産業経済新聞 11月11日 朝刊 

衆院文教委員会 主なやりとり 


 10日開かれた衆院文教委員会で、平成14年度版中学歴史教科書をめぐり、「教科用図書検定調査審議会」の委員の野田英二郎・元駐インド大使が、特定の歴史教科書を不合格にするよう多数派工作を行っていた問題や、北海道教委が、昭和46年に道教職員組合と結んだ違法な46協定を温存し、北海道の不正常な教育問題の根源になっている点などが取り上げられた。
 馳浩議員(自民)か質問した。主なやりとりは次の通り。

 馳議員
 平成14年度版の中学校教科書検定をめぐり、教科用図書検定調査審議会の元外交官の歴史担当委員が、特定の歴史教科書を不合格にするよう多数派工作を行っていた事件について質問します。

 文部省に事実関係と元外交官の一連の行動の動機について、外務省には4点質問します。外務省の組織的関与が指摘されているが、いかがですか。中国政府が特定教科書に懸念を表明し、旧日本軍の残虐行為の記述を減らさないよう再三、外務省に要求していたのか。9月19日に、元外交官と外務省の教科書問題担当課長と後藤田正晴元宮房長官の3人が、教科書問題で協議していたと疑われているが、事実か。元外交官が、審査前の検定教科書、いわゆる白表紙本の内容を外務省に漏らしていたのではないかと疑われているが、この4点について外務省に質問したい。

 御手洗康・文部省初等中等教育局長
 元外交官の委員については、報道された内容について、文部省として調査した結果、当該委員は審議に先立って、10月上旬に教科用図書検定調査審議会の第二部会の委員計9人に、討議用資料として、自分の考えをまとめた資料を送付した。客観的に見ると、このような委員の行動は、審議に予断を与え、審議の公正さを損ないかねないという点があったと考えざるをえない。このため、文部省としては、教科書検定に対する信頼と審議の公正を確保する観点から、10月30日付で、当該委員の所属を、教科用図書検定調査分科会から教科用図書価格分科会に変更し、今後、教科書の検定の審議には、たずさわらせないこととした。

 槙田邦彦・外務省アジア局長
 外務省が組織的にこの問題に関与しているということはない。中国政府が外務省に再三要求していたという事実もないが、中国はわが国の教科書問題の報道を承知しており、それをとらえて中国のマスコミも報道し、論評を加えているということがある。中国政府の外交部(外務省)のスポークスマンも質問に答えて、中国政府としての考え方を述べており、一般的なこの問題についての関心を表明しているという事実はある。

 元外交官と外務省の課長と後藤田元官房長官の3人が、この教科書の問題について協議したことはないと承知している。白表紙本の内容を外務省に漏らしたという事実もないということである。

 馳議員
 近隣諸国条項を盾に外務省は今後も教科書検定に関与するのか。

 槙田局長
 外務省としては当然、関与するということはない。検定制度は粛々と運営されていくものと理解している。

 馳議員
 大臣の所見をうかがいたい。

 大島理森・文相
 元外交官を、価格決定の小委員会に異動させたことについての判断は、公正に客観的に議論していただくための措置。今後もそういうふうな対処を根底において、ぴしっとやってまいりたい。

 馳議員
 札幌市教育委員会は9月、来春の卒業式、入学式の国旗掲揚、国歌斉唱の指導が学習指導要領にのっとり適切に行われるよう全市立学校長に職務命令を発したが、教職員団体側は「学習指導要領には法的拘束力はなく、教育課程編成上の一資料にすぎない。教育課程の編成権は校長ではなく、全教職員にある。入学式や卒業式も教育課程の一つであり、国旗国歌が校長により強制されてはならない」と発言、これらを理由として(組合側は)札幌市の職務命令に対し、指導主事の学校訪問拒否や市教育庁舎への座り込みなどの抗議行動を行っている。

 このような教職員団体の主張について、文部省は、どのように考えているのか。札幌市教委は、教職員団体の主張や抗議行動に屈することなく、毅然(きぜん)とした態度で臨んでいると聞くが、札幌市の取り組みに対する文部大臣の見解をうかがいたい。

