馳浩の快刀乱筆

 亀井流マジック? 

 『介護保険見直し』の舞台裏

平成11年10月31日富山新聞掲載


 

 政治家の発言は重い。一言一言が国民生活を左右するだけの威力を持っている。慎重でなければならない。時には勇気を鼓舞しなければならないだろう。こと政策に関わるとなれば当然世間の注目は高いわけで、発言の趣旨を明確にしておかねばならない。

 亀井静香自民党政調会長は、政治家の中でも有数の言葉のマジシャン。時には政局を左右し、時には連立与党の存在を誇示する。

 10月29日未明の自民、自由、公明三党の政策責任者の会見でも、亀井マジックは発揮された。テーマは「介護保険見直し問題」。

 亀井さんは、「介護制度について三党間で合意した事項を政府に申し入れた」と発言。

 あれ? 介護保険制度じゃなかったの? と誰もが耳を疑った。おそらく連立の一員である自由党が「税方式」へ転換させるよう求めている主張に配慮してのことだろう。もう一つの理由は、介護保険制度の根幹をいじらない、つまり法改正をしないで来年4月からサービスをスタートさせるという大原則を維持したいがためだろう。れって目先を惑わすマジック!?

 また、見直し問題で出ていた「保険料徴収の凍結」が「半年間実施しない」に、「家族介護への手当」は「慰労金」に変わった。いずれも言葉のマジックで三党合意の軟着陸。

 当然、自民党や全国の市町村の担当者や、国民から「どうなっているんだ?」「総選挙目当てか?」「なんで今さら?」との批判の嵐。丹羽雄哉厚相まで「複雑な思いだ・・・」と。

 亀井マジシャンは強弁する。

 「制度そのものを否定するものではない」「実際に運用を始めて経験しなければ、理解は得られない」「子供が親の面倒を見るという美風を損なわないように」と防戦一方。

 亀井マジックを表から読めば「国民負担の軽減、円滑に制度を定着させる」となる。さて、亀井マジックの種明かしはどうなるだろうか? 

 

政治家の 口もと寒し 首寒し
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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