馳浩の快刀乱筆

 乱闘かわした人事の妙 

 セクハラは与党を救う?

平成12年3月26日富山新聞掲載


 

 『いやぁ、見事な人事でしたねぇ!』

 古賀誠衆議院自民党国対委員長が部屋に入ってくるなり、片山虎之助参議院自民党国対委員長に握手を求めながらの第一声である。

 直前に、参議院の国民福祉委員会において、年金改正関連法案が、与党の賛成多数によって採決されたところだった。三つの国会をまたがっての重要法案であっただけに、衆議院側からもねぎらいに訪れたのである。

 古賀さんの言いたかった人事の妙とは、狩野安国民福祉委員長の人事である。

 この年金改正関連法案、与野党の対決法案であった。

 与党としては、公的年金制度を安定的に将来にわたって、年度内(三月中)に成立させたかった。

 野党としては、年金支給開始年齢を65歳に引き上げることや、労働者負担が増大することなどを理由として絶対廃案を主張してゆずらない、当然、審議の末に行き着く先は、与野党の激突。与党は採決を強行し、野党は物理的に(乱闘に持ち込んでも)抵抗する、という図式。

 しかし、そこで片山国対委員長は、円満に採決に持ち込む手段として、女性である狩野安さんを委員長に選任したわけである。

 つまり、採決時に乱闘になったとしても、野党議員が一切、委員長のからだに触れられないようにするため「セクハラ」手段を使ったわけである。採決の日は、わざわざ着物を着てくるようにと指示を出したほどである。

 案の定、採決時に野党議員は大挙して委員会室に押しかけて野次、怒号の中での混乱となった。しかし、野党は誰一人として狩野委員長に手出しできない。社民党の福島瑞穂議員が苦し紛れ(悔やし紛れ?)に委員長のマイクをはねとばしただけであった。国会運営も、こんな一面があるということだ。

 

野次怒号 空しくひびく 年金法
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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