新しい歴史教科書をつくる会 第255号 平成21年 6月12日(金)  掲載
『新編 新しい歴史教科書』は教基法改正を踏まえた唯一の教科書

塩谷文科大臣「採択に値する教科書」と答弁

馳浩議員(自民)が国会質問

 

  6月10日に開かれた衆議院文部科学委員会で、自民党の馳浩議員が教科書問題について質問をしました。馳議員は、自由社の『新編 新しい歴史教科書』に対する評価、採択制度の問題点、近隣諸国条項や河野官房長官談話の問題点等に関して塩谷立文部科学大臣及び文科省、外務省の各担当部局の責任者(政府委員)の見解を質しました。

 この質疑の中で塩谷大臣は「(自由社の『新編 新しい歴史教科書』は)今回の教育基本法の改正に伴う教育の目的とか方針に基づいて、今回の教科書が作成されたと思っている。教科書検定審議会の審査を経て実施されたものであり教科書として採択に値するものだと思っている」と注目すべき答弁を行いました。

 委員会における質問、答弁の概要は次のとおりです。

 

改正教基法を生かす教科書改定をしない教科書会社は無責任(馳議員)

 馳浩議員 改正教育基本法の第2条では知・徳・体、公共の精神、職業倫理、自然や生命や環境を大切にする、伝統と文化を尊重し、わが国と郷土を愛するなど教育目標が明記された。この目標に従って、教育の内容も教科書の内容も大きく変わるべき必要があると思うが、文部科学省としては、改善すべき最大のポイントは何だと考えているか。

 文科省 ご指摘の改正教育基本法第2条では、第1条の教育の目的を実現するために、教育の目標として重要と考えられる事柄が規定されている。この教育の目標については、初等中等教育のみならず、高等教育など学校教育、あるいは社会教育、家庭教育等あらゆる教育活動を通じて実現すべきだと解されている。とりわけ、小中高等学校については改正によって明確になった教育の理念を踏まえ学習指導要領が改正され、本年度から小学校で一部先行実施されている。 

 馳議員 文部科学省は平成20年度に中学校の教科書の検定を受け付けた。教科書会社各社は改正された教育基本法を生かした教科書を検定に提出したか。

 文科省 平成20年度は、現行の学習指導要領の下で、平成22年度から使用される中学校の教科書の検定を受け付けたが、改正教育基本法を踏まえた新しい学習指導要領に基づく教科書検定が中学校では平成22年度に行われる予定であることから、多くの教科書出版社は、この新しい学習指導要領に基づく教科書の作成に力を注いでいたと思われ、実際平成20年度に申請があったのは、社会・歴史的分野についての一社のみであった。

 馳議員 せっかく教育の根本理念を指し示す法律が変わったのに、教科書会社が教科書を作り直すことに慎重であることは社会的な責任を負っている教科書会社として無責任であると思う。文部科学省は、教科書会社に新たなる教育基本法に基づいた教科書を検定に提出するようにと指導しなかったのか

 文科省 平成20年度の教科書検定は、平成10年に告示をされた現行の学習指導要領に基づく教科書の検定で、それに対して、新たな教科書を作成して検定に申請するかどうかは、発行社の判断によるところである。

 馳議員 理屈は分るが、私が主張しているところは、平成18年に教育基本法が全面改正され、それに従って教育振興の基本計画が作られ、学習指導要領の見直しに入っていったこの流れを、文部科学省も教科書会社にも協力を求めながら取組むべき姿勢が必要ではないかという指摘だ。

 

自由社は改正教基法に基づいて作成(文科大臣)

 馳議員 唯一、検定に申請した自由社の『新編 新しい歴史教科書』については、改正教育基本法の理念が反映されていると考えているか。塩谷大臣には、先週、市販されているこの教科書をお渡ししてある。

 塩谷立文科大臣 馳委員から自由社の教科書をいただき、目を通させていただいた。いずれにしても、20年度の検定、この1社ということで、それなりに教育基本法の改正を踏まえて取り組んでいただいたと思っている。いずれにしても、採択に向けて、また各教育委員会の調査等あるので、個別の教科書に対するコメントは差し控えたいと思うが、今回の教育基本法の改正に伴って、教育の目的とか方針に基づいて、今回の教科書が作成されたと思っている。教科書検定審議会の審査をへて実施されたものであり、教科書としては、採択に値するものだと思っている。また市販本は、特別寄稿の寛仁親王の文章とか他の色々な方々の文章があって、興味深く読ませていただいた。

