馳浩の快刀乱筆

 政治家も出家すれば? 

 『移動お寺』で救済を

平成11年11月21日富山新聞掲載


 

 作家の家田荘子さんが、鹿児島市の真言宗最福寺で髪をそる「得度式」を受け、出家していたことが11月17日分かった。家田さんと言えば「極道の妻たち」「イエローキャプ」などのベストセラーで知られるノンフィクション作家。女性作家の出家と言えば瀬戸内寂聴(晴美)さんが先輩として有名だ。はたしてその真意は何なのか、が興味の的。

 家田さんは出家の理由について、「取材相手からさまざまな相談を受けるうちに、仏教の知識を得て、もがいている人たちを救う力を身に付けたいと思った」と話している。

 額面通りこの言葉を受け取れば、まさしく迷える人々とともにもがきながら人生を考えていきたい、ということか。

 ただ、裏読みをすればこうなるだろう。家田さんは暴力団幹部の妻たちを描いた作品や、海外での日本人女性の無軌道な性行動を描いた作品など、常に社会に問題を投げ掛けて来ている。日本社会のウラ部分にスポットライトをあてて、そこから人間の本質をえぐり出し、浮かびあがらせることによって現代の日本人に非常ベルを鳴らし続けている。ここで仏門に入ってさらに作家としての幅を広げ、今後の作家活動の糧としようと狙っているのではないか、と私は見ている。

 作家活動については「世俗の中により深く入ることも修行」として、これまで通り続けて行くそうであるから、私の推測もあながち外れてはいないだろう。さらに「救いは至る所にあるはず。取材で全国を飛び回っている自分が『移動お寺』になれれば」とも抱負を語っている。

 この話を聞いて、アレと閃(ひらめ)いた。

 政治家こそ出家をして、国民とともにもがき続けなければならないのではないか、ということ。世俗の中に深く入り、国民の救いがどこにあるのかを見きわめ、全国を飛び回り、まさしく政治家自身が『移動お寺』になるべきではないか。でも、ほとんどの政治家は破戒僧になってしまうだろうけどね・・・。

 

まつりごと 救い求めて 西東
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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