馳浩の快刀乱筆

 中田よ、前へ出ろ 

 ファンの情を忘れるな

平成12年1月16日富山新聞掲載


 

 イタリアサッカー界で活躍している中田英寿選手が、シーズン中にもかかわらずローマに移籍することになった。異論は多いし、本人もずいぶん迷ったようである。しかし決定した以上は新天地で活躍し、チームの優勝に貢献してもらいたい。

 改めてこの移籍話を分析して、プロとは何であるかを確認してみたい。

 まず、移籍反対の意見。シーズン中であること。サッカーはチームプレーであり、戦術や戦略のキーポイントであるポジションの中田がチームを離れると、致命的な打撃を受けてしまうから。ましてやセリエA(一部リーグ)に所属するペルージャは中田中心のチーム。フォワードとディフェンスの中間部に位置して攻守の要である彼がいなくなれば、崩壊の危機。さらにペルージャはここ2試合を0対5で大敗しており、チーム状態はどん底。二部に転落するかもしれない瀬戸際での移籍は無責任極まりない、という反対の声だ。

 そして賛成の声。ローマは現在上位におり、十分優勝をねらえる順位であること。そのチーム事情においても、ぜひ中田の実力でチームを優勝に導いてほしいという監督の要請が強いこと。ここまで認められているのだから、いかに中田の実力が本場で認められているかがわかる。

 さらに、中田の値段は今が売り時だというペルージャ側経営者の判断もある。下位に低迷して二部落ちする前に、要請を受ける形で放出した方が、相手チームから高い移籍料をふんだくれる、という計算高さ。

 プロともなると、プレーの能力によって身辺のすべてが金次第となるのであるから、まさにハイリスク・ハイリターン。今、この時期、商品価値の高いうちにもうけようという魂胆が見え隠れする。プロの世界はシビアだ。

 総合的判断の上で中田もサインをしたのだろう。ただ一つだけ苦言を呈しておきたい。応援してくれるファンの情を忘れるナ!と。

 

中田すら 右往左往の 新天地
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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