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馳浩の快刀乱筆
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企業戦士の自殺がまたしても。私たちはそこに日本の企業経営者の真実の姿を見なければなるまい。あなた一人がいなくなれば全てが解決するわけでもあるまいに・・・。経営破たんで一時国有化に移行した日本長期信用銀行の上原隆元副頭取が、5月6日午前、自宅近くの都内ホテルで首をつって死んだ。家族あてに遺書が残されていたことから自殺と推定される。
一体上原さんの周囲に何が起こっていたのか?
長銀の副頭取として財務状況全般を統括していた昨年11月、国有化された後に退任している。いわゆる責任をとっての退任。
その後長銀の経営をめぐっては、1998年3月期に粉飾決算していた疑惑が発生。回収不能債権などの不良債権を甘く見積もり、貸倒引当金を2747億円少なく計上して配当可能利益をねん出。その上で商法違反(違法配当)疑惑や、証券取引法違反(虚偽記載)の疑惑が浮上。上原さんは決算担当副頭取として一連の疑惑に関与する立場にあったわけで、東京地検特捜部の事情聴取を受けていたという。経営責任を問われていたわけだ。
まず、故人のめい福を祈りたい。
そして、この自殺の背景に日本の企業戦士のゆがんだ生き様を見つけたい。
「会社のためにやったこと!」
という責任感に全ての価値観がマヒしてしまっていたのではないだろうか。なぜ死を選んだのか!
「私一人がいなくなれば、ロを封じればそれで会社の汚名がそそがれる・・・」という考え方が故人にはなかっただろうか。
責任感の重さを自らの生命と取り引きしてしまうという追いつめられた心理状態にあったのではなかろうか。
他に解決の糸口を見つけられなかったのならば、上原さんの人生はいったい何だったのだろうか。遺族の無念は、やり場のない怒りに満ちているはず。企業も人なり、なのに・・・
エッセイスト・小矢部市出身
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