 大島文相
 札幌市教委が職務命令を出したことは、大変適切な措置がなされたと思っている。いままでの札幌市立小中学校の国旗掲揚、国歌斉唱の実施率は、全国的にみて最も低い水準にある。文部省では、これまでも学習指導要領にのっとった国旗・国歌の適切な取り扱いについて指導してきたが、市教委と緊密な連携を図りつつ、来春の卒業式、入学式に向けた市教委の取り組みを支援していきたい。 

 矢野重典・文部省教育助成局長
 学習指導要領は、教育課程の基準として法規としての性質を有するもので、すでに最高裁判決でも明確にされている。教育課程の編成については、学校教育法で「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」ものとされており、教育課程の編成は、当然のことながら、学校の長である校長の権限と責任にもとづいて処理されるべきもの。学習指導要領で、卒業式、入学式では、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとされており、学習指導要領の趣旨を実現するために、校長が職務命令を発した場合等には、教員はこれに従って職務を遂行する義移を負う。北海道教職員組合や礼幌市教職員組合の主張は、現行の法制に照らせば、法制的には正当な主張とはいえないと考える。

 馳議員
 北海道では国旗・国歌の問題以外にもさまざまな教育問題を抱えている。特に、北海道教職員組合が、学校の管理運営に重大な影響を与えているときく。国旗・国歌問題は、日常的に行われている学校の管理運営上の問題の単に象徴的な出来事にすぎないのであり、根本的問題を解決しなければ意味がない。
 一連の問題の背景には、北海道教育委員会が、昭和46年に北海道教組と交わした協定書、いわゆる46協定が存在し、これが学校の管理運営の妨げの原点になっていると言ってよいと思う。46協定の特に11項と12項の後段に非常に問題がある。
 学校管理規則に関して事件が起こった。11月1日付の一部新聞報道によると、北海道教育委員会は「職員会議は、校長が主宰する」と学校管理規則を改正したにもかかわらず、留意事項なる通知を出した。その内容は「校長は校務の運営上必要のあるときは、職員会議を開き、所属職員の意見を求めるなど、適正な学校の運営に努めなければならない」というもので、今回の改正の際、削除したものを、そのまま復活させ、しかも通知をしていないと文部省に虚偽の報告までしていると報道されている。46協定の問題と虚偽報告事件について、文部省にうかがいたい。

 矢野局長
 地方公務員法では、地方公共団体の事務管理、運営に関する事項は、交渉の対象にすることはできないと規定されており、学校管理規則の改正や教育課程の編成など教育委員会や校長が、その権限において責任を持って決定しなければならない事項は、教職員組合の交渉により、その判断がゆがめられることがあってはならない。これらを交渉の対象としている46協定は明らかに法令に違反する。
 北海道教育委員会は、文部省の指導を受け10月、学校管理規則を改正し、これまで必ずしも位置づけが明確でなかった職員会議の規定の見直しを図ったにもかかわらず、従来の取り扱いを維持するものととらえかねない通知を発している。このような北海道教育委員会の対応は、問題であるといわざるをえない。このため、文部省としては、道教委に、今回の改正の趣旨をより明確にするよう指導を行った。道教委は文部省の指導に従い、改正の趣旨の徹底を図るとのことで、11月1日、改めて通知を発している。

 大島文相
 46協定は明らかに法令に違反するものがある。このような違法な協定が、教育委員会と教職員組合との間で結ばれているということは、きわめて遺憾である。11月6日に北海道の教育長を呼び、指導を行った。いろいろな実態をうかがったが、それらを踏まえてさらに指導し、もし必要だと認識したならば、現地調査も視野に入れて、全力を尽くしていかなければならないと思っている。

 馳議員
 当委員会としても日本の公教育を揺るがす大問題として、調査・視察することを求めます。

教科書検定 外務省の関与はない
道教委問題 『46協定』は法令違反

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