馳浩の快刀乱筆

 いいとこ取り?無党派層 

 政党の下請け『ノー』 

平成11年4月25日富山新聞掲載


 

 石原慎太郎東京都知事が誕生。

いよいよ伏魔殿の都庁舎に乗り込んだ。今後の4年間の任期でどれだけ「はっきりイエス、はっきりノー」との政治姿勢を貫くことができるだろうか?都民どころか国民の期待は大きい。

 石原さんの卓越した選挙戦術は見事の一語だった。出るぞ出るぞと周囲から盛り上げさせておいて、本人は候補者が出そろうのを高見の見物。有力五氏の公開討論がマスコミ上にて展開されるやそれを模様ながめ。そろそろネタが尽き、新鮮味が薄れてきた頃合いを見はからって出馬表明。他候補とはっきり差別化を印象付けて「最後の大物、真打ち登場」のイメージを植え付けた。

 当然他候補は石原攻撃。ところが石原攻撃を展開すればするほど、石原氏に注目が集まるのだから、宣伝効果は倍増。

 そんな選挙戦に埋没してしまったのが政党政治である。

 日本の行政は中央集権の仕組み。となれば国政を担う各政党と意を通じ合う公認あるいはすいせん候補がしのぎを削る知事選挙になってしかるべき。ところがそれを許さないのが有権者の過半数を占める無党派層。

 無党派の本音はこうだ。自民党、民主党、公明党、共産党それぞれの政策の「いいとこ取り」をすれば良いじゃないの。知事は政党よりも人柄と人気。既成政党がイデオロギーをよそにおいて離合集散をくり返す今日、知事は政党の下請けよりも独立独歩の存在でいてほしい、と願っているのである。

 さて石原氏、これからが本番。

 東京都議会の与党は自民党(二会派に分裂しているが)と公明党。議会の過半数の承認を経なければいかなる予算、政策も実行には移していけない。加えて副知事以下17万人の都庁職員との連携も必要。はだかの王様になっては石原知事本人に対して「はっきりノー」とのレッテルが貼られてしまう。いいとこ取りの有権者をいかに満足させられるか、お手並み拝見。

 

葉桜や 都庁の風に 右左
 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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