟解決を十分支援しているのか、この観点からの評価が重要と考えます。

 思うに、国民に最も身近で紛争も多い税務訴訟の専門性への配慮が欠けている、と考えます。貸借対照表・損益計算書等の理解の難しさ、会計上の処理と税務上の処理が異なったり、その専門性は誰もが認めるところです。また、いわゆるリーガルマインドで税法の解釈はできません。それほど税法の解釈は特殊なのです。にもかかわらず、弁護士・裁判官はその専門家ではありません。一方、訴訟の相手側の国はその道のスペシャリストばかりであり、国家の威信をかけて訴訟に臨んできます。例えば、税務行政官が国の訴訟代理人となるのです。これで公平な訴訟が担保されるのか、国民の「裁判を受ける権利」が十分保障されていると言えるのか、はなはだ疑問であります。

 そこで税理士法を改正して、税務訴訟について弁理士なみに税理士が訴訟代理人となれるようすべきです。ただし、行政事件訴訟法・民事訴訟法の研修修了を条件とすべきでしょう。あとは、訴訟代理人に弁護士を選ぶか税理士を選ぶかは国民の選択にゆだねればよいと思うのです。また、少なくとも裁判所の許可を得ずして当事者又は訴訟代理人(弁護士)とともに出廷して陳述できるよう法改正(出廷陳述権の創設)をすべきと考えます。さらに、裁判の運用を改善して、補佐人の許可件数の増加も図るべきでしょう。そうしてこそ、現代の国民のニーズに応えた法律サービスができると思うのです。

 関連して、弁護士・弁理士・司法書士・税理士等のいわゆる隣接業種との合同又は総合法律事務所の創設(法人化)が何よりも求められています。例えば、遺産相続の問題で相談に訪れたとき、遺産分割等の問題は弁護士、登記は司法書士、相続税は税理士と一度にその事務所だけで問題解決できますから、これこそ国民が求めるワンストップ・サービスと言えます。

 加えて、法律のワンストップ・サービスの確立を目指す上でも、弁理士・司法書士・税理士等を広義の法曹として位置づける発想が必要と痛感しています。その上で、法曹育成・法学教育の見直しの観点から浮上しているロースクール構想に、広義の法曹教育を組み込んで、広義の法曹資格を有する学際的・オールマイティー的な人材を育てるべきではないでしょうか。これこそ、国民のニーズに応えた究極の法律家だと考えます。

 最後に、このような貴重な機会を与えて下さいました日本税政連に感謝するとともに、皆様の変わらぬご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。謙虚に勉強していく所存です。


馳浩 in Mediaメニューへ戻る



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