馳浩の快刀乱筆

 日本の顔 ピカチュウ 

 言葉なき現代のスター

平成11年12月19日富山新聞掲載


 

 2歳になったばかりの娘は、午後7時になると必ずテレビの前に仁王立ち。画面を指さして、「ピカチュウ、ピカチュウ!!」と叫ぶ。新米パパの私はNHKニュースで世の中の動きを把握しておきたいにもかかわらず、「ハイ!わかりました」と召使い状態。ひざの上にだっこして、2人でアニメのピカチュウにくい入るように夢中となる。

 今や、日本を代表する顔は、小渕首相でもなければサッカーの中田選手でもない。ピカチュウなのである。

 12月13日発売の米タイム誌最新号(アジア版)は、今年、世界を最もにぎわせた人物として、プエルトリコ出身の人気歌手、リッキー・マーティンと並んで日本のアニメ「ポケットモンスター」の人気キャラクター「ピカチュウ」を選んだ。選出理由は、「『ハローキティ』以来、最も愛くるしいアニメキャラクターで、世界の子供たちを笑顔いっぱいのポケモンマニアに変えた」ことだと。

 そのニュース、さもありなんと私は思った。決して残酷に走らない格闘シーン。友情と愛情に満ちあふれたストーリー。何よりも、ピカチュウは一言もことばを発しないことで、テレビを見ている私たちの想像力をたくましくしてくれる。人間関係、とかくことばでつまずきやすいもの。口は災いのもと。しかしピカチュウは、ことばを使わずに「ピカチュウ!」の一言で周囲を説得できる存在感を持つ。ことばのあふれすぎた現代人への警告であるのかもしれない。また、たくさんのモンスターとの絡みは、現実逃避の夢を見させてくれる。私も娘以上に夢中になっている。

 また、男の子でも女の子でもない、中性的なキャラクターが、安心感を与えてくれる。経済効果としても莫大(ばくだい)。日本の外貨獲得に一番貢献しているのではないだろうか? 今やアニメは自動車、家電に加えて日本が世界に誇れる一大産業。小渕首相もピカチュウ人気に学ぶ点は多いのではなかろうか?

 

ピカチュウ!と 一声叫ぶ クリスマス
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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