馳浩の快刀乱筆

 怠慢な銀行を狙い撃ち 

 外形標準課税は英断?

平成12年2月20日富山新聞掲載


 

 石原慎太郎都知事の決断が、またまた世間を騒がせている。

 資本金5兆円以上の大手金融機関の法人事業税(地方税)に外形標準課税を導入する、との英断(?)である。2月16日にはそのための条例案を都議会に提示し、可決、成立の見通しだ。都民、銀行業界、政府ばかりでなく、国民的議論を巻き起こしている。

 地方分権が声高に叫ばれている時代に、安定的な財源が確保されるひとつの方法としてはなかなかのアイディア。だが、対象を限定し、それがまた大手金融機関であるところが論点となっている。検証してみよう。

 ます、外形標準課税の正当化される理由しは、企業の黒字、赤字にかかわらず、行政サービスの対価を企業の規模に応じて負担してもらうという考え方だ。都がその規模の基準として選んだのは『業務粗利益』。安定的な税収が期待できるからだ。この方式に対する都民の支持は意外に高い。なぜだろう?

 それは、『公的資金を導入されているにもかかわらず、明確に経営責任を取っていない』『ゼロ金利政策で優遇されている』『退職金が高い』『給料が高い』『自らの資産を処分するなどのリストラが進んでいない』という庶民の日ごろの銀行業界に対する根強い反感が石原構想を後押ししているからだ。

 これに対し、越智通雄金融再生委員長が、公的資金返済の遅れや金利引き上げへの心配を表明しても、逆に『銀行の肩を持ちすぎ』と批判されている。全国銀行協会の杉田力之会長が『課税の公平性に反する。憲法の法の下の平等にも抵触する疑義がある』と都を相手に訴訟の構えを示唆しても、知事は『やれるもんならどうぞ』と冷ややかだ。

 まさしく、力強いまでの政治のリーダーシップ。有権者ではない、つまり一票を持たない企業の、それも経営効率化に怠慢な銀行業界を狙い撃ちしたところに都民の支持がある。これを機に、全業種、全都道府県に導入できるか、だ。

 

銀行も 汗を流せと 慎太郎
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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