 馳議員 ちなみに、まだお読みでない委員の方もいらっしゃるのでひと言付け加えると、冒頭に「天皇と日本」という寛仁親王の特別寄稿が載っている。皇族の方としては極めて異例な寄稿文だと思う。公的な場なのでそれ以上の言及はさけたいと思うが、読み物として是非ご一読いただきたいと申し上げる。

 

韓国政府声明は内政干渉(馳議員)

 馳議員 さて今年4月9日に自由社の教科書が検定に合格した際に韓国政府が抗議声明を発表した、と日本国内で報道されている。文部科学省の検定合格発表は4月9日であり、その内容を韓国政府が、どのようにして知ったのかは不思議な話である。日本政府が事前に伝え、お伺いをたてたのか。

 外務省 委員のご指摘の通り、韓国政府は4月9日に外交通商部のスポークスマンの声明を発表している。日本と韓国は緊密な関係なので、色々な連携をしている。逐一についてはここでは差し控えるが、事実関係で申し上げると、文部科学省が検定合格発表をしたのが9日の午前中で、韓国のスポークスマン声明は同日の午後となっている。

 馳議員 報道によると、韓国の外交通商部は、「日本の青年が捻じ曲げられた一部の歴史教科書を通じ、誤った歴史観をもつ可能性を深く憂慮する」とし、「『新しい歴史教科書をつくる会』が主導した自由社の中学歴史教科書が検定に合格したことに強く抗議し、検定の抜本的な修正を求める報道官声明を発表した」とのことである。この報道が事実とすれば、明らかな内政干渉だと思う。韓国政府から、わが国の外務省または文部科学省に対して、その後、具体的にどのような働きかけがあったのか。

 外務省 4月9日、ご指摘のスポークスマンの声明が発表され、議員紹介のような内容のことが記述をされていた。それと同様に同じ日に、外交ルートを通じて、同じような内容の申し入れが韓国政府からあったという事実関係だ。

 文科省 ご指摘の韓国政府の声明について私どもは外務省を通じて承知したところだ。文科省に対して直接的な働きかけはなかった。

 馳議員 このような働きかけに対して、外務省あるいは文科省はどのような対応をしたのか。

 外務省 先ほどお答えしたように外交ルートを通じてそのような申し入れがあった。その際の日本側からの応答ぶりをご紹介する。「わが国の教科書検定は文部科学省によって、民間が著作・編集した図書について、学習指導要領や検定基準に基づき教科書検定審議会の学術的・専門的な審議を経て厳正に実施されるものであり、平成20年度の検定においても慎重な審査が行われたと承知している」こういう受け答えを主にしている。いずれにしてもいろいろな形で外交ルートを含め、こういう申し入れがあるが、今申し上げたような立場を随時にわたり、韓国側に返答している。

 文科省 ご指摘の件については、文科省へ直接働きかけがないので、特段の対応はしていない。

 

「近隣諸国条項」の見直しを(馳議員)

 馳議員 韓国外交通商部からこのような声明が出される背景には、宮澤官房長官時代の近隣諸国条項が影響を与えていると思うが、大臣の見解を伺いたい。

 塩谷文科大臣 ご指摘の点については、わが国と近隣アジア諸国との相互理解、相互協調を進める上で、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされるということである。
 教科書検定については、この規定を含めた検定基準全体を審査の基準として、専門的学術的な審査が行われてきたということで、今回の(近隣諸国条項の)規定が韓国に影響というのは私の立場から申し上げることではない。

 馳議員 麻生内閣としては近隣諸国条項を見直すつもりはないか。

 塩谷文科大臣 学校教育においては、国を愛する心やわが国の歴史に対する理解を育てるとともに、国際理解、国際協調の精神を養うことが重要であり、例えば中学校の学習指導要領・社会科歴史的分野においてはわが国と諸外国との歴史や文化が深く関わっていることを考えさせることともに、国際協調の精神を養うこととされている。また教科書検定においても、昭和57年に近隣諸国条項ということで、教科書の記述がより適切になるように近隣諸国と国際理解の見地に配慮する旨新たな検定基準を設けているわけであり、学習指導要領や検定規準に基づいて適切に教科書検定を行っていくつもりである。

