馳浩の快刀乱筆

 合併の効果に注目!! 

 動き出したメガバンク 

平成11年10月17日富山新聞掲載


 

 住友銀行とさくら銀行が、2000年4月までに合併することを決め、10月14日正式発表した。総資産は98兆円。日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の統合に次いで世界第二位の巨大金融機関が誕生する。

 そのメリットと心配材料の二点をチェックしてみよう。銀行の再編成の行方は日本経済の回復にも直結する。十分な検証が必要。

 まず目指すべき方向は、国際競争力の強化。外資系を含めた金融界の競争が激しくなる中で、メガバンクとなって基礎体力をつけておくことは、スタート地点。具体的に言えば、資金量、利益が上がる経営体質、顧客層の拡大だ。

 98兆円の資金量はとりわけ魅力だ。大企業取引とリテール(小口金融取引)分野で強みを発揮することかできる。先行投資できるだけの資金量があれば、どんどん独自の金融サービスを開発し、収益を増やして行くことかできるだろう。小金持ちの多い日本人の心をくすぐる商品開発とサービス充実に期待大。

 また、今後5年間で9千人の人員削減で、年9百億円以上の経費削減ができる。さらに重複店舗を整理すれば、合理化効果が出る。

 さくら銀行の個人顧客数は国内最大であり、これに従来の各業界の有力企業との取り引きが強化されれば、鬼に金棒である。

 ただ、浮かれていてはいけない心配事もある。

 例えば、リストラされた行員をどこが吸収するのか? 合併までに不良債権の処理を十分に行えるのか? 経営陣の意思決定が巨大銀行の隅々にまで速やかに行き渡るのか? 日本的ななれあい人事慣行を払式(ふっしょく)できるのか? 旧来の住友グループ、三井グループという財閥の壁を乗り超えることができるのか? これまでライバル同士だった系列の生損保業界の提携や再編まで踏み込めるのか? などである。

 動き出した日本の金融業界。もしかしたらその動きについていけないのは政界だけかも知れない!? 大胆な改革は、やはり民間主導か?

 期待と心配の一句を 

 

メガバンク 日本の金は どこへ行く
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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