馳浩の快刀乱筆

 癒しはブームなのか? 

 音楽よりも汗と笑顔を 

平成11年7月18日富山新聞掲載


 

 現代人の心はこわれているのだそうだ。

 いじめ、学級崩壊、不倫、リストラ。それこそ心のすさむ現象ばかり。そう言えば援助交際なんてのもはやってるらしい。お金で心が買える時代の象徴だ。はぁー、とため息ばかりの人生を、ホッとした気分に癒してくれる商品が今、ちまたではブームである。

 アロマテラピー、ハーブティー、アニマルセラピー。何のことだかおじさんにはさっばりわからない。でも、うちの女房は家の中にいっばい「癒し」商品を持ち込んで、夫婦のあつれきを癒したりしている、らしい。

 そしてとうとう癒しのメロディー。

 あの坂本龍一さんのピアノ曲「energy flow」がオリコンヒットチャートで三週連続一位を独占しているのだ。

 コムロサウンドやモーニング娘のため息エッチサウンドばやりのミュージックシーンで、歌のないメロディだけの曲が売れているのは異質。三共製薬の「リゲインEB錠」のCM曲としても有名。「この曲をすべての疲れている人へ。」のキャッチコピーに見憶え、聴き覚えの人は多かろう。

 ただ、癒しを必要とする社会に正面切って取り組み、社会のゆがみをただそうというのではなく、現実逃避にすぎないのではと私は思う。だってこの曲を聴いて涙を流して疲れやストレスが解消すると言ったところでそれは一時的。やっばりまた現実の世界でもみくちゃにされるだけ。根本的な解決にはほど遠い。ここはまさしく逆転の発想か必要。

 まず、人間関係の達人を目指すこと。世の中、没交渉で無口な人が多すぎると思いません? 子どもだってできるだけ集団の中に放り込んで心身共に鍛えなきゃ。汗と笑顔の人間関係こそ心の癒し。

 二つめには、ケンカ大賛成。口汚くののしり合って、スッキリすることってありません?

 あまり遠慮がちに心の中で言いたいことも言わずに溜め込んでいてはダメ。こわれた心は修復可能。それも人間の特権。では、癒しの一句を。 

 

汗と声 出せば気がつく 自分自身
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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