馳浩の快刀乱筆

 雅子さま ご懐妊の兆候 

 世紀末に明るい話題

平成11年12月12日富山新聞掲載


 

 12月10日付朝日新聞朝刊一面を見てびっくりした。「雅子さまご懐妊の兆候」との大見出し。他の全国紙、スポーツ紙のどこにもこのニュースがない。ということは朝日新聞の世紀の大スクープ!? 紙面の組み方が不自然であるのと、宮内庁のコメントもないことを考えると、おそらく朝日新聞の独自の調査による見切り発車のスクープであったことがうかがわれる。ただ、ここまで大きく扱ったことと、事が皇室に関わることであるだけに、よっぽどの確証を踏まえての報道であろう。

 しかし、そこには女性に対する配慮のひとかけらもないことは指摘しておかねばなるまい。だって、出産の喜びと不安は、皇室であろうと一般の家庭であろうと区別なく訪れる一大事。胎児は本当に大丈夫なのだろうか? 無事安産できるだろうか? 母子ともに健康でいられるだろうか? などなど、不安は尽きない。外野があれこれ騒いでせんさくすればするほど、出産経験のない夫婦、女性にとっては重い心労となって返ってくるものだ。

 朝日の報道では、宮内庁関係者によると、という表現で「いくつかの点で妊娠の兆候がみられた」「雅子さまは、激しい運動などを避けているという」としている。また、近く詳細な(超音波診断法など)検査が行われ、宮内庁から正式に発表される予定だ。としている。この報道が雅子さまの心の負担になることに対する配慮の欠如を朝日に言いたい。

 さて、この報道が事実とすれば、である。

 まさしくミレニアムベビーの誕生。皇太子、皇太子妃のお喜びは、皇室を超えて日本国民にとっても大きな明るい話題であることは確か。海の向こう、英国では,ブレア首相夫人が四人目の赤ちゃんを懐妊したことを快挙としてとらえ、内閣支持率が急上昇するという事態となっている。不幸な事件の相次ぐ世紀末に、まさしく新しい生命の誕生は、誰の子であろうと喜ばしい限り。雅子さまのご健康をお祈りすると共に、マスコミの最大の配慮を求めたい。先走り報道はご免だ!

 

ミレニアム ベビーの兆し あたためて
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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