歴史教科書の不採択運動
「日教組の自制必要」文科省局長
検定済みの中学歴史・公民教科書をめぐり日教組の機関紙が特定教科書の不採択運動を促すような記述をしているとの指摘が23日の衆院文部科学委員会であり、文部科学省の矢野重典初等中等教育局長は
「適正な採択に影響を与えないよう、慎重な対応をされることが望ましい」と述べ、日教組の自制が必要との見解を示した。馳浩氏(自民)の質問に答えた。
馳氏は日教組の機関紙について
「(特定教科書の不採択に向けて)圧力をかけるかのような記述。日教組の教員が調査員や選定委員として教科書採択にかかわるのは適切ではない」と指摘した。これに対し矢野局長は
「教科書採択は教育委員会の判断と責任の下に行われる」との原則を示した上で、
「教職員団体が教育について見解を述べたりするのは基本的に自由だが、公正な採択に影響を与えないような慎重な対応が望まれる」と述べた。
日中韓で共通の歴史認識好ましい 外務省局長
外務省の槙田邦彦アジア大洋州局長は23日、「合同調査委員会などの形で日中韓3国が近現代史について基本的に同じ認識を持つことができればいいし、政府として努力するのが望ましい」と述べた。衆院文部科学委員会で答弁した。
馳浩議員(自民)が、韓国の崔相龍大使が日中韓3国による共同の教科書づくりを提案していることを指摘、「共同教科書までは難しいが、共通の歴史認識をつくるため学者による合同調査委員会を作ったらどうか」と質問したのに答えた。
外務省 研究
「外務省の公式見解ではないが」
23日の衆院文部科学委員会。歴史教科書問題への対応を問われた外務省アジア大洋州局長の槙田邦彦は、こう前置きして考えを述べた。
合同調査委員会などの形で日中韓三国が近代史について基本的に同じ意識をもつことができればいいし、政府として努力するのは望ましい。
官僚が国会でこうした“個人的見解”を示すのは極めて異例だ。
歴史認識 溝深く
田中外相提案 歴史家交流
韓国外相、言及せず
田中真紀子外相が26日の日韓外相会談で、日本の歴史教科書問題に関連して、歴史研究家らの相互訪問促進を提案したのは、日韓両国の歴史認識の溝を埋めたいと判断したためだ。しかし、そこには「歴史認識をひとつにすること自体が不可能」(外務省幹部)という根本的な問題が横たわっていた。韓国側は田中外相の提案には言及せず、双方の溝の深さが見せつけられた。
日本側は、韓国政府が要求した35項目にわたる中学歴史教科書の修正要求について、教科書検定制度の根幹にかかわる問題であることから「再修正は無理」との立場を崩していない。
その枠の中で、田中外相は政府の歴史認識に変更はないことや、韓国政府の修正要求を精査して誠実に対応していることを強調した。
今回の会談に先立ち、外務省の槙田邦彦アジア大洋州局長が23日の衆院文部科学委員会で、「(学者で構成する)合同調査委員会などの形で日中韓三国が近代史について基本的に同じ意識を持つことができればいい。」と発言。これが田中外相の提案の伏線になったともみられる。ただ、歴史認識に関する「合同委員会」設置については槙田氏自身も委員の人選の点で現実には困難な面があると認めていた。
そうした限界を背景に、田中外相の提案も「歴史研究家らの相互訪問、人的交流」という抽象的な内容にとどまった。