馳浩の快刀乱筆

 乱闘国会の夜はふけて 

 後に残る疲れと不信感 

平成11年8月15日富山新聞掲載


 

 参院法務委員会で、組織犯罪対策三法案の採決に関して与野党が激突。私もその渦中にいた。採決を強行する自自公。阻止のために荒木清寛委員長の机に殺到して抗議する野党。

 と、ここまではほぼ筋書きのあるドラマだった。国会会期末を目前に控えて、廃案にしたい野党と、成立させたい与党の間で最後にこうなることは読めていた。そして、与野党が激突して乱闘になる場合(過去は消費税法、PKO法、宗教法人法など)は礼儀作法がある。

 まず野党が委員長席になだれこむ。委員長のマイクを引きちぎり、文書を破り、議事進行を妨害。「抵抗している」姿を見せるわけだ。

 与党としては、野党の攻勢がエスカレートして委員長席か混乱しすぎないように防戦一辺倒。決して手を出してはならない。最悪、委員長が野党に連れて行かれる場合も想定されるので、採決を強行した後すみやかに身柄を確保する役割もある。

 与野党とも筋書きのあるドラマを演出する理由はある。野党としては(1)国民へのアピール (2)与党の横暴ぶりを強調 (3)自分達も成立阻止の努力をしたという言い訳。与党としては、(1)野党のガス抜き (2)専守防衛に徹することによって野党の攻撃ぶりを強調 (3)言論の府で乱闘に訴える野党の力量不足を演出。

 ただ、時にはハプニングが起きることもある。今回は、委員会強行採決を受けて開会される本会議の戦略が描けていなかったこと。

 野党は牛舌戦術(際限ない演説)と牛歩戦術を取って丸二日間徹夜して国会を混乱させ、時間切れ、審議未了、廃案、混乱の責任を理由に解散に追い込む、と戦略を描いた。

 しかし与党の演説制限時間動議の可決と、斉藤十朗議長による投票箱閉鎖の強権発動によって野党の抵抗は封じ込まれてしまった。作戦失敗。後はなめくじに塩。

 結局残ったのは、乱闘の後味の悪さと徹夜の疲れと国会不信。与野党痛み分けでしかなかった。良識の府、参議院にしてはその存在価値を問われる結末となった。哀れだ。 

 

蝉の声 遠くに置いて 参議院
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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