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馳浩の快刀乱筆
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こんなことが許されていいのか? 茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー東海事業所で起きた日本初の臨界事故は、その原因が少しずつ明らかにされるに従って怒りが込み上げて来ざるを得ない。会社側の10月1日の記者会見によると、本来の製造過程が省略され、作業員はステンレスのバケツでウラン溶液を沈殿槽に移し替える途中だったという。沈殿槽に多量のウランを入れると臨界が起きて危険なため、入れる量は2.4キロまでと安全基準で決まっているにもかかわらず、当時は16キロも入れていたとみられている。まったくの初歩的なミスである。
これでは明らかに人為的なミス。ずさんな管理体制が糾弾されるべきだ。
自民党の対策本部会議が10月1日朝10時から行われ、その席でジェー・シー・オーの社長から謝罪と説明があったものの、その実態は驚くべきあいまいさだった。
まず、現場作業員は「核燃料取扱い」の資格を持っていないということ。現場作業を監視するカメラもなく、安全確認の詳細が明らかにされない管理体制だということ。中性子線防護服が用意されていないということ。モラルの欠如。
つまり、作業員の人為ミスは明らかであり、さらにその仕業をチェックする安全管理も不十分であったということ。最悪の事故だ。
施設から10キロ圏内の10万7千世帯が一昼夜屋内退避を命じられ、31万人の足を止めた。10月1日夜現在55人の被ばく者が確認された。今後の被害を考えれば、農作物や近海でとれる水産物の風評被害、健康不安など計り知れない。情報が混乱の中で誤って伝わればパニックさえ起きかねない。
こんな事故を引き起こした企業体質も問題であるが、核燃料の製造加工を民間に委託している国の姿勢も問われることになるのではないだろうか。徹底した安全管理が求められる原子力燃料の製造加工は国が責任を持ってやるべきだ。
エッセイスト・小矢部市出身
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