馳浩の快刀乱筆

 高けりゃいいのか 

 ステータスあってこそ 

平成11年6月20日富山新聞掲載


 

 不況だ。堺屋経企庁長官は「景気の下げ止まり」だなんて言ってるけど、本当にそうなんだろうか。確かに軽自動車、パソコン、住宅など売れ筋商品もあるけど、リストラの嵐でもある。失業者も過去最高。社内失業者なんてのもいる。切ないことばだ。

 しかし、このせちがらい世の中にも女性のブランド品購入意欲だけは衰えていない。

 それも高価であればあるほど人気が高い。私の国会秘書の女性など、お休みの日は暇さえあればブランド品をながめに銀座を歩いている。とにかくグッチやプラダやフェラガモを語る彼女の目は輝いている。(その情熱を仕事にも出してよ)と心の中で思いながらも、何故にブランド品がかくも女性を熱くさせるのか分析してみた。だってこの傾向はブームではなく日本人女性に定着した美意識(ブランド→ステータス)のように思える。

 まず、「私しか持ってないのよ」という優越感。品薄の商品(職人の手作りだからあたりまえ)を私だけが持っているのよと実感することで他人より一歩抜きん出た感性を持てるらしい。そして次は「あのグレース・ケリーやジェーン・バーキンが持ってたのよ」という有名人病。これはイメージ戦略でもあろう。メディアのおかげ。変身願望の強い女性の心理を的確に捉えていよう。

 極めつきは「高価・高品質・高ステータス」という3高。高価で高品質のブランド品を持てることによって、社会的ステータスも高くなれると「錯覚」するのである。

 ここで私は言いたい。高いお金を出せば確かにブランド品は買える。でも、ブランド品を持っているから社会的ステータスが高いかと言えばそうではない。

 エルメスやブルガリを身につけるにふさわしい社会的ステータスがあるからこそ、ブランド品も輝くのだ。ということを忘れてはなるまい。あなたはそのブランド品を引き立てるに十分な立場・人格ですか? とは言うものの、あなたの心中を推しはかって一句。 

 

三年間 待っても欲しい ケリーバッグ
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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