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馳浩の快刀乱筆
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1999年7月になった。でも、何も起きない。どうしてーーそう心の中で思っている日本人は多いのではなかろうか?そう、ノストラダムスの大予言の一件。
1999の年、7の月
空から恐怖の大王が降ってくる
アンゴルモアの大王を復活させるために
その前後の期間、マルスは幸福の名のもとに支配に乗り出すだろう。
この4行詩を日本に紹介したのは『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)という1冊の本。今から25年前。1973年の刊行。著者は五島勉氏。この詩が『1999年、人類滅亡』を予言していると解説している。
当時私は小学6年生。一大ノストラダムスブームが日本中に巻き起こり、『一体地球はどうなってしまうのか?』と友だちと真剣に論じ合い、心配したものである。折りから公害問題や石油ショックで不安な世相でもあり、真実味を持って社会にこの予言は浸透した。
でも、実際に今、何か起きているだろうか?
確かに地球温暖化の影響によって異常気象は実感されている。コソボ紛争でNATO軍の空爆が続き『空から恐怖の大王が降って』きた。オウム真理教はこの終末思想をちゃっかり利用してハルマゲドンを演出しようとした。結びつけようと思えば何だって関連することはあろう。それもこれも4行詩の解釈がまちまちであいまいであるからだ。
何ひとつ科学的に証明できることはない。
でも、でも、気になるのはなぜ?今の日本は不確実性の時代と言われる。政治は連立政権。金融や経済はグローバル化して日本一国ではたちうち出来ない状況。家庭教育やモラルは溶解し、国の形が見定められない世紀末であることに誰も異論をはさめない。
こんな時期。ノストラダムスで反実仮想の世界に遊んで現実逃避してみるのも一興。むしろそうして現実を茶化すことによって、一瞬の安心感を買おうとしているのではなかろうか?
エッセイスト・小矢部市出身
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