馳浩の快刀乱筆

 図に乗るな小渕総理大臣 

 国民は能力を見ている 

平成11年7月11日富山新聞掲載


 

 この世をば我が世とぞ思ふ

 望月の欠けたることのなしと思へば

 藤原道長が詠んだ和歌をふと思い出した。

 このところの小渕総理大臣の政局運営についてのコメントをマスコミを通じて知るたびに、私は「図に乗っちゃ、ダメよ」と思ってしまう。私の取り越し苦労ならそれで良いのだが。人間、頂点を極めると油断しがちであるため、こういう時こそふんどしを締め直してもらいたい。小渕派会長を預かる綿貫民輔代議士は「言葉を慎むように」と総理に直言されたそうだが、まさに時を得た進言である。裸の王様になんてなってほしくはない。

 そもそも今国会が延長されたのはどうしてか?低迷する景気回復のためにあらゆる政策の手だてをするためではなかったか?

 補正予算を編成したり、産業競争力活性化のための税制改正やら法案成立を期すのが国会の焦点でなければならない。

 にもかかわらず、連日注目をあびるのは日の丸、君が代の法制化や組織犯罪対策三法案の審議の行方であったりする。また、自自連立に加えていかに公盟党を政権内に取り込もうかとの政局論争ばかりが声高に叫ばれる。

 国民はそんな政治のあり方についてどんな視線を投げかけているか、を見逃してはならない。国民の本音は「経済力回復」「年金・介護・高齢者医療など将来の不安の解消」である。何と言ってもやっぱり自分自身の暮らしの安定が大切なのだ。アイラブミーだ。

 そのために政府はどうやって政策を打ち出してくれるのか。その能力をじっと見つめているということを小渕総理大臣は忘れてはならない。

 束の間の政権の安定も、総理の手となり足となり、時には脳みそとなって下働きしてくれる多くの政治家や官僚や、何より国民のおかげである。

 政治の世界、一寸先は闇。まして衆議院は常在戦場。今一度足元を見つめ直して欲しい。 

 

望月も 欠けては満つる 夏の宵
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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