 馳議員 適切にというのは近隣諸国にとって適切なのか、わが国の国民にとって適切なのか明確ではない。もう一度答弁を。

 塩谷文科大臣 わが国の学校教育におきましても、当然国を愛す心、わが国の歴史に対する理解を育てるととともに、やはり国際理解、国際協調の精神を養うことが重要、大切だと考えており、そういう観点から適切にということである。

 

「河野談話」は継承(文科大臣)

 馳議員 もう1点、教科書の内容に関係の深いものとして、河野官房長官が出したいわゆる従軍慰安婦に関する「河野談話」がある。当時の石原官房副長官の証言、それは1997年、『文藝春秋』における櫻井よしこ氏のインタビューを引用するが、この談話は政治的な談話と指摘されている。日本政府として「河野談話」をそのままにしておくつもりか。大臣の見解を伺いたい。

 塩谷文科大臣 大臣の立場としてその問いにお答えする立場にはない。政府の基本的立場としては、平成5年のその談話を継承するものと考えている。総理も国会答弁においてそのように答弁しているので、今の段階ではそのまま継承をしていくということで理解している。

 

改正教基法を基準に教科書選定資料を作成すべし(馳議員)

 馳議員 今年は中学校の教科書の採択が行われ、各地の教育委員会が選定資料を作成している。この選定資料は教科書の評価に値し、教育委員会の採択の基礎資料となる。この選定資料の作成に当たっては4年前の資料をそのまま流用することのないようにすべきと考える。なぜならば、新しい教育基本法が制定された以上はその理念を踏まえた評価の尺度が必要であるからである。大臣の見解を伺いたい。

 塩谷文科大臣 教科書の採択については、各採択権者の判断と責任で適切に行うべきものと考える。教科書の内容については十分な調査、研究が必要であり、本年度の採択対象となるのは平成22年度使用中学校用教科書の社会は9点であり、そのうち新たな検定をしたのが先ほどの1点である。この社会については各採択権者の責任により、採択手続を簡略化することなく教科書の内容について調査研究を行うよう指導している。

 馳議員 新たに選定資料をつくる際に4年前の資料に自由社の評価を付け加えるやり方は不公平だと思わないか。

 文科省 教科書の採択に当たっては、それぞれの地域の生徒、児童にとって、最も適した教科書を採択するよう適切な選定資料を作成するなど、採択権者である教育委員会などが綿密な調査研究を行う必要があると考えている。平成22年度より使用される本年度の中学校社会・歴史的分野の教科書採択に当たっても、採択対象となる9点の教科書の内容について適切に調査研究を行う事が必要と考えている。

 馳議員 もう一度お尋ねする。改正教育基本法の教育の目標に基づき、どの教科書がふさわしいかという評価のあり方は必要だとは思わないか。

 塩谷文科大臣 教科書の改善については、昨年12月の教科書検定審議会報告において、教育基本法等で示す目標等を踏まえた教科書や、検定基準の改善など教科書改善に当たっての基本的方向性が示された。教科書採択に当たっては、このような方向性を参考にして十分な教科書研究が行われ、適切な採択が行われることが必要だと考えている。こういった観点から適切な採択が行われるよう、各委員会に対しても指導してまいりたいと考えている。

 馳議員 多くの市町村を併せた共同採択制度については、単位教育委員会の意向が無視されるという問題点がある。かといって小さな町村で単独で採択資料をつくるには限度がある。こういう点も含めて、採択制度にどういう問題点があると認識されているか。

 文科省 教科書の共同採択制度については、採択権限を有する市町村教育委員会の意向が適切に反映されにくいなどの課題が指摘されているが、一方で教科書採択について、小規模自治体では、十分な調査研究が困難であるという指摘もある。文科省としては、これまでも各都道府県教育委員会に対して、各市町村育委員会の意向を踏まえた採択地区の適正化につとめること、また、教育委員会に対する指導、助言のために都道府県教育委員会が作成する選定資料の一層の工夫、充実につとめること、各採択地区において、採択手続きを明確にしておくとともに、市町村の教育委員会間の協議が整わない場合には都道府県教育委員会が適切な指導助言を行うことなど、通知により、指導している。今後とも各採択権者の権限と責任のもと、公正かつ適切な採択がなされるよう指導していく。

                                     (議事録文責・事務局)


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